【過去の記憶を当てにしてはいけない】脳は過去の記憶を正当化し、間違いを消し去る|間違いに気づくことの重要性

人間心理
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私たちはふと目を閉じて空想にふければ、幼稚園・保育園生のときのこと、小学生のときのこと、中学生のときのこと、高校生のときのことなど、過去の記憶を自由に旅することができます。

鮮明に記憶に残ったシーンを頭の中で何度もフラッシュバックすることができます。

私たちの脳はとても優れているように感じます。

ですが、一つ注意が必要です。それは私たちが鮮明に思い出していると思っている記憶は、自分の脳により勝手に改ざんされていることがほとんどです。

ここでは、脳がいかに私たちの記憶を改ざんしているかについてまとめています。


10年×3000人に対する調査

アメリカの政治学者 グレゴリー・マーカスは実に大規模で気の遠くなるような実験を行いました。

それは、3000人の被験者を対象に、麻薬の合法化などの政治的な問題に対してアンケートを行いました。

そして、10年後に再び、同じ質問をしました。そのとき「10年前にあなたは、この政治的問題にどのように考えていましたか?」という質問も添えました。

その結果は、10年前の回答結果とはほとんどちがうものでした

つまり、ほとんどの人々が過去の記憶を都合がいいように改ざんしたということです。それも無意識のうちにです。

頭の中で過去の記憶が書き換わっていますが、決して悪気があるわけではありません。

point

人は無意識のうちに、自分の過去の記憶を都合がいいように書き変える生き物。


あなたが正しいか?相手が正しいか?

あなたが過去に親に言われたり、されて非常に嫌な思いをしたとします。5年、いや10年以上前のことかもしれません。

ある時、あなたが親に「あのとき、~したよね。私は傷ついたよ」と伝えると、親は「そうだっけ、そんなことしてないよ」「それはあなたの勘違い」と言ってきました。

これは、親にとって都合の悪い記憶を無意識のうちに改ざんしたいい例です。

ですが、本当に親の記憶が間違っているといえるでしょうか?


鮮明に残っている記憶も改ざんされる

アメリカの心理学者 ウルリック・ナイサーは、過去の記憶が自分に都合よく書き変えられてしまうという事実を受け、脳に正確に刻み込まれている記憶はないのか?という疑問を持ちました。

そこで、次のような実験を行いました。

人々の人生の中で衝撃的な印象を与えたニュースに対して自分の考えを書いてもらい、3年後にもう一度同じ質問をするというものです。

ウルリック・ナイサーは1986年にスペースシャトルのチャレンジャー号が爆発した事故について取り上げました。当時はインターネットやスマホは普及しておらず、テレビ全盛期の時代でした。

しかも、男性5人、女性2人の乗組員の中には、学校の先生を務める37歳の若い女性も含まれていました。世界初、教師が宇宙に行く機会ということもあり、大々的に報道され多くの人が注目していました。

そのスペースシャトルが発射73秒後に空中で爆発し空中分解して、乗組員全員が死亡した衝撃的な事故です。

ウルリック・ナイサーはその事故の翌日に学生たちに作文を書かせ、それを3年後に比較しました。

その結果は次のようなものでした。

印象的な記憶が3年後にどうなるか?
  • 3年後も同じ記憶だった学生は7%だけだった。
  • 書かれている内容の2/3(67%)は間違っていた。
  • 全く一致していないことを書いた人が25%いた。

つまり、どんなに印象的な出来事でも、3年後にそれを正しく記憶している人は100人中7人程度しかいないということです。

ほとんどの人の記憶の大部分が書き換わるし、まったく違う記憶にすり替わっている人が25%もいるということです。

ウルリック・ナイサーのこの実験結果から、あなたが過去に「あのとき~だった」と強く印象に残っている記憶も書き変えられている可能性が高いといえます。

point

どんなに印象的な記憶も、ほぼ確実に書き変わる。


「自分が正しい」には要注意

多くの人は「自分が正しい」という感覚をもって行動しています。

自分が学んだこと、経験したことに基いて、今の自分があり行動しているのだと信じています。今は過去の自分の集大成なのだと。

ところが、私たちの記憶は、些細なことでも印象深いことでも、大部分が自分に都合がいいように書き変えられます。

誰一人として「自分は間違っている」「自分は正しくない」と思いながら生きたくないからです。誰だって「自分は正しい」と信じて生きたいものです。

この事実が示しているのは過去の記憶に基いて「自分が正しい」と思い込んでいる状態は非常に危険ということです。

なぜなら、あなたが判断の元にしている記憶はかなりの確率で間違っているからです。

「自分が正しい」と思ったら、「なぜ正しいといえるのだろう?」「その証拠は何だろう?」と自分に問いかけることが重要です。それこそが、真実への扉を開くカギです。

point

「自分が正しい」と思ったら、それは間違えている可能性が高い。そのエビデンスは何か探すこと。


証拠は必須

事件の目撃証言など、人の過去の記憶を辿るものを信じ込むのは大変危険です。

なぜなら、人の記憶は当てにならないものだからです。

仮に、相手が間違ったことを言っていたとしても、それは必ずしもあなたを騙そうとしているわけではないということをも理解しておく必要があります。

良い人、悪い人、頭がいい人、頭が悪い人、ズルい人などに限らず、人の脳は今の自分に都合がいいように記憶を改ざんするようにできているということです。

誰かの記憶や意見を鵜呑みにするのはやめましょう。そして、どんなときでも裏付けを取るようにしましょう。

また、ビジネスやプライベートなど誰かとなんらかの約束をするときは、「証拠を残す」ことが重要です。

そうしなければ、相手に悪意があろうがなかろうが、言った言わないの論争になることは私たちヒトの特性上避けられないということです。

point

人の記憶を当てにしてはいけない。どんなときでも裏付けをとる。約束するときは証拠を残す。


間違いに気づくことは大いなる喜び

このような記憶の改ざんが最も起こりやすいのは「自分にとって都合の悪い事実」や「自分にとって気まずい物事」です。

過去の自分が間違っていたと認めることは、とてもしんどくツライことでもあります。このため、脳がそのツライ思いをさせないように、優しく記憶を書き変えてくれるのです。

ですが、記憶の書き変えは、あなたにとって決していいことではありません

なぜなら、人が成長できるのは自分の誤りに気付いた瞬間です。

「自分が間違っていた」と気づいた瞬間に、間違っていたことがきちんと過去のことになり、誤ったものの見方から解放されて、一歩前進することができます

point

「自分が間違っていた」と気づくことが、誤りを過去のものにし、あなたの人生を一歩前に勧めてくれる。


参考

この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。

本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。

とても分かりやすく、成功したい、幸福になりたい思っている人の必読書です。

この記事に少しでも興味を持たれた方は是非実際の書籍を手に取ってみることをお勧めします。



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