【初心者向け まとめ】人事労務の労務管理とは何か?やらなければいけないこと|社会保険、所得税(源泉徴収)、雇用保険、住民税(特別徴収)の管轄と納付先

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人事労務の労務管理は、企業にとって欠かせない業務です。しかし、社会保険、所得税、雇用保険、住民税など、様々な手続きがあり、どこから手をつければいいか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

この記事では、人事労務の基礎知識をわかりやすく解説しています。これらの手続きの目的や、管轄と納付先をまとめていますので、人事労務の全体像を把握したい方、これから人事の仕事に挑戦したい方は、ぜひご覧ください。


人事労務とは何か?

人事労務とは、企業が従業員を雇用し、働きやすい環境を整えるための、幅広い業務を指します。

具体的には、採用活動から始まり、入社後の配置、育成、評価、そして退職までのあらゆる段階において、従業員に関わる様々な業務を行います。

採用では、企業の求める人物像に合う人材を積極的に探し出し、面接や適性検査などを通じて選考を行います。配置では、新入社員の配属先を決めたり、既存の従業員の配置換えを行ったりすることで、その人の能力を最大限に発揮できるような環境を整えます。

育成では、研修やOJTを通じて従業員のスキルアップを支援し、組織の成長に貢献できる人材へと育成します。評価では、従業員の仕事ぶりを客観的に評価し、その成果を給与や昇進に反映させ、モチベーションを維持します。

また、労務管理では、労働条件の整備、社会保険手続き、給与計算など、従業員が安心して働けるための環境を整えます。福利厚生では、従業員の生活の質向上を図るための様々な制度を企画・運営します。

人事労務の目的は、従業員がいきいきと働ける環境を作り、組織全体の生産性を向上させることです。優秀な人材を確保し、育成することで、企業は持続的な成長を実現することができます。

人事労務は、法律知識やコミュニケーション能力、そして、常に変化する社会情勢に対応できる柔軟性が求められる、奥深い仕事です。


以下で、人事労務の労務管理について解説していきます。



人事労務の4つの実施タイミング

人事労務は実施する期間やタイミングによって大きく次の3つにわけることができます。

3つの分類
  1. 月次作業
  2. 随時作業
  3. 年次作業
  4. その他


月次は毎月発生する処理。随時は誰かが入社したときなど、イベントが発生したタイミングで実施する処理。年次は毎年行う処理です。


月次作業

人事労務で毎月やらなければいけないことには次のようなものがあります。

月次作業
  1. 勤怠管理
  2. 給与計算
  3. 給与支払い
  4. 保険料や税金の支払


毎月の勤怠管理をし、月末に勤怠を締めてまとめます。

勤怠内容からその月の給与計算をし、給与の支払を行います。

給与の支払いを行ったら、保険料や税金の支払を行います。



随時作業

従業員の入社や退社などイベントの発生毎にその都度やることが随時作業です。

随時作業
  1. 入社手続き
  2. 退社鉄好き
  3. 随時改定(社会保険料変更手続き)
  4. 賞与計算と賞与明細の発行

随時改定とは、給与額が上がったり下がったりした場合に、社会保険料の変更を行う手続きです。



年次作業

年次作業で必要なのは36協定です。

年次作業
  1. 36協定の届け出(時期は事業所による。4月ごろが多い)
  2. 特別徴収の住民税額の更新(5月ごろ)
  3. 労働保険の年度更新(6月ごろ)
  4. 提示決定(算定基礎届)(7月ごろ)
  5. 年末調整(12月ごろ)

※実施月は参考です。

36協定とは?

36協定とは、労働基準法第36条に基づく「時間外労働・休日労働に関する協定」のこと(残業について)で、法定労働時間を超えて労働させたり、休日労働をさせたりする場合に、使用者と労働者の間で結ぶ協定です。

なぜ36協定が必要なの?

労働基準法では、原則として1日の労働時間を8時間、1週間の労働時間を40時間と定めています。しかし、業務の都合上、どうしてもこの時間を超えて労働させなければならない場合があるでしょう。そのような場合、労働者の過労を防ぎ、健康を確保するために、36協定を結ぶことが法律で義務付けられています。


特別徴収の住民税額とは?

特別徴収の住民税額とは、企業が従業員の給与から天引きし、市区町村に納めるべき個人住民税の金額のことです。従業員が直接納めるのではなく、会社が代わりに納付する制度が特別徴収です。

なぜ特別徴収が必要なの?

従業員は、納付の手続きをする必要がなく、給与から自動的に天引きされるため、納税の手間が省けます。

納付忘れによる延滞金が発生するリスクを減らすことができます。

企業は、従業員全員の住民税をまとめて納付できるため、徴収業務が効率化されます。



労働保険とは?

労働保険とは、「労災保険」と「雇用保険」を合わせた総称です。労働者が業務中に負傷したり病気になったりした場合に、その労働者や家族を保護するための社会保険制度です。

・労災保険とは?
業務中や通勤途中の事故・ケガなど、仕事に関連する事由によって労働者が被った傷害や疾病に対して、治療費や休業補償などを支払います。

・雇用保険とは?
失業した場合や、育児や介護のために仕事を休んだ場合などに、失業給付や育児休業給付などを支払います。


提示決定(算定基礎届)とは?

提示決定(算定基礎届)とは、簡単に言うと、従業員の社会保険料の金額を決めるための手続きのことです。毎年1回、4月から6月までの給与をもとに、その後の1年間の社会保険料の金額が決定されます。この手続きで提出する書類が「算定基礎届」です。

なぜ提示決定が必要なの?
従業員の給与は、昇給や賞与などによって変動します。社会保険料は、この給与の変動に合わせて適正に支払われる必要があります。そのため、毎年1回、給与の状況を確認し、それに応じて社会保険料の金額を決定する必要があるのです。


年末調整とは?

年末調整とは、1年間の所得と税金を精算する手続きのことです。

1年間の収入や支出を総合的に判断し、正確な所得税額を計算します。毎月給与から天引きされている所得税(源泉徴収)と、年間の所得税額に差が生じている場合、その差額を調整します。

払い過ぎている場合は還付され、不足している場合は追加で徴収されます。

年末調整の対象となるのは、会社員と一定以上の収入があるアルバイトやパートです。



その他

明確な時期は決まっていないもののやらなければいけないことに次のようなものがあります。

その他
  1. 就業規則
  2. 賃金規定
  3. 労使協定
  4. 福利厚生
  5. 社内評価制度



保険や税の納付先

人事労務では、従業員に支払った給与に基づいて保険料や税金納付などの対応をする必要があります。それぞれ届け出先が決まっています。

人事労務関連で納めるべき主な税には次の4つがあります。

主な税金(人事労務関連)
  1. 社会保険
  2. 所得税
  3. 雇用保険
  4. 住民税


社会保険とは?

社会保険とは、「①健康保険」「②厚生年金保険」の総称です。

これらの保険は、病気やケガをした際の医療費の負担を軽減したり、老後の生活を保障したり、介護が必要になった際の費用をサポートしたりする目的で、国民全員が加入するべき制度です。

  • 健康保険: 病気やケガをした際の医療費の負担を軽減します。
  • 厚生年金保険: 老後の生活を保障するための年金や、障害年金、遺族年金などを支給します。


社会保険は従業員が一定の条件を満たしている場合に必ず加入する必要があります

会社と従業員で半額ずつ費用を負担します。(会社:50%、従業員:50%)

社会保険の管轄や納付先は最寄りの年金事務所です。


所得税とは?

人事労務における所得税とは、給与額の算出とそれによる届け出です。

人事労務で行うことは届け出および、金額の仮払いのみで、費用は全額従業員が負担します。主には次の2つがあります。

  1. 源泉徴収
    会社が従業員の給与からあらかじめ所得税を天引きし、国に納めることを「源泉徴収」といいます。(原則:毎月納付)
  2. 年末調整
    年末に、1年間の所得と源泉徴収額を精算し、過不足を調整する手続きが「年末調整」です。

管轄や納付先は最寄りの税務署です。

納期特例

所得税の源泉徴収は原則毎月納付ですが、従業員数が10人に満たない場合は最寄りの税務署に「納期特例」を申請することで、納付を半年に一回にすることができます。

納付額は同じですが、手間が減るため、対象企業は申請することをお勧めします。



雇用保険とは?

雇用保険は、労働者が失業したり、育児や介護などで仕事を休まざるを得なくなった場合に、生活の安定を図るための国の制度です。

失業手当などの給付金を受け取ることができます。失業中の職業訓練や職業紹介などの支援を受けられます。育児休業や介護休業を取得した場合、給付金を受け取ることができます。

従業員が一定の条件を満たす場合に必ず加入しなければいけない保険です。

費用負担は会社が約2/3、従業員が約1/3となります。

管轄はハローワーク、保険料の納付先は最寄りの労働基準監督署です。

MEMO

労働基準監督署は通称「労基署(ろうきしょ)」と呼びます。

なお、雇用保険と労災保険を合わせて「労働保険」と呼びます。この2つの保険料の納付先は労基署です。


労災保険

労災保険の費用負担は全額会社となっています。このため、人事労務の直接の管轄とは外れますが、雇用保険料と合わせて労災保険料も支払う必要があるので、忘れず納付してください。


コラム

従業員が代表1人のマイクロ法人でも雇用保険や労災保険に加入する必要があるかについては、下記をご参考ください。

マイクロ法人も労働保険(雇用保険と労災保険)に加入が必要?



住民税とは?

住民税とは、私たちが住んでいる市区町村に納める税金のことです。住民税の税収は、地域の公共サービス(ごみ収集、道路の整備、学校の運営など)に充てられます。

住民税の納付方法には、大きく分けて「特別納付」と「普通納付」の2種類があります。人事労務として対応が必要なのは「特別納付」です。

基本的に、従業員は特別納付となります。会社は仮に納付するのみで負担金はありません。従業員が100%負担です。

管轄や納付先は従業員の居住地の市区町村です。


注意点

従業員の納付方法が「普通納付」となっている場合は、原則「特別徴収」への切り替え申請が必要です。

なお、手続きの方法や届け出書類のフォーマットは市区町村ごとに異なります。詳しい切り替え方法は従業員の居住地の市区町村に問い合わせが必要です。


特別納付

会社員など、給与所得がある人は、原則として毎月給与から住民税が天引きされます。この方法を特別納付といいます。

天引きされた住民税は、会社がまとめて市区町村に納付します。従業員として納税の手続きが簡単で、納期を忘れる心配がありません。市区町村としても徴収漏れや管理コストを減らすことができます。


特別納付

自営業者や年金生活者など、給与所得がない人は、自分で納付書に基づいて納付します。納期までに納付しないと延滞税がかかることがあります。



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