【難問解決】統計を使って業績をよくする方法|ウィル・ロジャース現象とは何か?

思考法
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インターネットの台頭でデータこそが資産といわれる現代においては、統計はビジネスにおけるとても重要なツールになっています。

統計を上手に使うと、数値の操作だけで難しいビジネス上の難問をいとも簡単に解決することができます


店舗の業績を改善する方法

仮に、あなたがある営業会社の戦略担当だとします。

あなたの会社には売り上げがものすごく高い東京支部と、売り上げが低くて困っている新潟支部があります。

それぞれの一番の問題点は人材です。東京支部には優秀な人材がゴロゴロいるのに対し、新潟支部には汎用な人材しかいません。

また、市場は東京の方がマスが大きく、新潟は小さいという特徴もあります。

そんなときに、社長があなたに次のような難問をぶつけてきました。

今期は、東京支部と新潟支部の両方の業績を去年より伸ばさなければ、あなたは降格です」と。

あなたは悩みました「既にかなりの成績を出している東京支部の成績を更に上げるのは至難の業だ」「能力的に劣っている新潟支部の売り上げをあげるのは困難だ」と。

この問題は一見するととても難しい無理難題のように見えますが、統計の力を使うととても簡単に解決できます

その方法は、東京支部の中で成績の低い社員を新潟支部に移動することです。

なぜこの方法で東京支部と新潟支部の両方の業績が伸びるかというと、東京支部の中で成績が低いといっても、それは新潟支部の社員と比較すれば優秀な方に入ります。

このため、東京支部でパフォーマンスを低下させていた社員を外し新潟支部に送ったことで、新潟支部のパフォーマンスが上がります。

東京支部は移動した社員が担当していたエリアを、社内の優秀な社員に任せれば更に売り上げが上がります。

これであなたの降格はなくなりました。やったことはただ人を移動しただけです。


ウィル・ロジャース現象とは何か?

上記の例のように、優秀なグループの中から下部にいる人たちを選別し、よりレベルの低いグループに移動させることで、2つのグループの成績が上がることを「ウィル・ロジャース現象」といいます。

ウィル・ロジャースとは1900年代のアメリカの超人気コメディアンで、当時のハリウッドでギャラが最高級の映画スターのことです。

そして、ウィル・ロジャース現象は彼の次のような発言が元になっています。

もしオクラホマ州の出稼ぎ労働者がカリフォルニア州に移動したら、両方の州の知的レベルが上がるだろう。

これは当時、オクラホマ州の住人のIQはカリフォルニア州の住人のIQよりも高いという認識を利用したジョークです。

日本人にわかりやすく言い直すなら「東大の1年生の最下位の10人を、他の3流大学の1年生に編入させたら、両方の大学で平均点が上がる」ということです。

なお、カリフォルニア州は今でこそシリコンバレーと呼ばれ、Apple、Google、Facebook、Twitterなどの拠点があり、アメリカの中でも最高級の地価誇り優秀な人たちがゴロゴロいるエリアですが、当時は治安の悪いへんぴな砂漠地帯でした。


ウィル・ロジャース現象の注意点

ウィル・ロジャース現象の注意点はマジックのように表面的な業績を良く見せる手法です。

だからこそ、その数値を見る側はとくに注意しなければいけません

特に、下から数値で報告を受ける経営者などの上の立場にいる人は注意が必要です。

去年よりも業績がよくなっているからといって、簡単に喜んではいけません。

なぜ業績がよくなったのかの本質的なところを見抜かないと、全体では何一つ改善していないかもしれません

数値を使って提案をしてくる他社の営業や、数値改善を謳うコンサルタントにも注意が必要です。


ステージ・マイグレーションに要注意

医学界には「ウィル・ロジャース現象」を表す言葉に「ステージ・マイグレーション」があります。

ステージとはガンなどの腫瘍による症状の重さを分類したものです。症状が軽いステージ0から、末期で腫瘍の転移が発生するステージⅣまでの5つのステージにわけられています。

当然ステージ0などステージが低いほど生存率が高く、ステージⅣになると生存率は最も低くなります。

マイグレーションとうは統合という意味で、患者をどこのステージに振り分けることです。

ここで重要なのは、患者をどちらのステージに振り分けるかで各ステージの生存率が大きく変わるということです。

例えば、ステージⅢとステージⅣの境にいる患者がいたとします。ステージⅢの中ではかなり症状が重いものの、ステージⅣの中では症状が軽い方になります。

結果として、その人をステージⅣに分類すれば、ステージⅢもステージⅣもどちらも生存率が高くなるということです。

特に近年では、医療技術が発展しより高い精度で小さながん細胞を見つけることも可能になっています。このため、以前は問題なしと判断されていた人が、ステージ1に振り分けられるようになりました。

この結果、ステージIなどの軽微なガン患者の生存率は上昇し続けています。

生存率だけに目をやると、年々上昇しているのでガンの脅威は弱まっていると思うかもしれませんが、それは完全な誤りです。

ガンの治療技術が進歩したわけではなく、ステージ・マイグレーションが起こっただけです。

point

統計数値はわかりやすく便利な指標だが、その算出方法には注意が必要。


参考

この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。

本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。

とても分かりやすく、成功したい、幸福になりたい思っている人の必読書です。

この記事に少しでも興味を持たれた方は是非実際の書籍を手に取ってみることをお勧めします。



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