人には「ついつい目先の利益に飛びついてしまう」という性質があります。
それが良い悪いではなく、私たちの脳が目先の利益をより重要視するようにできているためです。
ですが現代の世の中にはその性質を上手に使ったワナが張り巡らされています。
逆に、目先の利益に騙されず、きちんと我慢できる人が成功できる仕組みも整っています。
ここでは、私たちが目先の利益に対してどれぐらい錯覚を起こしてしまうのかについて解説しています。
今すぐもらうか後でもらうか?
例えばお金持ちのおじさんがあなたに次のような話を持ち掛けてきたら、あなたはどうするでしょうか?
「1年後に10万円もらうのと、1年1か月後に11万円もらうんだったらどっちがいい?」
ほとんどの人は11万円と答えます。1万円多くもらえた方が得だからです。
では、次の場合はどうでしょうか?
「今日10万円もらうのと、1か月後に11万円もらうんだったらどっちがいい?」
この場合、多くの人が今日10万円をもらう方を選択します。
「今お金が必要だから」「今もらっておかないと来月もらえる保証がないから」など自分のなかで何かしらの理由付けをしていることでしょう。
これは、私たちが目先の利益を高く評価してしまうことを示しています。
言い換えると「目先に利益があると、正しく判断できなくなる」ということです。
マシュマロテスト
子供たちにどれだけの自制心があるかを調べるためにスタンフォード大学で行われた実験があります。
それはマシュマロテストというものです。
子供を部屋に1人で座らせて、目の前にマシュマロを置きます。そして子供たちに次のように告げます。
「少し部屋を出て15分後に戻るね。それまでにマシュマロを食べなければ、マシュマロをもう一つあげるよ」
この実験を186人の4歳の子供に対して行いました。結果、我慢できた人はたったの30%程でした。
ほとんどの子供が15分後に2倍になる利益よりも、目の前の利益に手を出してしまったということです。
目の前の利益に手を出さないように自制できるのは能力ということです。
なぜ目の前の利益を優先するのか?
なぜ目の前の利益を優先するかというとそれは狩猟採集時代にヒントがあります。
狩猟採集時代はいつ食糧がとれるかは不確かでした。目の前の食糧を手に入れることができなければ、次に食料を手にできないかもしれません。
来月まで待つ、1年後まで待つという判断をしていたら死んでしまいます。
このため「目の前の利益をなんとしてでも手に入れよう」という感情が強い生き物程生き残る確率が上がります。
私たちは「目の前の利益をなんとしてでも手に入れよう」という感情が強かった生き物の子孫なので、目の前の利益に過剰に反応してしまうのは仕方のないことです。
目の前の利益を追うメリットは少ない
「目の前の利益をなんとしてでも手に入れよう」とする強烈な感情は狩猟採集時代は必須の重要な能力でしたが、現代社会では足かせになっています。
目の前の利益を追う人は絶好のカモ
ビジネスの世界では売る人と買う人がいます。売る人の目的はお金を儲けることです。そのためには消費者に買ってもらわなければいけません。
売る側にとって最高の買い手とは「今すぐ欲しい!」という感情に負けてすぐに購入してくれる人たちです。
「新しいものが出れば欲しい!」「珍しいものがあれば欲しい!」そういう人たちが多ければ多いほど売る側は儲かります。
そういった人たちにとって我慢できず目先の利益に捕らわれる人たちは絶好のカモです。
目先の利益を追う人は貧乏になる
目先の利益を優先する人たちはお金持ちになることも難しいです。
お金は使ってしまえば減ります。例え持っていたとしても何もしなければ増えも・減りもしません。
増やすためには一定の利子で運用することが必要です。
賢い人たちは自分の収入の10%以上を運用に回します。運用の利率が例え3%だったとしても、23年後には貯金した額の2倍のお金が貯まるからです。
一方、目先の利益に捕らわれてしまう人は、稼いだお金をすぐに使ってしまいます。結果未来にお金は溜まっていきません。
我慢できる人が成功する
先ほどのマシュマロ実験には続きがあります。実験に参加した子供たちに対して18年後に追加調査が行われました。
それは大学適正試験(SAT)の点数を調べるというものです。
すると4歳のときに目先のマシュマロを我慢して2倍の利益を得た子供たちの方が、テストの点数が平均して210点も高かったことがわかりました。
テストの点数以外でも、現代社会では目先の利益よりも将来の利益を優先できる人が勝てる仕組みがたくさんあります。
- 貯金や投資
- 仕事
- 自己の能力開発
日本の有名な精神科医 樺沢 紫苑(かばさわしおん)さんは次のように語っています。
学んだ知識が生きてくるのは10年後。
つまり将来成功を得ようと思ったら、今から10年後を見据えて自己に投資してくことが重要ということです。
「明日が人生最後の日だと思って生きよう」は間違い
「明日が人生最後の日だと思って生きよう」という言葉は色々な場所で聞くことができます。Appleの創業者 スティーブジョブスも次のように語っています。
私は毎朝鏡を見て自分にこう問い掛けるのを日課としてきました。「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定は本当にやりたいだろうか?」
これは重要な真実でもありますが、大きな危険もはらんでいます。
目先の利益を追いかけてはいけない
「明日が人生最後の日だと思って生きよう」という言葉に感化され、本能に沿って目の前の利益を追い求めていたら破産します。
なぜならほとんどの場合人生は明日終わらないからです。日本人であれば80歳以上まで続くのが普通です。
どうせ明日死ぬからと言って、全財産をギャンブルに賭けたら破産します。
本当の意味
「明日が人生最後の日だと思って生きよう」という言葉が驚くべき効果を発揮するのは、未来から今日を逆算したときです。
自分の人生にとって一番本質的なことは何か?を問うことで余計なことをそぎ落としていくことができます。
スティーブ・ジョブスが語った「宇宙に凹みを作ろう(make a dent in the universe)」という本当に達成したい目的のために、今日何をすべきかを考え抜くために使うと、人生がより充実したものになります。
目先の利益に捉われず、将来的な視点から本質的にやりたいことを考え抜き今を生きることで、あなたの人生が充実して幸せなものになることを心より願っています。
参考
この記事の内容はスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。
この記事の内容でハッとした部分が一つでもあった方は是非手に取ってご覧になられることをお勧めします。
あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。