ウェルテル効果とは何か?意味や由来を実例で解説|自殺のニュースが流れると、自殺する人が増える理由(死者を減らす効果的な方法)

思考法
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ウェルテル効果とは何か?

ウェルテル効果とは自殺に関するニュースが流れると、自殺者が増える現象のことです。

健常者にとっては驚くべきことのように聞こえますが、過去の歴史から様々な国でその事実が確認されています。

日本でも1948年に小説家の太宰治が入水自殺をしたときに、多くの人が後を追って入水自殺をしました。

1970年に小説家の三島由紀夫が、憲法改正のため自衛隊のクーデターを呼びかけた後に割腹自殺した後、多くの人が同じように割腹自殺をしました。


ウェルテルとは?

ウェルテル効果のウェルテルとは、1800年頃に活躍したドイツの文豪ゲーテ(ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ)が25歳の時に出版した「若きウェルテルの悩み」という小説からきています。

ゲーテはこの小説の大ヒットによりヨーロッパ中で文豪として知られるようになりました。

これは青年のウェルテルという主人公が、美しいシャルロッテに恋をする物語です。

ウェルテルがシャルロッテに魅かれたように、シャルロッテもウェルテルに魅かれていきます。しかし、シャルロッテにはアルベルトという婚約者がおり、二人が結ばれることはありませんでした。

ウェルテルはシャルロッテと仲がよかったことでアルベルトとも親しくなります。

しかし、シャルロッテが好きだという気持ちはどうしようもできず、絶望したウェルテルはアルベルトに「旅行に出かけるから銃を貸して欲しい」と頼み、その銃を借りて自殺をするという話です。



なおヨーロッパで「若きウェルテルの悩み」が流行した後、ウェルテルが自殺したときと同じ褐色の長靴と黄色のベスト、青色のジャケットという格好でピストル自殺を図った人が急増しました。


同じ死に方を選ぶとは限らない

若きウェルテルの悩みを読んだ人たちは、ウェルテルと同じ格好をしてピストル自殺をしました。太宰治が入水自殺をした後は、同じように入水自殺をする人が増えました。三島由紀夫が割腹自殺をした後は割腹自殺をする人が増えました。

ですが、このように常に同じ死に方を選択するとは限りません。

特に、最近では自殺のニュースが報じられると自動車や飛行機事故による死亡事故が増加することがわかっています。

ニュース報道と自殺の関係性

アメリカの社会学者 デイビッド・フィリップスはニュースと自殺者の関係を調べるため、21年間(1947~1968)の自殺の発生状況を調査しました。

その結果、新聞の一面に自殺の記事が出た2か月後には自殺者の数が平均よりも約60人増加していることがわかりました。

また、そのニュースが報じられる範囲が広くなればなるほど、より多くの人が自殺していることがわかりました。

また、後を追って自殺する人たちは通常よりも自殺するまでの時間が短く、約1/4の時間で命を絶っていることがわかりました。

ニュースに触発されて「死ぬ」という目的を果たすために、より安易で死にやすい方法を選びやすい傾向があるということです。

point

自殺のニュースが流れた後は自殺する人が増え、しかも、多くの人が深く考えずあっさりと死を選ぶ。


ニュース後の自殺の特徴

ニュース後の自殺には特徴があります。それは驚くまでの類似性です。

人数の類似

1つ目の類似性は、一人の人が自殺したニュースが報道されたときは、後を追う人も一人で死に、複数の人を巻き込んで自殺したニュースが流れると複数の人を巻き込んだ自殺が増えるということです。

自爆テロや学校における銃乱射のような人を巻き込んだ自殺が報じられると、その後を追うように他の地域でも似たような事件が発生します。


年齢の類似

もう一つはニュースで自殺が報道されたときに、亡くなった人の年齢と後を追った人の年齢が近しいということです。

若い人の自殺を報じられた後は、若い人の自殺率が高くなります。高齢者の自殺が報じられた後は、高齢者の自殺率が高まります。


なぜこのような現象が起きるのか?

ウェルテル効果のように、自殺のニュースが報じられるとなぜ自殺者が増えるのかについては、心理学の「社会的証明の原理」で説明がつきます。

社会的証明の原理とは、私たちヒトの「他の人たちが何を考えているかを基準にして物事を判断する」という性質のことです。

簡単な例では、あなたが街に買い物に出かけたときに、多くの人が空を見上げているのが目に入ったとします。すると、あなたは何も考えず自動的に周りの人たちと同じように空を見上げます。これも社会的原理の証明の一つです。

社会的証明の原理は特に次の2つの条件下において最も強い力を発揮します。

社会的証明の原理が適用されやすい条件
  1. 答えややるべきことが不確かである。
  2. 行動をしている人たちが類似している

大きな悩みを抱えている人にとって「生きるべきか」「死ぬべきか」はどちらを選択すればいいのかが不確かです。

そのような状況で、自分と同じような年齢で同じような境遇の人の自殺のニュースを目にすると、「自殺することが正しい」という感情が自然に沸き起こります。

こうして、自殺のニュースが報じられると、自殺者が増えるという結果になります。


自殺者を減らす効果的な方法

社会的証明の原理は人を死に追いやるほど強力な力を持っています。

ですが、それは良い悪いは関係なく、あらゆるものに平等に作用するという性質があります。

この性質を上手に利用すれば、自殺者を減らし「生きたい」と考える人を増やすことが簡単にできます。

その方法は、同じぐらい苦境にいるけど、前を向いて生きている人の記事を報道することです。あるいは、過去に同じぐらいの苦境にいて、そをれを脱した人の記事でも効果があります。

「自殺」や「事件」といったただあった出来事をみんなに知らしめるために報道することは、他の死を踏みとどまっている人たちを殺してしまう力を持っています。

そうではなく、いろんなマスメディアが「希望」を報じるようになれば、生きたいと増える人世の中になっていきます。


みさなん、生きていることは失恋や大けが、事故や大失敗など色々なことがあります。かくいう私もそれに見舞われて何度も絶望してきました。

余りのショックでうつ病になったり記憶喪失になったこともあります。

ですが、それでも踏ん張って生きていれば希望は必ず見つかります。諦めない限り新しい異性は必ず見つかるものです。新たな幸せや希望、スキルも前に進む限りどんどんと手に入るものです。

絶望したという経験は、そうでない状態がいかに当たり前でなく幸せな事かを教えてくれることでもあります。

生きること、年を重ねることは決して悪いことではありません。むしろ希望に満ち溢れているものです。

より多くの人が希望を持って前向きに生きられる世の中になっていくことを心より願っています。


参考

この記事の内容はアメリカの有名な心理学者 ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の内容の一部抜粋と要約です。

現代のマーケティングで使われている手法が心理学の面から解き明かされ、たくさんの事例を交えてわかりやすい文章で記されています。

この本の内容を細かく知っているかどうかで、現代の市場に隠されているたくさんのワナにハマりカモになるのか、それを避けて利用する側に回れるのかが大きく分かれます。

気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。


Wikipedia ウェルテル効果

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