1on1ミーティングなど社員と個別のミーティングを実施した方がいいとわかっていても、「とても忙しい状態のどこに1on1ミーティングをやる時間があるんだ⁉」と思う人は少なくありません。
1回30分だとしても、部下が10人いれば5時間もかかります。
残業で睡眠時間を削っているのに、更にで5時間を捻出するのは無理と感じる方もいます。
ですが、1on1ミーティングは未来への投資です。かけた30分以上に大きな見返りが返ってきます。
ここでは1on1ミーティングを実施すべき理由についてまとめています。
不安は放置すると不満に変わる
人は仕事で行動したり、お客さんなど人と関われば、1日の中にたくさんの疑問や不安を感じる生き物です。
不安や疑問はすぐに解決できる場合もあります。ですが解決できない場合にそれを相談する人がいないと、頭の中でグルグルと繰り返されて大きな不安に変わっていきます。
不安が不安のまま大きくなってメンタルを病んでしまう人もいれば、不安が不満に変わりそれが大きくなって突然退社する人も出ます。
「上司に言う」は心理的ハードルが高い
仕事の進め方や業務で生じた疑問など、マネージメントからすれば「早く相談してよ」と思うかもしれませんが、社員からすると上司に相談するというのは、友達に話すような簡単な行為ではありません。
特に、普段会話することがなく年次評価で査定するときにしか話さないような場合は当然です。
上司に話す前に「これを言ったら評価が下がるかも」「今忙しそうだから時間があるときに言おう」「そんなことで相談するなと言われるかも」といった思考が生まれるものです。
そういった思考が心理的ハードルとなって結局言い出せない社員は少なくありません。
「早く言ってくれればよかったのに」はダメ
上司と話す心理的ハードルが高い場合、上司に報告するタイミングは問題が大きくなったり、期日ギリギリになります。
「もっと早く言ってよ」「早く言ってくれればよかったのに」と言う上司も少なくありません。
ですがこれは社員が悪いのではなく、上司が悪いです。
社員と上司の関係がその程度でしかないということです。
社員がすぐに相談できない関係性しか築けなかった上司の責任です。
時間を奪っている原因
マネージメントの時間を奪っている原因は業務のことだけでしょうか?
むしろそれよりも、
- 部下がギリギリになって報告してきた問題のせいではないでしょうか?
- 優秀な社員が急に辞めると言い出し、その対応に追われているのではないでしょうか?(いわゆるびっくり退社)
- 社員が病んでしまって、その対応に追われているのではないでしょうか?
実はマネージメントが「忙しい」「時間がない」と感じている原因は部下の急な報告や、急な体調の変化が大きく占めています。
変化は急ではない
上司からすると「急に⁉」「今更⁉」と感じることも、その現象自体は急に始まったわけではありません。
社員が業務で大きな問題を抱えたのも、その前に小さな兆しがあります。それが時間経過とともにどんどんと大きくなっただけです。
社員がメンタルを壊して病んでしまったのも、ある日急にメンタルを壊したわけではありません。不安が積もり積もって、張りつめていた糸がプチっと切れてしまっただけです。
優秀な社員が急に「辞めます」と言い出したのも、昨日、今日、ここ1週間で考え方が変わったわけではありません。
もともと「物足りない」「自分の目標を達成できない」「やりたいことができない」といった不満を抱えていてそれが時間経過とともに大きくなり、そして転職に踏み切る決心がついたのです。
会議や打ち合わせではいけない理由
社員が言い出しにくいといわれても、「会議や打ち合わせでしょっちゅう話している」と考えるひともいます。ですが、これではいけません。
会議や打ち合わせで話し合うことは「目標」「進捗」「今後の業務の進め方」についてです。フォーカスしているのは「会社のこと」です。
一方、1on1ミーティングで話すことは「体調はどうか?」「今どんな目標を持っているか?」という「社員一人一人」にフォーカスすることです。
些細な問題を打ち明けたり、メンタルを病んだり辞めたくなるのは「会社のこと」ではなく「その人個人のこと」です。
「会社のこと」ばかりにフォーカスしているから、個人のことを相談する心理的ハードルが高くなり、急な報告ばかりが増えていくのです。
1on1ミーティングのメリット
1on1ミーティングは社員一人一人にフォーカスする時間です。そのメリットは社員がもたらす「急な問題報告」「急なメンタルの不調」「急な退社」に対する最善の予防策です。
社員が問題が小さいうちに報告してくれて、メンタルを病む前にストレスを取り除くことができて、優秀な社員がモチベーション高く業務をしてくれたら、これほど楽で時間が生まれることはありません。
1回30分だとしても、部下が10人いれば5時間かかりますが、将来的に見ればかけた以上の時間が生まれます。
部下からの相談が短くなる
実際1on1ミーティングを定期的に実施することで部下からの「ちょといいですか?」の相談が短くなります。
問題が大きくなってから相談されると、背景、これまでの経緯、現状を細かく聞かなければいけません。
ですが大きな問題に発展する前の小さな疑問の段階で相談されれば「それはこうしたらどうかな?」と簡単に返すことができます。
状況や経緯が都度入ってくるので上司も把握しやすく、何より部下は1から報告しなくていいので心理的なハードルが下がります。
「先日のことなんですけど」といって端折って相談することができます。
ビックリ退職や休職がなくなる
1on1ミーティングで社員の体調や達成したい目標を都度確認していれば、「ストレスが溜まっているか」「会社の目指す方向性と個人の達成したいことがリンクしているか」を知ることができます。
社員が上司と信頼関係があると感じていれば、社員の心の中で会社とのズレが出てきたときに「今、自分の方向性と合っていない」という相談ができます。
最終的に辞める結果になったとしても、早めに伝えておいてもらえると業務の割り振りなどその後の対応がしやすくなります。
最終的に辞める結果になったとしても、早めに伝えておいてもらえると業務の割り振りなどその後の対応がしやすくなります。
1度にまとめてやる必要はない
1on1ミーティングを実施するときに、1~2日を社員との面談に充てている場合があります。ですがこの方法は適切とは言えません。
1on1ミーティングだけで1日が終わってしまうのと、社員からしても流れ作業のようになってしまいます。
それよりも1日1~2人で分担し、必要に応じて時間も伸ばせるように柔軟にした方が信頼関係の構築はしやすくなります。
マネージメントも1日何時間もぶっ通しでやるよりも、1日1時間程度の方が気が楽に進めることができます。
参考
この記事の内容は「シリコンバレー式最強の育て方 人材マネジメントの新しい常識1on1ミーティング」の内容の一部抜粋と要約です。
この本には世界の先端を走るアメリカ シリコンバレーの企業で行われている人事のあり方について実例を交え具体的な方法が多数紹介されています。
興味を持たれた方は手に取ってみることをお勧めします。