【権威のワナ】いかに私たちが考えていないか|医療現場における危険性(人は肩書や外見しか見ていない)

思考法
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私たちヒトには権力者からの命令に従うという本能がプログラムされています。

軍隊では上官の命令が絶対ですし、会社でも社員は課長からの指示で動き、課長は部長からの指示で動き、部長は副社長からの指示で動き、副社長は社長からの指示で動きます。

私たちの多くはそういった権威ある人たちの指示に、自分の意志を持って反応していると考えていますが、現実は違います。

私たちヒトのほとんどが、条件反射的に権威ある人の命令に従っています

ここでは、病院など人の命が関わる医療現場において、人が命令をどのように受け取り、どう行動しているかについて解説しています。


医者からの指示を疑わない

アメリカの著名な薬学の教授 マイケル・コーエンは次のように述べています。

いかなる場合にも、患者や看護師、薬剤師、担当医以外の医師たちは、処方箋に疑問を持つことはない。

実際、ある意志が感染症により痛みを訴えている患者に対して「右耳、耳の薬をさす」ように処方箋に書きました。

そのときに右耳(Right ear)という表記を省略して「R ear」と書きました。

それを処方箋を受け取った看護師は「R ear」を後ろと言う意味の「Rear(リア)」と勘違いして、患者の肛門から耳用の薬をしました。

肛門から薬を点滴される患者は、看護師に比べより知識がないので「医者が言ったのであれば」と言って、当然のようにその指示に従います。

point

人は権威ある人の言葉を疑わない。


中身ではなく表面的な権威性に従う

人が権威に従ってしまうという性質において一つ重要なことがあります。それは「人はその人の中身ではなく表面的な権威性に反応する」ということです。

表面的というのは見た目ですらありません。電話など、姿が見えない状態で「私は〇〇です」とその人が言った自己申告に従ってしまうことすらあることが明らかになっています。

ある研究では医療ミスの原因を調べるために次のような実験を行いました。

これまで指示出していた医師とは別のダミーの医師を用意し、看護師に指示を出すために、普段は用いない電話を使って指示を出しました。

電話では「私は医師です」と告げ、認可されていない薬の最大使用限度を大幅に越えた量を患者に投与する指示を出しました

電話を受けた看護師は、電話口の向こうにいる医師となのる男性の声を聞いたこともなければ、一緒に働いたこともありません。

ですが、実験の結果95%の看護師が「医師と名乗る男」に言われた通りに、薬を取りに行き、患者の部屋に行き薬を投与しようとしました。(※患者の部屋の手前で研究者が呼び止め、実験の意図を説明しています)

看護師はもちろん専門的な知識がある人たちです。ですが、医師という自分より権威のある人たちに指示されると、自分の知識よりもより権威のある人の命令を優先することがわかります。

point
  • 人は全く知らない人でも、その人が権威的な人だと信じれば疑いを持たずにその命令を実行する。
  • 自分の知識よりも、権威者の言葉を信じる。


本人たちは気づいていない

権威の力の驚くべきところは、従っている本人たちはそのことに気付いていないといことです。

「医師」という肩書によって看護師たちの行動は明らかに変化します。しかし、実際の現場ではなく、看護師たちに「医師」という肩書を持った人から指示を受けたときにどのように行動するか?という質問を行ったとき、看護師たちは「自分は薬を投与しない」と答えました。

実際「肩書の力」を理解して「言われた通りに薬を投与してしまうだろう」と答えた人はたったの6%でした。(33人中2人のみ)

point

頭では「権威には従わない」と思っているが、実際に権威者に命令されると従ってしまう。


服装の力

中身ではなく表面的な権威を表すのは「医師」といった肩書だけではありません。服装も強い力を発揮します。

ある病院では権威に応じて白衣の裾の長さを変えています。

医学部の学生であれば、最も短い白衣を着て、研修医はそれより少し長め、常勤の医師は最も長い白衣を着るようになっています。

看護師たちは白衣の裾が長い人から言われた指示に対しては疑問を抱いたり、文句を言うことなく従います。

一方、白衣の裾が短い人の指示に対しては、ときに無礼なほどに異議を唱えることすらあります。

point

権威の強さがわかる洋服にも、人を従える力がある。


権威者が間違っている可能性がある

「医師」と「看護師」といった上下関係が明確なところでは、人は無意識のうちに命令に従って動きます。

更に「患者」ともなれば、その権威は「医師」や「看護師」よりも下になります。

その結果、ほとんどの人たちが「お医者さんが言うんだから」「看護師さんが言うんだから」といって、その処置を無条件で受け入れます。

ですが、お医者さんが人である以上、とうぜん判断を間違えることもあります。看護師さんも同様です。

だからこそ、もし少しでも疑問を持ったことがあれば「これは正しいんですか?」と聞いてみることが重要です。

それをするかどうかで自分自身の命に関わることすらあります。

相手が明らかに故意にあなたに危害をくわえようとしているのでなければ、「これは本当に正しいんですか?」と聞けば、命令に従っていた相手の頭の中の自動モードから自分の思考へと切り替わります。

そして、確認をしてくれるでしょう。

確認の結果、それが正しければ問題ありませんし、間違っていたと判明すれば幸いです。人生を賢く生きるには常に自己責任が伴うものです。

point

権威者や専門家がいつも正しいとは限らない。


参考

この記事の内容はアメリカの有名な心理学者 ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の内容の一部抜粋と要約です。

現代のマーケティングで使われている手法が心理学の面から解き明かされ、たくさんの事例を交えてわかりやすい文章で記されています。

この本の内容を細かく知っているかどうかで、現代の市場に隠されているたくさんのワナにハマりカモになるのか、それを避けて利用する側に回れるのかが大きく分かれます。

気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。


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