オークションに参加してはいけない理由|勝った時点で負け確定(危険な心理)

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オークションはいいものが安値で売られていたり、ドキドキ感を味わえるなど参加する人が得する側面もあります。

公共事業の競売のように参加しないと仕事が得られない場合もあります。

オークションは値段を吊り上げたり、吊り下げるには絶好の手法ですが、逆に参加する方にとっては大きな危険をはらんでいます

ここではオークションに参加する危険性についてまとめています。


オークションの危険性

オークションに参加することがなぜ危険かというと、オークションは参加している人が「正常な判断をできなくする」という性質があるからです。

授かり効果

人には「自分が所有しているモノを、他人の評価よりも高く見積もる」性質があります。

どのくらい高く見積もってしまうかというと、アメリカのデューク大学で行われた実験ではバスケットボールのチケットを手にすることができなかったファンに「いくらなら買うか?」、チケットを持っている人に「いくらなら売るか」と質問したところ、次のような金額の差がありました。

  • 「いくらなら買うか?」:1万7千円
  • 「いくらなら売るか?」:24万円

同じ1つのモノにも関わらず所有してるかどうかで14倍もの値段の差が生じています

授かり効果の面白いところは実際に手にしていなくても発生するということです。

オークションは最終的に落札するまで自分のものにはなりません。ですが、自分がつけた額で一定時間以上入札がないと「手に入ったも同然だ」と所有した気になります

そして本来のモノの価値以上に高く見積もってしまいます。

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授かり効果の事例や詳細については下記をご参考ください。

(参考)【知らないと危険!】授かり効果・保有効果とは何か?捨てる・あげるができない心理


損失回避

人はある同じものを得る喜びよりも、失うショックを大聞く感じる生き物です。このため、どんなに些細なものでも失うことを無意識に回避しようとします。

これを損失回避といいます。

オークションの授かり効果で所有した気になった人には損失回避が働くので、思っている以上の高値をつけます

結果として、実際の評価額よりも高値になることが頻繁に発生します。

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損失回避が現代人のどんな行動につながっているかや、なぜ私たちは損失回避の本能があるのかについては下記をご参考ください。

(参考)損失回避とは何か?なぜ人は失ったり、損することを怖がるのか?


正常な判断ができない状態とは?

正常な判断ができている状態とは、自分が持っているお金や、そのモノの相場から「この額までなら出してもいい」と理性的に判断できる状態です。

一方、正常な判断ができないときは「なんとしても手に入れたい」「くっそー、悔しい」「絶対に勝つぞ」という感情が優位になっています。

スーパーに買い物にいって「悔しい」「勝ちたい」と思うことはあまりありませんが、オークションにはそういった気持ちを想起する仕組みが満載されています。

実に人間心理をうまく使ったビジネスです。


point

オークションには正常な判断をさせなくする仕組みが満載されている。


オークションに勝って負ける

工場の下請け

Appleのiphoneなど製造メーカーが部品をどこから買うかを競売にかけているところがたくさんあります。

Appleという安心な大企業からの大量受注や公式の納入業者になりたいという心理で、赤字になることに頭が回らず(あるいは赤字になることを軽視して)受注してしまう工場もあります。

結果として、生産すればするほど赤字が膨らむという負のスパイラルにハマります。


複数社見積もり(コンペ)

大企業では当たり前ですが、最近では一般のお客さんも複数社見積もりをするようになっています。

インターネットで目星をつけた会社に手当たり次第に見積もりを依頼して見積書をもらう。

そして、もらった中の最安値の見積書を使って「他者さんはこの価格でやってくれそうなんですが、もう少し頑張れませんか?」と尋ねます。

この作業を何度も何度も繰り返し、最終的に最安値を叩きだします。

これはお客さんは得していますが、受注が欲しいばっかりにほとんど利益がない金額を提示してしまう会社も少なくありません。

こういった受注を繰り返していると利益が足りなくなり、赤字経営に陥るリスクがあります。


油田入札

1950年代にアメリカのテキサス州である土地がオークションにかけられました。複数の石油会社がその土地の石油埋蔵量を予測して入札を行いました。

オークションが進むにつれて、会社は絞られ数社での生き残り合戦となりました。そして、最終的に最も高値をつけた会社がその土地を手にしました。

ところが落札価格があまりに高すぎたために、会社が傾く結果となりました


オークションはやっているときは「負けるもんか」という感情が働き、最終的に落札したときは「やったぞ!」という達成感があります。

しかし、その結果、後々「なんであんな額を入札してしまったんだろう」という後悔に苛まれることも少なくありません。


欲しい人が多いほど過大評価になる

オークションで値段を吊り上げていく場合も、一番安い見積もりを提示した人に発注する場合も欲しい人が多いほどモノの価値は過大評価されます

参加者が一人なら価格は吊り上がりません。ですが、参加者が10人いると価格が吊り上がっていきます。100人いるとより高値が付きやすくなります。


ビジネス戦略としての入札

オークションは参加する側にとっては危険ですが、その分開催する側に大きなメリットをもたらします

アルディの例

ドイツのディスカウントストア アルディは新製品を売り出すときに、卸売業者に入札させる仕組みをとっています。

卸売業者同士を戦わせて一番安い価格を提示した勝者に納品します。

アルディは利益が大きくなりますが、一番安い価格を提示した卸売業者の利益は小さくなります。

point

欲しい人たちを戦わせると利益が大きくなる。


参加者を増やす

モノ価値は欲しい人が増えれば増えるほど高くなるため、入札を開始する前に欲しい人を増やす努力が重要です。

上記の例で、卸売業者5社を戦わせるのと、10社を戦わせるのでは、10社を戦わせた方が最安値になる可能性が高くなります。

point

欲しい人たちが増えれば増えるほど利益が大きくなる。


オークション参加の注意点

オークションに参加を考えている人には世界屈指の投資家 ウォーレン・バフェットの格言をお届けします。

オークションには決して参加しないように。


もし、どうしても参加しなければいけないようであれば、理性的に判断できる状態で「この額までならいける」と考えた額から10%引いた額を上限として”紙に書き出しておく”のが有効です。

人は「なにくそ」という感情が優位になっているときは理性的な判断ができない生き物です。そのときに頭で考えようとしても無理です。

紙など、自分以外の場所に数値を記しておくことは人の性質を理解して賢く生きる知恵になります。


参考

この記事の内容はスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。

人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。

この記事の内容でハッとした部分が一つでもあった方は是非手に取ってご覧になられることをお勧めします。

あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。


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