アインシュタインよりも賢い頭脳にアクセスできる私たちは幸せになったのか?本能に従ってはいけない理由

思考法
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2000年以降インターネットが広く普及して、私たちは検索エンジンや各企業のデータベースやクラウドを通じて様々な情報にアクセスできるようになりました。

私たちがアクセスできる情報量や享受できる情報処理速度の速さは、世紀の天才として名高いアインシュタインの頭脳を遥かに上回っています。

イギリスの経済学者で経済雑誌エコノミストの編集長でもある、ノーマン・マクレーはインターネットが普及する遥か前の1972年に次のような予言をしています。

最終的には、どんな愚か者でも実験室やオフィス、公共図書館、あるいは家庭にあるコンピューター端末の前でキーボードをポンポン押すだけで、巨大なデータバンクに蓄積された想像もつかないくらい膨大な情報を、アインシュタインの脳の何万倍にも相当する機械的な集中力、計算能力をもって検索することができる、そんな時代に突入していくだろう。

この予言の示す通り現代では賢い人だけに関わらず、お年寄りから子供までありとあらゆる人がインターネットにアクセスできるようになりました。

強靭な頭脳な膨大な情報を手に入れたことで私たちは、賢く幸せになったのでしょうか?


愚か者は愚か者のまま

結論から言うと、誰もがアインシュタインの脳以上に素晴らしい機械を使い、自由に情報にアクセスできるようになったにも関わらず、愚か者は依然として愚か者ののままです。

賢くなり幸せになるどころか、たくさんの情報や選択肢に悩み惑わされ「時間がない」「どれが正しい情報かわからない」と叫んでいる人が大勢います。

インターネットの登場は私たちを賢くしたわけではなく、より短時間で欲求を満たせるようにしたにすぎません

私たちが食べれば食べるほど幸せにから遠ざかり、太り、不健康になり、病気になるのと同じで、より簡単に欲求を満たすことで、スマホ中毒など様々な中毒になっている人たちが大勢います。

つまり、どんなに賢い頭脳が使える環境にあったとしても、使う本人自体が賢くならなければ結局は何も変わらないということです


私たちの本能と特徴

更に最も大きな問題は現代社会と私たちの本能や生態系との間矛盾が非常に大きくなっていることです

人類の祖先が誕生したのは約500年前、人の祖先であるホモ属が誕生したのは約200年前、そして直接的な祖先であるホモサピエンスが誕生したのは約20万年前だと言われています。

1万2千年前までの約500万年は狩猟採集の時代でした。1万2千年前にようやく世界の一部で農耕や牧畜、稲作が始まりました。

そして約200年前に産業革命が起き、20年前にインターネットが普及し始めました。

狩猟採集時代に比べると、産業革命が起こってからの期間が人類史の0.004%、インターネットが普及してからはたったの0.0004%にすぎません。

つまり、私たちヒトにとっての歴史は99.996%(ほぼ100%)は狩猟採集時代です。

このため、私たちの本能は基本的に狩猟採集時代に生き残り子孫を残すために適したものになっています。

生き残る確率を上げるために、逃げている人を見れば何も考えずに逃げる行動に出ます。

怪我をしたり何かを失うことは致命傷になるため、失うことを極端に恐れ回避しようとする本能がプログラムされています。

ひとたび競争が始まれば、競争に勝とうとする本能が呼び起こされ、理性を超えてまで相手に勝とうとします。

このように、私たちには深く考えることなく、何か一つの情報があればそれに反応して思考が生まれる特性があります

これらの自動的な思考や行動は、狩猟採集時代にヒトが生き残るために多大な貢献をしてきました

しかし、敵に襲われたり、食料が手に入らなかったり、命の危機に瀕することが少なくなった、現代社会に生きる私たちにとってはもや誤った判断の原因になっています


モノと情報過多との矛盾

モノと情報がありふれる世の中では、選択肢が多すぎて決断することが難しくなっています。

例えば、家でソファーに座っている人には次のような選択肢があります。

人が抱える選択肢
  • 本を読む
  • ネットサーフィンをする
  • Youtubeを見る
  • AmazonPrimeを見る
  • AbemaTVを見る
  • 料理を作る
  • 買い物に行く
  • 音楽を聴く
  • 仕事の準備をする
  • ゲームをする
  • 異性と過ごす
  • スポーツをする
  • お風呂に入る
  • 食事をする
  • ストレッチをする
  • 寝る

などなど、、、

各項目の中には更に何百、何千通りもの選択肢があります。

私たちは常にこのような状況で生きています。毎回何をするべきかを考えるどれも優劣つけがたく、悩んでいるだけで時間がすぎて何もできなくなってしまいます

このため、便利な本能に頼って、何か一つの情報から簡単に行動を選択することが習慣化されます

そして、世の中にはその本能を巧みに使ったワナがいたるところに張り巡らされています。


詐欺がなぜ絶えないのか

昔から詐欺がありたくさんの人が騙され、そして、政府や警察、身内などたくさんの人が警告をしています。

それでも詐欺はなくなりません。

それは、あまりにも情報が多すぎる社会で、本能に従って行動することに慣れ切った人たちが多いこの世の中では仕方のないことです。

「警察です」や「税務署の者です」と言われたら「偉い人だ。従わなければいけない」という権威に従ってしまう本能が無意識に働いてしまうのも、私たちヒトの特性です。

詐欺とまではいかなくても、あらゆるマーケティング手法の手口にかかって本来は必要ないものを買ってしまったり、高い買い物をしてしまう人たちは後を絶ちません。

それも全て狩猟採集時代に生き残ることができた本能が巧みに利用されているためです。


本能に従ってはいけない

私たちにとって現代社会においても本能は生きるために必須のものです。

世界中には40万以上の科学雑誌があると推定されています。そして、科学技術の発展はより驚異的なスピードで増え、新たな情報や研究結果が増え続けています。

更に過去に存在した情報へのアクセスのしやすさも大きくなっています。

つまり、私たちがアクセスできる情報量は日に日に過去にも未来にもどんどんと増幅し続けているわけです。

このような時代に私たちの思考がパンクせずに行動できるのは本能のおかげです。

本能があるから悩んで思考停止に陥らずに簡単に行動することができます。本能があるからこの資本主義社会が上手に成り立っています。

ですが、もはや本能にだけ従っていてはこの世の中で幸せに生きることはできません

この世の中で成功し幸せに生きていくためには、本能を理解し、それを巧みに避けたり、活用するしかありません


アインシュタインから学ぶ頭脳の使い方

私たちが幸福になるためのヒントは世紀の天才として名高いアインシュタインの生き方から学ぶことができます。

アインシュタインは天才的な頭脳を持ちながら、それをどのように使っていたのでしょうか?

彼は決して、たくさんの娯楽を求めたり、映画や音楽にのめりこんだり、バーに行って飲んだくれたり、たくさんのものを買いあさって手に入れていたわけではありません。

まして、立派な研究室に所属していたわけでも、最先端の実験室を持っていたわけでもありません。

特許庁での仕事の傍ら、空いた時間に席に座ってジッとして思考実験を繰り返していただけです。

通勤時に本を読んだり、近くの公園のベンチに座って考え事をしていただけです。

論文を発表してそれが世界の学者に認められ、ある大学から物理学の先生になって欲しいとオファーがきたとき、「ところであなたの研究室はどこですか?」と質問されました。

それに対して、次のように答えています。

この特許庁の事務室、アパートの小部屋、公演のベンチ、あらゆるところが僕の実験室です

決してありとあらゆるたくさんの情報に触れ、たくさんの経験を積み、あらゆるものを持っていたわけではありません。むしろその逆です。

物理という心から興味を持てるただ一つのことにのめりこみ、余計なものがない中でそれだけを淡々とやっていただけです。

私たちは20万年前からヒトという人種で、本能は何一つ変わっていないように、その頭脳の使い方や幸福を得る方法も変わっていません。

モノと情報に溢れる現代社会でも、与えられた頭脳を適切に使い幸せになるためには、方向性を一つに定め、余計なモノを排除することが正しい解といえそうです。


最高の作品を生み出したミケランジェロ

イタリアのルネサンス期の彫刻家ミケランジェロが作ったダビデ像はその完璧なまでの美しさで有名です。

ローマ教皇がミケランジェロに「あなたはどのようにしてこのような傑作をつくったのですか?」という質問を投げかけたとき、ミケランジェロは次のように答えました。

簡単です、ダビデにふさわしくないものを全て排除したのです

モノや情報の量に変わらず、本当に素晴らしい本質を見つける方法はいつも変わっていません。

余計なモノを一つ一つ排除して理想の形に近づけていく。それこそが成功と幸福への道になります


参考

この記事の内容はアメリカの有名な心理学者 ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の内容の一部抜粋と要約です。

現代のマーケティングで使われている手法が心理学の面から解き明かされ、たくさんの事例を交えてわかりやすい文章で記されています。

この本の内容を細かく知っているかどうかで、現代の市場に隠されているたくさんのワナにハマりカモになるのか、それを避けて利用する側に回れるのかが大きく分かれます。

気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。


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