プライミング効果とは何か?人の行動は直前の情報に無意識に左右される(朱に交われば赤くなる)

思考法
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プライミング効果とは何か?

心理学用語のプライミング効果とは、最初に脳に与えられた刺激によりその後の行動が無意識に変化することです。

プライミング(priming)とは起爆剤や呼び水といった意味で、そこを起点にして次の行動を起こるようなものに使います。


プライミングの例

待機時間の変化

1996年にジョン・バー(John A Bargh)らはプライミングの効果を検証するために次のような実験を行いました。

ニューヨーク大学の大学生を被験者として単語の並べ替えを行ってもらいます。被験者は2つのグループに分かれ、一方は完成した言葉が「名誉」「思いやり」「礼儀正しい」「気配りがいい」といったポジティブな単語ができるようにします。

もう一方は「攻撃的」「無礼」「うっとおしい」「でしゃばり」といったネガティブな単語ができるようにします。

ポイントはこの次に被験者にとってもらう行動です。

被験者たちには次の実験のために別の部屋に移動してもらいます。するとそこでは実験を行う人に企画者が内容を説明しています。

実験を行う人はわざと物わかりが悪い振りをして何度も何度も聞き返します。ここで、被験者たちがその話を遮って「何をすればいいのか」を自分から聞き出すまでにかかる時間を調べることが本当の目的です。

なんと、並べ替えでネガティブな単語を作った人たちは約5.5分しか待たなかったのに対して、ポジティブな言葉を作った人たちは9.3分待ちました

事前に何の気なしに触れた単語によって、その後の行動が約2倍の時間変わったということです。


歩く速度の変化

第2の実験でも同じように単語の並べ替えを行ってもらいました。グループAには高齢者に関連する言葉「フロリダ(高齢者に人気の移住先)」「ビンゴ(高齢者が好きなゲーム)」「物忘れ」「孤独」を作ってもらいました。

一方グループBには年齢や年代に関連のない言葉を並べ替えてもらいました。

そして被験者たちに「これで実験が終了です」と告げました。

もちろん実験はこれで終わりではありません。被験者たちが最初の部屋に戻るまで約10mを歩く速度を調べました。

すると高齢者に関する言葉を作った人たちの歩行速度は、そうでない人たちに比べて明らかに遅くなりました


環境によるプライミング

プライミング効果は言語情報だけでなく、環境によってでも人の行動を変えることができます。

例えば、クッキーを試食してもらう時に消臭剤の匂いがする部屋だと、無臭の部屋よりも試食した後に片付けをする割合が3倍になったという実験結果があります。

レストラン

東京の港区の高層ビルの36階にある豪華でオシャレなレストランで食事をするのと、地方のサビれた掘っ立て小屋で食事をするときは例え同じシェフが同じ料理を作って提供したとしても、料理に対する印象が大きく変わります。

前者は「オシャレ」「高級」といったイメージでポジティブにプライミングされており、後者は「サビれた」「ボロい」というイメージでネガティブにプライミングされているためです。


世界的なバイオリニスト

世界的なバイオリニストのコンサートが日本武道館で行われるとします。大々的にCMが流れて、パンフレットが配られ「世界的バイオリニスト来日」という言葉をあちこちで聞き、実際の会場もキレイで豪華で大きくて最新鋭です。

演奏後は会場から割れんばかりの拍手がバイオリニストに送られます。多くの人が「この演奏&バイオリニストは凄い。本当に世界一だ。聞きに来てよかった」と感想を述べるでしょう。

一方、同じバイオリニストが朝の新橋駅の汽車の前で演奏していたとします。事前の告知は何もありません。

このとき、立ち止まってこの演奏を聞いた人たちは、武道館で演奏を聞いた人たちと全く同じ感想を抱くでしょうか?

その人を知らない人は「なかなか上手な人だなー」程度で終わるはずです。

point

全く同じモノやサービスでも環境によって最終的な評価が大きく変わる。


家庭や社内の雰囲気が重要な理由

人は環境の影響を無意識に受けてしまう生き物であるため、家庭や会社の雰囲気がそこにいる人たちの行動に影響を及ぼします。

汚い言葉や、イライラが飛び交う環境では、そこにいる人たちも同じく汚い言葉をつかったり、行動が荒々しくなります。

一方、穏やかで楽しく思いやる環境では、そこにいる人たちも穏やかで楽しく思いやりのある行動をとるようになります。

「朱に交われば赤くなる」という言葉がありますが、それが良い悪いではなく、ヒトとはそういう生き物ということです。

親や社長、上司など環境を作る立場の人はどういった環境を作るかをしっかりと考える必要があります。

一方、従業員や子供はその環境が自分にとって安全かを見極め、ネガティブなプライミングがされるような環境であれば勇気を出して他に移ることが、今後の人生を充実させるためにとても重要です。


参考

この記事の内容はアメリカの著名な行動経済学者 ダン・アリエリーの「予想通りに不合理」の内容の一部抜粋と要約です。

人が犯しがちな判断ミスを行動経済学という観点から紐解いたものです。ユーモアを交えた文体でとても読みやすく新たな発見がたくさん詰め込まれています。

この本を読んだことがあるかどうかで今後の人生の行動が変わってしまうほどのパワーを持ちます。

気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。


Automaticity of Social Behavior: Direct Effects of Trait Construct
and Stereotype Activation on Action | John A. Bargh, Mark Chen, and Lara Burrows at New York Universit

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