【期待と上手に向き合え】期待により成績や体調が改善するが、死にも至る(ローゼンタール効果・ゴーレム効果・プラセボ効果・ノーシーボ効果)

人間心理
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私たちヒトは何かにつけて期待をする生き物です。無意識のうちに「きっと〇〇だろう」「いつか〇〇するまで辛抱強く待とう」と思い込んでしまうものです。

期待にはとてもポジティブな面とネガティブな面があります

そのポジティブさは強力で自分自身や他人の人生を劇的に改善する力を持ちます。一方、ネガティブさも同様に強力で人を死に追いやることもあります。

ここでは、期待のポジティブな側面とネガティブな側面とはどういったものかと、期待と上手に向き合う方法についてまとめています。


期待のネガティブな側面

期待のネガティブな側面は人に大きな失望をもたらし、時には自殺にまで追いやることです。

株への期待

仮に、あなたがこれまでの人生で一生懸命働いて貯めてきたお金を、ある企業の株に全額投資したとします。あなたには「この企業は確実に伸びる」という確信がありました。

ところが、翌年大きな災害が発生して、その企業は事業が立ち行かなくなり破産してしまいました。あなたの株や貯金は全て無くなってしまいました。

あなたは未来に絶望し、ビルの屋上から地面を眺めています。


異性への期待

仮に、あなたには3年間片思いしている異性がいるとします。その人はあなたには振り向いてくれていません。

あなたはその理由を「きっと自分には学歴もお金も地位も無く、自信もないからだ」「それさえあれば振り向かせることができる」と考えました。

そこであなたは、その異性に好かれるために自分の人生の全てをかけて勉強に励み、一流企業に就職し、たくさんの経験を積みお金と地位を手に入れました。

そこに至るまでに6年の歳月を要しました。

あなたはようやく「自分は意中の人にふさわしい人になれた」と確信しました。そしてその人に告白をしました。

しかし結果はダメでした。

あなたは片思いしていた3年間、そしてその人のために頑張った6年間を思い返して「私の9年間はなんだったんだろう」と思いました。

9年間もの間その人のことをずっと思い続けてきたため、心には大きな穴がぽっかりと開いています。

今あなたは、ロープを片手にクローゼットの前に立っています。


上記の2つの例のように、可能性が低いものに対して過度に期待しすぎると、それが外れたときの失望が自分では対処できない程に大きくなってしまいます


期待のポジティブな側面

期待がもたらすのは絶望だけではありません。期待をすることで実際に病気が治ったり、成績が上がることもあります。


プラセボ効果(プラシーボ効果)

プラセボ効果とは、1955年にヘンリー・ビーチャーが報告したもので、病気に全く効果のない薬を「これを飲み続ければ、病気が治りますよ」と言って患者に渡すと、本当に病気が治ってしまう効果を発揮することです。

患者は「これで病気が治る。楽になる」という強い期待を持つことで、これまで痛みで不安で埋め尽くされていた心に、安心感が生まれ、自然治癒力が上がるために起こります

つまり、期待しただけで病気が治るということです。

豆知識

プラセボ効果の逆で、本来効果のある薬でも「これは効果がないんだ」と思い込んで飲んでいると、病状がよくならないことがあります。これをノーシーボ効果といいます。


ローゼンタール効果(ピグマリオン効果)

ローゼンタール効果とは、アメリカの教育学者ロバート・ローゼンタールが報告した研究結果で「教師が生徒に期待することによって、生徒の成績が上がる」というものです。

ローゼンタールはサンフランシスコの小学校で知能テストを実施しました。そして、その結果に全く関係なくランダムに子供たちを選び出し、先生に「この生徒たちは、この前のテストで知能が高いことが証明された生徒です。今後成績が伸びるでしょう」と伝えました。

すると、1年後、先生に適当に伝えた生徒たちのIQが他の子供たちよりも遥かに高くなるという結果が出ました

これは、先生が無意識的に名前を告げられた生徒たちに期待したことで、生徒たちに注意を払い、結果として成績が伸びたということです。

先生と生徒以外でも、有名な権威者から「あなたはきっと大物になる」と言われた人は「自分は大物になるんだ」と信じ込み、一生懸命努力することがあります。

このように、誰かに期待をすると、その人の成績が多いに上がるということがおこります

豆知識

ローゼンタール効果はピグマリオン効果と呼ばれることもあります。これはギリシャ神話の中で、ピグマリオン(ピュグマリオン)王が恋焦がれた彫刻を、その願いの強さに応えてアプロディテ神が人間にしてあげたことが由来です。期待が強ければその通りになるとういことを表しています。

ローゼンタール効果(ピグマリオン効果)の逆で、「この生徒はダメな奴だ」という失望を持って接すると、本当にダメな生徒になることをゴーレム効果といいます。


認知症(アルツハイマー病)だと期待の効果がない

記憶を司る海馬に支障をきたし、脳が上手に働かくなくなるアルツハイマー型認知症の人は、期待をすることができません

このため、アルツハイマー病の人はプラシーボ効果など、期待することからくる効果の恩恵を受けることはありません。

同時に、記憶していないので、期待を裏切られたという大きな失望に至ることもありません。


期待と上手に向き合う方法

期待は私たちの脳に大きな希望をもたらして体の回復を助けたり、人の成長を促したりすることもありますが、大きな失望をもたらし生きる意味を失う原因にもなります。

このような危険なほどの強力なパワーを持つ「期待」とはうまく付き合っていく必要があります。

結論は「自分自身と、自分に親しい人には大いに期待し、自分がコントロールできないことには期待しすぎないようにすべき」ということです。

なお、期待は気負いすぎず、無責任に期待するのがベストです。


参考

この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。

本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。

とても分かりやすく、成功したい、幸福になりたい思っている人の必読書です。

この記事に少しでも興味を持たれた方は是非実際の書籍を手に取ってみることをお勧めします。



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