【科学的根拠】子供に言う事を聞かせ、長期的に守らせる方法|叱る脅す暴力は逆効果(理由を説明する効果)

子育て
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子供のしつけはとても大変です。「やったらダメ!」と怒鳴りつけるだけでは言う事を聞きません。

そこで多くの親が「おしりペンペンするよ」といった暴力に訴えたり、「それをしたら舌を引っこ抜くからね」「もうおもちゃ買ってあげないよ」と言って脅したりします

ですが、子供がその言いつけを守るか?という観点や子供の自尊心や自立心を育むという観点で暴力も脅しも適切ではありません。むしろ逆効果です。

ここでは、子供に言う事を聞かせ長期的に守らせる方法について解説しています。


言いつけを守るかの実験

脅す or 理由を説明する

アメリカのカリフォルニア大学 名誉教授で人類学者のジョナサン・フリードマンは小学2~4年生(7~9歳)の子供にどのように伝えると長期的に言いつけを守るかという実験を行いました。

44人の男の子を集め2グループに分けます。そして一人一人を部屋に呼びます。部屋には魅力的な高価な電動ロボットが置いてあります。

この年齢の男のたちからするとこのロボットはあまりにも魅力的です。

そんな子供たちに対して「ロボットを使ってはいけない」ということを次の2つのパターンで伝えます。

パターン1

「このロボットで遊んではいけないよ。遊んだらカンカンに怒るよ」と言って脅す

パターン2

「このロボットで遊ぶのはいけないことだよ。なぜなら」と言って理由を説明する

ここで実験者がその部屋を数分間離れ、子供たちが言いつけを守るかを調べます

実験はこれだけでは終わりません。

6週間後に追加の実験として学校に女性のアシスタントを派遣し、実験に参加した子供を一人ずつ部屋から連れ出し、ある部屋に連れていき絵を書くテストを行います。

部屋には5つのおもちゃが置いてあり、そのうちの一つは前回の実験で使った高価な電動ロボットです。

そして、「絵を採点する間、好きなロボットで自由に遊んでいいよ」と告げます。

なお前回の実験のことは一言も伝えず、子供に関連性を持たせないようにしています。

この状態で、子供たちが前回の言いつけをどれだけ守るかを調べました


脅した場合

男の子を脅した場合、実験者が部屋を数分間離れている間にそのおもちゃで遊んだ子供は22人中たったの1人でした。

95%の確率で男の子たちは言いつけを守りました。ただし、効果があったのはその場だけでした。

6週間後の追加実験では、21人中17人(77%)の子供たちが前回「使ってはダメだ」と脅されたおもちゃで遊びました

point

脅しは短期的には効果があるが、長期的には効果がない。


理由を説明した場合

男の子におもちゃを使ってはいけない理由を説明した場合、実験者が部屋を数分間離れている間にそのおもちゃで遊んだ子供は脅した場合と同じく22人中たったの1人でした。

95%の確率で男の子たちは言いつけを守りました。

さらに6週間後の追加実験でも、使ってはダメだと理由を説明されたおもちゃで遊んだのは21人中7人(33%)だけでした

point

理由を説明すると短期的に脅しと同等の効果があるだけでなく、長期的にみると脅しよりも十分に高い効果を発揮する。


伝え方短期的な効果長期的な効果
脅す95%33%
理由を説明する95%77%


なぜ理由を説明した方が効果があるのか?

脅しよりも、ただ理由を説明するだけの方が効果があるという結果に驚かれた方は少なくないと思います。

なぜ理由を説明した方が効果があるのかというと、そこには人の心理的な性質があります。それは次の内容です。

人は自分が外部からの強い圧力なしに、ある行為をする選択をしたと考えたときに、その行為の責任が自分にあると認めるようになる。

理由を説明された子供たちは、脅しや暴力のような強い外圧をかけられていません。説明を聞いて自分で納得しておもちゃに触らないようにしました。

このため子供たちの中に「おもちゃを触らないと決めたのは自分自身だ」という責任感が無意識のうちに芽生えたということです。

理由を説明することは子供たちに自分自身で考える機会を与えることでもあります。それは子供たちの自立心を高める行為にもつながります

point

長期的にいいつけを守らせるには、子供が自ら考えて自分自身で納得する以外に方法はない。


脅しや暴力は逆効果

実験の結果が示しているように「脅し」や「暴力」といった外圧をかけることは、言いつけを守らせるという目的に対して的外れな対策になります。

脅威となる人がいる間はその言いつけを守りますが、その人がいなくなったり、あるいは自分の方が力を持つようになったら、その言いつけを守らなくなります

更に、学校や社会に出た後、親になった後で「脅し」や「暴力」を他人に対して使うようになります。親がそうやって育てたので、子供たちが同じようになるのも仕方がないことです。

悪いことはそれだけではありません。「脅し」や「暴力」は子供の自尊心を破壊する行為でもあります。

そのように育てた結果、自己肯定感が低かったり、自立心のない子供に育つ確率が高くなります。


まとめ

「暴力はいけない」「嘘をついてほしくない」「門限を守って欲しい」「おもちゃを片付けて欲しい」など子供に対しての要望は尽きないでしょう。

そういったときに脅しや暴力に頼ってはいけません。短期的には効果があるかもしれませんが、長期的にはあなたにとっても子供にとっても社会にとっても大きなデメリットになります。

大変なことではありますが、「なぜ暴力をふるってはいけないのか」を説明し、外圧の無い状態で子供自身が考え納得し答えを出す必要があります。

親がやるべきことは、子供が外圧を感じずに「確かにその通りだ」と思える材料や方法を提供することです

子供のことを心から大切だと思うのであれば、その努力を避けてはいけません。

決して簡単なことではありませんが、その結果もたらされる成果はその苦労にふさわしいものがあります。

子供が自立し、自ら考える子供になり、しかも親に虐待や暴力、脅しをされた経験がないので、恨みや憎しみも持たないでしょう。

家族が円満になり、自分が老後を迎えたときに、しっかりと育ててくれたことを感謝しサポートしてくれる子供に育ちます。


参考

この記事の内容はアメリカの有名な心理学者 ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の内容の一部抜粋と要約です。

現代のマーケティングで使われている手法が心理学の面から解き明かされ、たくさんの事例を交えてわかりやすい文章で記されています。

この本の内容を細かく知っているかどうかで、現代の市場に隠されているたくさんのワナにハマりカモになるのか、それを避けて利用する側に回れるのかが大きく分かれます。

気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。



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