好きな人と付き合ったり、会社で出世するために上司に気に入られたり、お客さんに商品やサービスを買ってもらうためには「いかに好意を勝ち取るか」がとても重要です。
私たちは嫌いな人からとても簡単な依頼をされると往々にして断りますが、大好きなひとから難しい依頼をされても、それを受け入れて少しでも力になれるように努力します。
つまり、人生で成功を得たり充実した人生を送るためには「人から好きになってもらう」ことが必須要件になります。
見た目が美しかったりかわいかったり、かっこよくハンサムなど魅力的な人にとって、それは比較的簡単なことですが、そうでない人にとってはなかなか難しいことに見えます。
そして、実に多くの人がなかなか人に好かれないことに悩み苦労しています。家に閉じこもり、精神を病む人までいるほとです。
ですが、実は好意を得るために難しい努力は必要ありません。人類史の長年にわたる研究の結果、どうすれば人は好意を抱くかということが明らかになっています。
ここでは、人から好かれるとても簡単な6つの方法を、心理学の側面から紹介しています。
人から好かれる6つの方法
先に結論からいうと、次の6つをすることで人から好かれることができます。
どれも決して難しいことではなく、今すぐや明日からできることです。
以下ではそれぞれの方法でなぜ好かれるのかを解説しています。
身なりや髪型をよくする
相手に好感を抱かせる1つ目の方法は「身なりや髪型をよくする」ことです。
人の見た目というのは私たちが思っている以上に強い効果を発揮します。
この世には生まれながらにして端正な顔立ちをし、カッコいい、あるいはかわいい・美しい人たちがいます。
そういった人たちは「見た目がいい」というたった一つの特徴だけで好感を得やすくなります。
実際、外見的に魅力的な人はそうでない人に比べて、就職率が高く平均的な給与が12~14%高く、裁判沙汰になったときも刑務所に送られる確率がそうでない人の半分、また課せられる罰金も約半額になることがわかっています。
更に、見た目がいい人は異性だけでなく同性からも好かれ、サポートを受けやすくなることが実験の結果明らかになっています。
しかも、周りにいる人たちはそういった好意的な結果を与えたことを「その人の見た目がいいから」と認識していません。無意識のうちに好意的になっています。
他にも、外見的に魅力的という理由だけで、その人たちはより説得力があり、頭が良く、良い性格で、より誠実で才能に溢れていると評価される傾向があります。
このように「外見的魅力がある」という特筆した一つの特徴で、本来関連性のないことまで魅力的だと連想付けて考えてしまうことを心理学の用語で「ハロー効果」と言います。
ここでのハローとは挨拶のhalloではなく、haloと書くものです。神様の頭にのっかっているピカピカ光るリングや、神様の後ろからパーと差し込む光のことです。太陽や月を包み込むキラキラした神秘的な光もハローと呼ばれます。
何か神秘的な特性があると、たまたまそこにいる人を神様のように凄い人だと勘違いしてしまうことからきています。
ここでポイントなのは、外見的な魅力とは生まれ持った目鼻立ちやスタイルの良さに限らないということです。
ある就職試験の面接で合格した人とそうでない人を調べたところ、身だしなみがちゃんとしている人の方が受かる確率が高いという結果が出ました。
つまり、服装、髪型といった身だしなみを整え、清潔感を出すだけで好印象が得られるということです。
類似性を伝える
相手に好感を抱かせる2つ目の方法は「類似性を伝える」ことです。
類似性の力は私たちヒトにとってとても強力なものですが、その力はしばしば過小評価されがちです。
私たちにとって結婚相手を選ぶことはとても難しい選択で、簡単には決められないことです。
ですが、東京に出ているときにたまたま知り合った異性が同じ地元の人だった、というたった一つの類似性から好感を持ち、結果として結婚をするに至ることも少なくありません。
アメリカで行われた調査では、死に瀕している人たちのリストを渡されて「誰を最初に助けるか選んでください」と言われたとき、被験者たちは「自分と同じ政党を支持している」というごく単純な類似性で、誰の命を救うかを決めたほどです。
このように、類似性により私たちの中に自然と生じる類似性の力は決してあなどることができないものです。
このため、同じ出身地や同じ地域に住んでいたことがあれば「私もそこに住んでいました」と伝え、同じ趣味があれば「私もそれが好きです」といったように、ことあるごとに類似性を見つけて伝えることで好意を積み重ねることができます。
お世辞を言う
相手に好感を抱かせる3つ目の方法は「お世辞を言う」ことです。
お世辞というと「わざとらしい」「嫌らしい」「信頼がおけない」というネガティブな印象を持つ人がたくさんいます。そういった人は嫌なことも正直に伝える方が誠実でいいと考えていますが、それこそが大きな勘違いになっています。
お世辞が人の感情にどういった影響を与えるかについて調べた実験があります。
男性の被験者を次の3つの方法で評価して、その後に男性がどう感じたかという感情の変化を調べるものです。
- 肯定的な評価だけする。
- 否定的な評価だけする。
- 肯定的な評価と否定的な評価を織り交ぜる。
この結果、次の3つのことが明らかになりました。
つまり、自分に正直に相手を非難したりダメ出しすると相手に嫌われるということです。
そして、決して本当のことではなかったり、事実とは違っていたとしてもお世辞を言われたら、人は好感を覚えるということです。
特に、ブサイクな人に「かっこいい」「かわいい」なんて言ったら、あからさまなウソだってバレるし失礼でしょと考えている人がいますが、そういったブサイクな人ほど「かっこいい」「かわいい」と言われることに切望しているものです。
本当に好かれる人というのは、相手が望んでいるものを提供できる人です。
相手に好意を抱いていることを伝える
相手に好感を抱かせる4つ目の方法は「相手に好意を抱いていることを伝える」ことです。
多くの人は、相手に好いてもらおうとばかり努力します。相手に好きになってもらいたいという気持ちだけが先行して、あれこれと考えます。
ですが、相手に好いてもらう最もシンプルな方法は「相手に好意を抱いていることを伝える」ことです。
世界No.1のセールスマンとしてギネスブックに載った人物がいます。それは、自動車会社のシボレーのセールスマンのジョー・ジラード(Joe Girard)という人物です。
ジョー・ジラードがお客さんから好意を勝ち取るためにやっていたことはとてもシンプルでした。
毎月、1万3000人以上のお客さん一人一人にハガキを送っていました。ハガキのレイアウトは新年、クリスマス、バレンタインなどで異なるものの、書いてあるメッセージは全て同じでした。
あなたが好きです。
ただそれだけを伝えていました。それも1万3000通複製したものです。
このことに対して、ジョー・ジラードは次のように説明しています。
ハガキ以外には、自分の名前以外何もいらないんです。私がお客さんに好意を感じていることを伝えるだけでいいんです。
会う回数を増やす
相手に好感を抱かせる5つ目の方法は「会う回数を増やす」ことです。
何度も何度も会うよりも、1回で長い時間一緒にいる方がいいと考えている人がいますが、それは間違った考え方です。
実際、大学で遠くに離れてしまった親友よりも、自分が通う大学の中で頻繁に顔を合わせる気の合う友達の方が、最終的には関わり合いが強くなるものです。
頻繁に会う人に好感を抱くという心理は「ザイアンスの法則」または「単純接触効果」と呼ばれます。
これはアメリカの心理学者 ロバート・ザイアンスが、72名のアメリカ人に対して行った実験結果からきています。
ロバート・ザイアンスは次のような実験を行いました。
漢字を見せる
実験の内容はアメリカ人の被験者に対して、その人たちが過去に一度もみたことがない漢字を見せて、その見せた回数に応じた好感度を調べるというものです。
漢字を選んだのは「意味が想像できず」「全く触れたことがない」「発音もできない」ものであるためです。
漢字ごとに見せる回数を変えて、最後に「どの文字がいい意味を持つと思うか?」という質問をしました。
その結果、目にした回数が多かった漢字ほど「良い」という回答が得られました。
人の写真を見せる
ロバート・ザイアンスは他にも顔写真を用いた実験を行っています。
被験者に対し、それぞれ別の人が写った12人の顔写真を1枚につき2秒ほどのペースで繰り返し見せます。
見せる回数は写真ごと0~25回と変化させます。
そして最後に、すべての写真に対して0~6の7段階で好感度を振り分けてもらいます。
この結果、数回しか目にしていない人の顔より、10回ほど目にした顔の方が好感度が高いことがわかりました。
ただし、「ザイアンスの法則(単純接触効果)」には注意点があります。それは、そもそも前提として相手がこちらに対して嫌悪感を抱いていたり、対立や競争関係にある場合は、接触頻度が高まるほど余計に嫌われるとうことです。
あくまで相手がこちらに対して特別な感情を抱いていないか、少しでも好感を抱いているときに使う手法です。
使い方を間違えてストーカーにならないようにしてください。
プレゼントをする
相手に好感を抱かせる6つ目の方法は「プレゼントをする」ことです。
私たちヒトが持つ性質のうち特に強力なもの一つに「返報性の法則」があります。これは、何かをしてもらったらお返しをしなければいけないと感じる義務感のことです。
アップルの創業者スティーブ・ジョブスも通っていた宗教団体の一つにハレー・クリシュナ協会がありあす。
ハレー・クリシュナ協会は返報性の法則を上手に活用して、人々から募金を集め、世界中に支部を設立しました。
その方法は街角や空港に立って「小さな花をプレゼントする」というものです。相手が断ろうとしても「いいえ、これは私たちのプレゼントですから」と言って半ば強制的に渡します。
その結果、受け取ってしまった相手は何かお返しをしなければいけないという義務感を感じ、寄付します。
相手から「好意」を得たい場合には、その代償として最初に自分からプレゼントを渡すこともとても重要ということです。
なお、お金を渡すことは好ましくありません。というのも、私たちの中には「社会規範」と「市場規範」という両立できな二つの基準があるからです。
「市場規範とはお金が絡んだ基準」のことで、「社会規範とはお金の絡まない感情的な基準」のことです。
お金を渡すとその人のなかであなたと一緒にいる時間が時給などのお金に換算され損得勘定が働きます。
一方プレゼントであれば、その金額に関わらず相手はその気持ちに反応して気持ちで返そうとします。つまり、プレゼントはどんな些細なものでもいいということです。
ちなみに「このプレゼントは〇〇円だったよ」といって恩着せがましく値段を伝えた時点で、相手の頭の中は社会規範から市場規範に切り替わるので注意が必要です。
積極性がいかに重要か
ここまでで紹介した6つの方法はどれも自らの積極性を要するものです。恥ずかしくてなかなかできない、自分には勇気がないと感じる人がいるかもしれません。
最後に、積極性がいかに今後の人生を楽しいものに変えるか、そしてそうでない場合にいかに人生が辛く悩みが多いものになるかの簡単な例を紹介しておきます。
ウィル・ロジャース
アメリカ人で世界的に有名なコメディアン ウィル・ロジャースは次のように述べています。
私は嫌いなひととまだ会ったことがない。
ジェイン・オースティン
一方、イギリス人で世界的に有名な小説家 ジェイン・オースティンは次のように述べています。
人々があまり愛想良くしないようにと願っています。そうすれば、彼らをすごく好きになってしまって悩むこともないから。
ウィル・ロジャースとジェイン・オースティンは人に対して実に対極的な見方をしています。
人から好意を得る行動を積極的にできる人は「この世の人がみんな好き」と言える人生を歩むことができます。一方、消極的で人からの行動を受ける立場に回る人は「あまり愛想良くしないで欲しい」と願うようになります。
まとめ
「身なりや髪型をよくする」「類似性を伝える」「お世辞を言う」「相手に好意を抱いていることを伝える」「会う回数を増やす」「プレゼントをする」ことは、決して難しことではありません。
むしろ特別なスキルや経験を必要とせずに、今すぐにできることでもあります。
ただこれだけのことで相手からの驚くべきまでの好意を引き出すことができるので、誰かから好意を得たいと切望している人は是非試してみてください。
あなたやあなたの周りにいる人たちの人生が豊かで充実したものになることを心より願っています。
参考
この記事の内容はアメリカの有名な心理学者 ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の内容の一部抜粋と要約です。
現代のマーケティングで使われている手法が心理学の面から解き明かされ、たくさんの事例を交えてわかりやすい文章で記されています。
この本の内容を細かく知っているかどうかで、現代の市場に隠されているたくさんのワナにハマりカモになるのか、それを避けて利用する側に回れるのかが大きく分かれます。
気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。