ピッグス湾事件はなぜ起きた?満場一致やイエスマンが危険な理由

思考法
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アメリカの外交において大失敗の1つにピッグス湾事件があります。

キューバ革命後のフィデル・カストロとチェ・ゲバラが率いるキューバに対して、アメリカが攻撃を仕掛け大失敗に終わった軍事作戦です。


ピッグス湾事件の背景

冷戦の中で

当時アメリカとロシアは冷戦をしている状態でした。資本主義・自由主義 vs 共産主義・社会主義の闘いです。

そんな中、アメリカのすぐ近くの国キューバで革命がおこり、これまでアメリカよりで独裁化を進めていた政権が倒されました。

倒したのは映画でも有名なチェ・ゲバラやフィデル・カストロたちです。

フィデル・カストロは最初アメリカと同調する姿勢を見せていましたが、アメリカが疑いの目を持ち続けたことや、完全にアメリカのいいなりでなく独自路線を行こうとしたこともあり対立する結果となりました。

そこで、ロシアと軍事同盟を結び、資金、食料、武器の援助を受けるようになりました。

キューバはアメリカのすぐ近くの国です。すぐ近くに共産主義国が誕生したことはアメリカにとっては大きな脅威でした。

Google: 赤い点がピッグス湾

アメリカとキューバの関係は朝鮮戦争時代の日本と北朝鮮の関係に似ています。

今も時折北朝鮮からミサイルが飛んできますが、それがもっとピリピリしているような状態と考えるとわかりやすいでしょう。


亡命者を戦闘部隊に仕立てる

そこでアメリカはキューバから亡命してきた約1400人にCIAが戦い方をたたき込みキューバ侵攻作戦を立てました。

1400人が上陸したら、キューバ国内の反政府組織22,500人が反乱に加わり、国民の25%が同調して反乱を拡大させるという戦略です。

ポイントはアメリカが軍事介入せず、キューバからアメリカに逃げてきた人たちを主体に作戦を実行するというものです。


ケネディ大統領

ピッグス湾事件は1961年4月に起こりました。ケネディ大統領はわずか3か月前に大統領に就任したばかりでした。

そこでケネディは秘密裏に進められてきたこの恐るべき軍事行動の内容を聞かされたのです。

ケネディアは軍の参謀本部長や海軍作戦部長など専門家に確認をしたところ「間違いなく成功する」という回答受けました。

ケネディはアメリカが軍事介入したことで、ロシアなどの敵国に軍事介入の理由を与えることを恐れ、爆撃機の数を減らしました。

変更に合わせて、上陸地点も元々の場所からピッグス湾へと変更になりました。


ピッグス湾事件の結末

一番最初に爆撃攻撃によりキューバのもつ戦闘機を破壊する予定でしたが、爆撃機の数が足りずわずか5機の破壊にとどまりました。

変更となった上陸先ピッグス湾はサンゴ礁だらけで上陸にはまったく適していない場所でした。

さらに、アメリカから派遣された約1400人の戦闘部隊に対して、キューバ政府軍20万人が迎え撃ちました。

ピッグス湾から緊急時に避難することになっていたエスカンブライ山脈までは150㎞も離れており、戦闘員たちは逃げることもできませんでした。

ピッグス湾からエスカンブライ山脈まで

地図を見れば150㎞離れていることは一目瞭然ですが、誰もこの軍事作戦が失敗する可能性を考えなかったのでしょう。

結果として、114名が戦死し、約1200名が捕虜として捉えられました。

アメリカという強大な軍事力と賢い参謀を持つ国が大失敗を犯しました


ケネディ大統領暗殺

さらにこの軍事作戦の大失敗は尾を引きます。

ケネディはピッグス湾の大失敗を受け、CIAや軍を信用しなくなっていました。そして、ケネディ政権と軍の間には大きな確執が生まれました。

また、キューバーで捕虜になった約1100人は後にアメリカに送還されることになりましたが、ケネディのせいで軍事作戦が失敗したと考え、ケネディに強い反感を持っている者も少なくありませんでした。

もしかするとアメリカに送られる人の中に、ケネディ暗殺を依頼された人が混じっていたのかもしれません。

誰がケネディを暗殺したかは定かではありませんが、ピッグス湾事件をきっかけにケネディを殺したいほど憎んだ人が増えたことは間違いありません。


なぜピッグス湾事件は起きたのか?

リスクの過小評価

作戦が失敗に終わった理由は、爆撃機の数が減った、上陸する湾が変わった、アメリカが極力軍事介入しないことになったなどたくさんの理由が挙げられます。もしかすると当初「間違いなく成功する」と考えられていたその時点で、失敗する確率が高かったのかもしれません。

いずれも、起こりうるリスクを過小評価していたことが問題です。


アメリカの心理学者 アーヴィング・ジャニスは頭のいい人たちが集まった政府や軍でなぜピッグス湾事件という大失敗が起こってしまったのかを調べました。

つまり、なぜ頭のいい人たちがリスクを過小評価してしまったのか?という心理です。

そこには大きく3つの理由があります。

リスク過小評価の3つの理由
  1. 自分たちが絶対に間違いないという思い込み。
  2. 満場一致の幻想。
  3. グループから嫌われたくない心理。


自分たちが絶対に間違いないという思い込み

アメリカのように大きな軍事力、資金、賢い人たちを持っている組織は自分たちが負けるわけないと思い込みがちです

本来は間違っていることでも、私たちが絶対に正しいと言って推し進めてしまう例は少なくありません。

ドイツのヒトラーも「純度の高いゲルマン民族(純粋なドイツ人)こそが優れている」「身長の低い人よりも高い人が優れている」「障害を持っている人は劣等種族で生きている価値はない」という強烈な思い込みにより、たくさんの人々を虐殺しました。

point

自分の方が優れていると考えている人ほど、間違った考えを正しいと思い込みやすい。


満場一致の幻想

第2の理由は満場一致の幻想です。誰も反対者が出ない場合、みんな賛成していると思い込むことです。

会社や学校、部活などでもよくあることですが、誰か人気者や力のある人が意見を言ったときに「本当は違うと思うけど言えない」「違う気もするけど自信がない」という人が必ずいます

ですが、その意見が正しいと思っている人は「反対意見が出ない=みんな賛成している」と思い込みます。

これが満場一致の幻想です。

この世に20:60:20の法則があるように、基本的に満場一致になることはありません。2割は必ず反対意見を胸の内に持っています

point

満場一致になることはあり得ない。誰かがかならず反対意見や疑問を胸の内に持っている。


グループから嫌われたくない心理

第3の理由はグループから嫌われたくないという心理です。

意見を言っている人が満場一致の幻想に捕らわれるのと逆で、意見を言えない人に働く心理です。

「これを言ったらグループの輪を壊す」「嫌われてハブにされるかもしれない」という調和を大事にしたり、恐れを抱いていると人は自分が本当に思っていることを言いません

むしろ集団生活では周りを気にせずに自分の意見を言う人の方が少ないのが当たり前です。

トップが独裁的でメンバーの報酬や罰を決めている場合は尚更です。イエスマンだけが集まっている場合は、トップが言ったことにイエスとしか言いません。

point

誰もが嫌われたくない、のけ者にされたくないという心理を持っている。


ピッグス湾事件から学べる事

ピッグス湾事件で見られるように賢い集団ですら間違った判断をしてしまう理由には、人の心理が絡んでいます。

それは賢い、賢くないに関わらず誰もが陥るものです。

リスク過小評価の3つの理由
  1. 自分たちが絶対に間違いないという思い込み。
  2. 満場一致の幻想。
  3. グループから嫌われたくない心理。

これを回避する方法は2つです。

正しい判断をする2つの方法
  1. 誰かが悪者になって自分の意見を言う。
  2. トップが誰もが自分の意見を気兼ねなく言える環境を作る。


誰かが悪者になって自分の意見を言う

1つ目は「誰かが悪者になって自分の意見を言う」ことです。

組織の中に「私はみんなと仲良くなるよりも、組織としての反映と成功の方が大切」という人がいれば、堂々と意見を言ってくれるでしょう。

誰かが間違ったときに、ずばりと指摘してくれます。

ですが、これは誰かが嫌われ者にならなくてはならないため、好ましい方法ではありません


トップが誰もが自分の意見を気兼ねなく言える環境を作る

2つ目は「トップが、誰もが自分の意見を気兼ねなく言える環境を作る」です。

組織の上にいて権力を持っている人が、自分自身だけでなくメンバー全員が「自分たちが絶対に間違いないという思い込む」「満場一致の幻想に捕らわれる」「メンバーにはグループから嫌われたくない心理が働いている」ことを理解することです。

そして、反対意見がある人を威圧的に押しつぶすのではなく、誰もが自分の意見を言えるようにする。

いわゆる安全安心な環境を作ることが重要です。


参考

この記事のスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。

人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。

この記事の内容でハッとした部分が一つでもあった方は是非手に取ってご覧になられることをお勧めします。

あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。


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