リスクに関する勘違い
私たちはリスクが全くないことがいいとだ思い込んでいます。当然と言えば当然です。
ですがそこには大きな誤解があります。そもそも私たちはリスクを感じ取る感覚が充分でないということです。
どういうことかというと、私たちの感覚は問題が発生する確率が100%のときと、50%のときでまったく同じだけの不安を抱えてしまうためです。
驚くことにリスクの発生確率が10%、5%と下がり、最終的に1%になっても依然として大きな不安を抱え続けます。
リスクゼロを目指すと失敗する理由
例え1%であってもリスクがあれば不安を感じるため、私たちはその1%のリスクでさえも取り除こうとします。
ですが、その行動は非常に無駄や失敗が多いものになります。
アメリカの食品添加物規制
1958年にアメリカで食品添加物に関する規制が大幅改正されました。中身は「発がん性のある添加物は微量でもリスクが認められる限り、食品に使用してはいけない」というものです。
とても素晴らしい法案に見えますが、このゼロリスクを目指した規制の結果、発がん性はないものの、より危険な添加物が使用されるようになりました。
交通事故をゼロにするとしたら
もし交通事故によるリスクをゼロにしようとしたら方法は2つあります。
- この世から自動車が全てなくなること(乗ってはいけないとすること)
- 乗ってもいいが速度は0kmまでにすること
どちらの方法も確かにリスクはゼロですが、それ以上に多くの利便性や機会を失います。
リスクゼロは不可能
そもそもリスクをゼロにすることは不可能に近い行為です。
ヒ素
有名な毒物に「ヒ素」があります。昔、カレーライスに意図的にヒ素を混入し4人が死亡した事件がありました。
ヒ素は人にとってとても危険な物質です。だからといってゼロにすることは不可能に近いです。
なぜなら、お米やひじきなど日本人が親しんでいる食べ物に自然に入っているからです。
もし、全てのヒ素を取り除かなければいけないとしたら食べれるものの数は大幅に制限されたり、食料品の価格が吊り上がるという事態に発展します。
ヒ素に限らず亜鉛など、多量に摂りすぎると毒になるが、少量であれば問題がない物質は世の中に多数存在しています。
預金
稼いで貯めたお金を失うリスクをゼロにするにはどこに預ければいいか?を考えてみます。
銀行に預けた場合、銀行は倒産する可能性があります。日本長期信用銀行など既に経営破綻した例があります。
では株式にするのがいいのでしょうか?株式は価格が下がるリスクがあります。山一證券のように証券会社が潰れる事例もあります。
比較的安定した金融商品である国債ですが、アルゼンチンではハイパーインフレが発生し、お金がただの印刷した紙屑と化しました。
ビットコインなどの仮想通貨もありますが、こちらも価格の乱高下が激しく大損するリスクがあります。
外貨も為替の影響を受けるため同じです。
ではおとなしく家でタンス預金をしているのがいいのでしょうか?その場合泥棒に入られたり、家が全焼すれば全てなくなります。
稼いだお金が無くなるリスクをゼロにしようとすることは不可能なため、たった1%のリスクで不安を抱いている人は、永遠にあれこれと心配し続けることになります。
賢い選択
事業においてある災害の発生確率を下げる施策が次の2つあったとします。あなたはどちらを選択するでしょうか?
対策A:災害の発生率を16%から11%に下げる。
対策B:災害の発生率を3%から0%に下げる。
対策Bの0%という数値に引かれますが、賢い選択は対策Aです。
対策Bの効果は3%(3-0)に対して、対策Aの効果は5%(16-11)です。このため優先して実行すべき選択は対策Aとなります。
パートナー選びも許容する
日本は晩婚化や未婚化が進んでいます。その原因のいくつかに「完璧を求めすぎること」があります。
昔と違って家柄や出身地に縛られることなく、多くの人たちがネットやアプリを介してつながれる世の中です。
あまりに多くの選択肢があり「自分にぴったりのパートナー」を選ぶことは不可能です。
心理学の有名な実験で、スーパーでジャムを3種類だけ置いた場合はよく売れたが、24種類にしたとたん売れなくなったというものがあります。
選ぶこと自体が大変なのに比べ、どれも似ている部分や長短があるため「絶対にこれ」という決定ができないためです。
何か選べばかならず求めていない部分(リスク)があります。他人の芝が青く見えるというように、自分が選んだ選択ではない方がいいと思う心理も働きます。
私たちの人の性質から考えて、ゼロリスクのパートナーを選ぶのは不可能です。
そのことに気付かずにゼロリスクを求め続ける人は一生結婚できない人生を歩むことになります。
まとめ
この世には、貯金、健康、パートナー選び、友情、会社、国など何一つとして確実なものはありません。
そう考えて生きていく方がより地に足がついた暮らしを送ることができます。
実際、確実なことは「人は死ぬ」ということと「ヒトの生態」です。私たちが生きている間、食事し体を温めるという基本的な性質は変わりません。
私たちが感じる幸せには2種類あり、何かを得ることで感じる幸福の持続力は低く、自ら生み出すことで感じられる幸福は何十年と持続します。
宝くじが当たって億万長者になった人が生涯幸福なわけではありません。半身不随になり足が全く動かなくなった人が永遠に不幸なわけではありません。
幸せな人は何が起こっても幸せですし、不幸な人は何が起こっても不幸です。
私たちは自分の中で幸せを生み出せるという特質を上手く利用して生きるのが、最も賢い生き方といえそうです。
参考
この記事のスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。
この記事の内容でハッとした部分が一つでもあった方は是非手に取ってご覧になられることをお勧めします。
あなたの人生をより賢く豊かにしてくれることは間違いありません。