突然ですがもしあなたが好意を抱いている人から「手伝ってくれないか？」とお願いされたら、あなたはなんと答えるでしょうか？
その答えは当然「いいですよ」です。断って嫌われたくないですし、何より好きな相手に近づく絶好のチャンスです。
他にも、街で買い物をしてるときに全く知らない人に「環境保護の署名をお願いします」と言われたら、少し疑ったり、興味がなければ断るでしょう。
ですが、もしご近所の良くしてくれている人に「環境保護のアンケートに名前だけ署名してくれないかな？」と言われたら「そのぐらいいいですよ」と笑顔で答えて署名をします。
このように、知り合いや好意を持っている相手からの依頼には「いいですよ」と答える力があります。
ここでは、その力をフル活用した無限連鎖というマーケティング手法を紹介しています。
無限連鎖法とは何か？
無限連鎖法とは、商品が売れる売れないに関わらず、その商品に興味を持ってくれそうな友人や知り合いを紹介してもらうという方法です。
特に重要なのは、商品購入を断られたときに、引き下がる代わりにその商品に興味がありそうな知り合いの名前を教えてもらうことです。
具体的には次のような流れになります。
お客さん：「すみません。今回は購入を遠慮しておきます」
販売員：「そうですか。あなたがこの魅力的な商品をご購入されないということはわかりました。その代わり、どなたかこの商品に興味を持ちそうな方をご紹介いただけないでしょうか？」
といった流れです。
断られたときに「そうですか」といって引き下がることは、相手に対してこちらの要求を取り下げた譲歩です。
人には返報性の法則という心理があり、相手に何かされたらそれを返さなければいけないという義務感が生じます。
譲歩を与えれば、相手も譲歩しなければという義務感が生じるわけです。
その時に「知り合いをご紹介してくれませんか？」という商品購入よりも小さなお願いをすれば、「それぐらいならいいかな」と考えて、教えてくれる確率が格段に上がります。
教えてくれた人の名前を出す
無限連鎖法には続きがあります。それは紹介してもらった人に売り込みに行ったときに「紹介してくれた人の名前を必ず出す」ということです。
〇〇さんから、あなたを訪問するように言われた来ました。
このように知人の名前をあげることによう効果は２つあります。
- 追い返すのが難しくなる。
- 断るのが難しくなる。
追い返すのが難しくなる
第1のメリットは「追い返すのが難しくなる」ことです。
というのも、家に来た販売員を追い返すことは、紹介してくれた人の面目を潰すことになりかねないからです。
知り合いの名前を言われたら受け入れざるを得なくなります。
断るのが難しくなる
第2のメリットは「断るのが難しくなる」ということです。
知人が紹介してくれた、ということは知人がある程度評価しているということを示しています。
通常知らない販売者が訪ねてくれば疑いの目で見ますが、知り合い経由となるとある程度受け入れたり信じている状態から話が始まるものです。
こちらでも、紹介してくれた人の面目を潰すかもしれないという心理が働き、断りずらい圧力をかけることができます。
無限連鎖法を採用している企業は次のように言っています。
この方法は、いくら評価してもしすぎることはないほどの価値がある。
顧客になりそうな人を訪問したり電話をするとき「お友達の〇〇さんが、あなたならほんの少し耳を傾けただけで、この製品の価値がわかるはずだとおっしゃっていました」と言うことが出来さえすれば、売り込みを始める前に、商品が売れたも同然である。
無限連鎖法の例
あるコミュニケーション通信会社では無限連鎖法を上手に活用しています。
あるとき、佐藤 優花（仮名）の元にそのコミュニケーション会社の女性販売員から電話がかかってきました。
友人の一人がその会社の友人・家族一覧にあなたの名前を書いたという内容でした。
それは美咲という友達で、昨年仕事の都合でアメリカに引っ越しました。アメリカに引っ越した後も連絡を取り続けたいと言って頻繁に電話をくれ、楽しく話していました。
女性販売員が言うには「あなたがもし私たちのサービスに加盟すれば、お友達が書いたリストに記載されている人とのやり取りは20%オフになります。あなた自身も色々なサービスが受けられるし、お友達もとてもお得なのでよかったら弊社のサービスに乗り換えませんか？」というものでした。
優花は美咲以外には海外の人たちと電話することもなく、そのサービスにはあまりメリットを感じませんでした。
しかし「ここで断ると美咲のお金のことをまったく気にしてないと思われるかもしれない」という感情がよぎり、美咲のことは裏切れないと判断して、そのサービスに加入することにしました。
「友人からの紹介」は、その商品を購入するための強力な動機の一つになる。
参考
この記事の内容はアメリカの有名な心理学者 ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の内容の一部抜粋と要約です。
現代のマーケティングで使われている手法が心理学の面から解き明かされ、たくさんの事例を交えてわかりやすい文章で記されています。
この本の内容を細かく知っているかどうかで、現代の市場に隠されているたくさんのワナにハマりカモになるのか、それを避けて利用する側に回れるのかが大きく分かれます。
気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。
