何か新しい行動や、既存の問題に立ち向かうときに、最初に立ち上がるリーダー的な存在の人が断トツで重要だと考えています。
後からそれに続く人たちは後追いでしかないという評価になります。
ですが、新しムーブメントを起こすためには、最初に立ち上がった人と同じかそれ以上に、最初にそこに加わる人の存在がとても重要です。
ムーブメントが発生する仕組み
新しいムーブメントが巻き起こる仕組みは、ミュージシャンでプログラマーでもある起業家のデレク・シバーズのTEDによって世界中に広まりました。
デレク・シヴァーズはTEDのプレゼンテーションの中で1つの動画を流しました。
ある屋外のコンサート会場の丘の上で、上半身裸の若い男性が踊っています。最初は誰も見向きもしないか、目を向けたとしても物珍しそうな目つきでそれを眺めています。
「何あれ」「頭おかしいんじゃないの」といった冷めた声も聞こえてきそうな状態です。
そこに、一人の男性が加わります。
これで一人の頭のおかしい人がやっていた行動が、二人になりました。
最初に参加した人は更に仲間を呼びます。更に3人の仲間が加わり、踊る人たちは5人になりました。
この5人になった瞬間がこの場所のブレイクポイント(トリガー)です。
5人の集団が楽しそうに踊り始めると「私も」「私も」と言って更に人が集まってきます。
最初はダンスを踊っている上半身裸の男性は頭のおかしな人で、その輪の中に加わるのは頭のおかしな人の仲間入りをすることでした。
ところが、これだけの人数が増えるとダンスに加わらないことの方が頭のおかしな少数派へと変わります。
結果として、次から次に人が集まってきます。
最終的にできあがるのは大きな人だかりです。
次から次に「私も」「私も」という人が集まり止まらなくなります。
これがムーブメントが発生する仕組みです。
最初はリーダーである必要はない
一人の裸の男性が踊り始めたように、何かの大きなムーブメントを始めるときは、誰かがリーダーになる必要はありません。
フォロワーができれば、最初に行動した人が自然にリーダーになるだけです。
みんなと違うことは頭がおかしいと思われることです。大切なのは、そのみんなから頭がおかしいと思われる行動をやり続けることです。
すると、フォロワーが現れ、その数が徐々に増えていき、気づくとその輪に参加している人ではなく、参加していない人が少数派へと変わっていきます。
最初のフォロワーもリーダー
何かのムーブメントを始めるには、最初に行動を始める頭のおかしな人がいます。
最初は一人しかおらず、その人はリーダーでもなんでもありません。ただのおかしな行動をしている人です。
ところが、そこに一人のフォロワーが加わると、とたんに最初に行動を始めた人がリーダーになります。
この最初に参加する人の存在は、一番最初に行動を起こすぐらい重要なのです。
世間が「変わっている」「頭がおかしい」と思う運動に最初に参加することは勇気がいることです。
そのように自らの判断で勇気ある行動をとれる人も一種のリーダーといえます。
過大評価と過小評価
ムーブメントが発生する仕組みからもわかるように、最初に行動する人と最初にフォローする人はどちらも同じぐらい重要です。
つまり、「一番最初に行動した人が特別に偉い」「後から続いた人は、所詮後追いでしかない」という判断は完全に間違っているとうことです。
最初に行動を始めたリーダーを過大評価しすぎるをやめ、最初にそれに続いた人を過小評価することをやめるのが新しいムーブメントを起こすためのカギになります。
イノベーションは広くオープンな場所から生まれる
これまでになかったものがどんどんと社会に浸透していくのも、新しいムーブメントが起こることと一緒です。
携帯電話が出た当時も「電波が体に悪い」「健康被害が出る」といった理由で、多くの人がその発明品を避けていました。
ところが、それが世の中に普及し、一定数以上の人が使い始めたところで「私も」「私も」という人が増え、ほぼ全ての人が携帯電話を持つにまで至りました。
イノベーションはこのようにしておこります。
最近ではイノベーションを起こすために、イノベーションを起こすための部署をつくるなど人々を隔離して研究や実験をさせるところがあります。
ですが、これでは十分なフォロワーが集まりません。結果としてそういった隔離された狭い空間からイノベーションが生まれることはありません。
イノベーションを起こすためには、たくさんの人がいるオープンな場所で実験を重ねる必要があります。
最初は頭がおかしいと思われるのが普通です。ところがそこに勇気ある最初のフォロワーが加わります。そして、その人が他の人を呼び込みます。それが連鎖し、ある一定数を超えたところで「私も」「私も」という大きなブレイクスルーが生まれます。
参考
この記事の内容はデレク・シヴァーズのTED「社会運動はどうやって起こすか」の内容を元にしています。
TEDのプレゼンテーションは3分にも満たない非常に短いものです。
人数がある一定数を超えると雪崩のように人が集まる姿を見て取ることができます。