世界No.1のセールスマンとしてギネスブックに載った人物がいます。それは、自動車会社のシボレーのセールスマンのジョー・ジラード(Joe Girard)という人物です。
ジョー・ジラードの売り上げは驚異的で、12年連続でNo.1セールスマンに輝きました。
ジョー・ジラードがこれほどまでに大きな成功をおさめた一つに「好意」の力を使ったことがあります。
ここでは「好意」がどれほど協力で、ジョー・ジラードはどのような手法を使ったのかについて解説しています。
ジョー・ジラードの2つの成功法則
ギネスブックに載るほどの大成功をおさめたジョー・ジラードですが、その根本にある彼の秘訣は驚くほど簡単なものでした。
それは次の2つです。
ジョー・ジラードはあるインタービューで次のように答えています。
自分が気に入ったセールスマンで、納得できる価格であること。この2つが揃えば誰でも車を買いますよ。
公正な価格が重要なことは当然です。そもそも大手の自動車会社であればどこでも比較的適正な価格で商品を販売しています。
このため特に重要になるのは「この人から買いたいと思わせる人格」、つまり、気に入られるということです。
ジョー・ジラードは次のようにも語っています。
私は車を売っていたのではない。ジョー・ジラードを売っていたのだ。
見え透いたお世辞の目的
ジョー・ジラードが何をやっていたかというとそれは、あまりにも見え透いた簡単なお世辞です。
毎月、1万3000人以上のお客さん一人一人にハガキを送っていました。ハガキのレイアウトは新年、クリスマス、バレンタインなどで異なるものの、書いてあるメッセージは全て同じでした。
あなたが好きです。
あまりにもありきたりです。いったい、このハガキの目的は何だったのでしょうか?
このことに対して、ジョー・ジラードは次のように説明しています。
ハガキ以外には、自分の名前以外何もいらないんです。私がお客さんに好意を感じていることを伝えるだけでいいんです。
つまり、自分がお客さんのことを好きだと伝える手段として毎月ハガキを送っていたということです。
決して、おだててやろうという下心や、これをやっておけばいいという義務感でやっていたわけではありません。
そもそもハガキの値段が1枚50円として、毎月1万3000通送れば、毎月65万円、年間で780万円です。一人の営業マンにしては破格の費用です。それでも好意を伝えるためにやる価値があったということです。
お世辞の力
私たちの多くは「そんな見え透いたお世辞には騙されないし、心も動かされない」と考えます。
ですが残念ながら私たちの脳は、そうした理性とは全く関係なく自動的に働いてしまいます。
もちろん「こいつはウソを言っている」と疑い深い目で見れば別ですが、一般的な会話の中や、相手を少しでも信頼していたり、疑っていない場合はお世辞は私たちに対して驚くほどの力を発揮します。
お世辞が人の感情にどういった影響を与えるかについて調べた実験があります。
それは男性の被験者を次の3つの方法で評価して、その後に男性がどう感じたかという感情の変化を調べるものです。
- 肯定的な評価だけする。
- 否定的な評価だけする。
- 肯定的な評価と否定的な評価を織り交ぜる。
この結果、次の3つのことが明らかになりました。
この実験結果は私たちが考えていることとは真逆に近い結果です。つまり、人から好意を得る方法として次の考え方は間違えているとうことです。
ジョー・ジラードが「好きです」とだけ書かれたハガキを送ったという内容を聞くと「そんな見え透いたお世辞効果ないよ」と考える人が大半ですが、現実的な私たちの反応はそうではなく「そんな見え透いたハガキでも貰うと嬉しい」ということです。
お世辞を言えば頼み事が通る
何か頼み事をするときにお世辞を言うのも効果があります。
会社員の田中 翔太さん(仮名)は仕事で忙しいときにある同僚から頼まれた仕事をついつい引き受けてしまいます。
というのも、その同僚の頼み方が翔太さんの心を上手にくすぐるからです。どのような方法で心をくすぐっているかというと「お世辞」です。
その同僚は次のように頼んできます。
聞いたよ、〇〇のプロジェクトで大活躍だったんだってね。実は今それと似た仕事を抱えてて、手伝ってもらえるとありがたいんだけど。
〇〇の分野については君が専門家だろ。だから、この仕事もまとめてやってくれないかな?
翔太さんは「大活躍だったんだってね」や「専門家だろ」という頼みごとの前のあからさまなお世辞で気分がよくなってしまいついつい引き受けてしまします。
ポイントは翔太さんは以前から引き受けていることを後悔していて、できれば断りたいと思っている。それにも関わらず、お世辞を言われるとついつい引き受けてしまうということです。
まとめ
商品やサービスを売るにはお客さんから好かれる必要があります。売れるか売れないかは好かれるかどうか次第と言っても過言ではありません。
そして、好かれるための重要な手段は「お世辞」です。
お世辞が私たちに及ぼす効果は絶大なものがあります。そして、お世辞は「好意をえようとしていることが伝わってもいい」「ウソでもいい」ということです。
また、好意を得るために、相手の批判や非難は一切必要ありません。
人は自分のことを認めてくれて褒めてくれる人のところに集まっていく習性を持っています。
モノを売るとは人を相手にするということです。一流の釣り人が魚のことをよく理解して、魚が好む美味しいエサを使うように、営業を志すのであれば、人の習性をよく理解して、人が好むことをする必要があります。
魚釣りに行って、魚がいない場所に魚が全く好きでないエサを放り投げて「これが俺のやり方だ」と言って全く釣れないことを正当化しているのと同じです。成績は何一つついてきません。
「お世辞を言うなんてカッコ悪い」「ゴマすりはダサい」そんなこと言っている人が一番カッコ悪くダサいということを理解することが大切です。
お世辞を言うとは相手を喜ばせようとする行為です。普通に生活しているだけでは人を喜ばすことはできません。人を喜ばす行動ができる人はカッコいいものです。
参考
この記事の内容はアメリカの有名な心理学者 ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の内容の一部抜粋と要約です。
現代のマーケティングで使われている手法が心理学の面から解き明かされ、たくさんの事例を交えてわかりやすい文章で記されています。
この本の内容を細かく知っているかどうかで、現代の市場に隠されているたくさんのワナにハマりカモになるのか、それを避けて利用する側に回れるのかが大きく分かれます。
気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。