デフォルト効果とは何か?人は保守的な生き物。初期設定の重要性

人間心理
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デフォルト効果とは何か?

デフォルト効果とは、人が最初に選択されている設定をそのまま受け入れやすい心理傾向のことです。

例えば、スマホの初期設定の変更や、メーリングリストの解除など、やろうと思えばできるし、やった方がいいだろうと思っても、それをやるのが面倒で元の状態のままズルズルと使い続ける心理のことを指します。


デフォルト効果で人を操れる

人が何か行動をするためにはエネルギーや意志力が必要です。このため、デフォルト効果は多くの人で効果を発揮します。そして、そのパワーはとても強力です。

政府や企業はデフォルト効果を利用して上手に人を操作しています。

臓器提供

心理学者のエリック・ジョンソンとダン・ゴールドスタインは各国の臓器移植への同意率についてヨーロッパの各国を調べました。

その結果、ある国では12%程度、別の国では99%という大きな違いがあることを発見しました。その差は非常に明確で、デフォルトとして臓器移植に同意してオプションで外すか、その逆かでした。

国名デフォルト臓器移植の提供率
ドイツ臓器移植をしない12%
オーストリア臓器移植をする99%

臓器移植をするかどうかが12%か99%は大きな違いですが、そのは背景にあるのは国民の思いやりや宗教観、社会的義務感の強さではないということです。

むしろ、ほとんどの国民が何も考えていない(どちらでもいい)か、わざわざ申し出をしてまで変更するほどの問題ではないと捉えているということです。

point

デフォルト設定により、人々の意思決定を簡単に操作できる。


自動車保険

アメリカで行われた調査でもデフォルト設定がいかに強力かが明らかになっています。

ニュージャージー州とペンシルベニア州では、2つの自動車保険「通常の保険」と「権利の一部が限定された安い保険」のデフォルト設定を次のように設定しました。

保険
ニュージャージー権利の一部が限定された安い保険
ペンシルベニア通常の保険(もう一方より高い)

この結果、それぞれの州でデフォルトとして設定した保険を選択する人が圧倒的多数となりました。


どれが最適かわからないことに効果を発揮する

臓器移植も保険のどちらもそうですが、どっちが正しいのか正解はありません。

そもそも、私たちは臓器移植をする状況や、保険を適用しなければいけない状況になるかすらわかりません。

そのような決断を下すためには、ありとあらゆるシチュエーションを想定し、自分の人生観を振り返り、たくさんの比較をしてどちらにするかの判断を下さなければいけません。

その意思決定は非常にエネルギーと時間を消耗する大変な作業です。

選択肢が自分にとって不確実性を持つ場合、人は誰かのお勧めに従うものです。

そしてこの世の中の選択肢はそういった不確実なものがほとんどです。このため、デフォルト設定が強力なパワーを発揮します。

point

考えるのが手間で処理がめんどうな(だと思い込んでいること)ことほど、デフォルト設定は効果を発揮する。


現状維持バイアスとの関連性

「デフォルト効果」と関連性の高い心理用語に「現状維持バイアス」があります。

現状維持バイアスとは、新しいことや変化を拒絶して現状にこだわろうとする心理のことです。

上から「わが社でこれを導入することとなった」と言われたときに、「嫌だな」「めんどくさい」と思うのが現状維持バイアスです。

何か言われたときにとりあえず反対する人は現状維持バイアスが強い人です。

現状維持バイアスは無意識下でも頻繁に発生します

例えば、社外の人がやってきて「なぜこれをやっているんですか?」と聞かれたときに「なぜって言われても、、昔からの慣習なので」と答えるような場合も現状維持バイアスが働いています。

そもそも現状の状態がベストなのか、おかしい点はないのかを考えようとしない心理も現状維持バイアスによるものです。


原因は損失回避

「デフォルト効果」も「現状維持バイアス」のどちらも原因は私たちのもつ「損失回避」という心理で説明がつきます。

「損失回避」とは、私たちヒトは「何かを得る喜びよりも、何かを失う損失を強く感じるため、それを回避しようとする心理」のことです。

何かを得るときに感じる喜びに対して、失う痛みの強さは2倍にもなるといわれています。

「デフォルト効果」も「現状維持バイアス」も、元々あるものを手放さなければいけないため、心理的障壁が大きくなるために発生します。


原始時代の本能に騙されてはいけない

何かを得るときに感じる喜びに対して、失う痛みの強さは2倍に感じる能力は私たちにとってとても重要な本能の一つです。

私たちにとって、たくさんの食糧を得るよりも、手足を失うことの方が生きるときに致命的です。

「損失回避」はまさにこの致命的な状況を避けるために備えられた本能です。

しかし、現代では安全な環境が著しく発展し、突如獣に襲われたり、怪我に見舞われるという状況がほとんど発生しなくなってきました。

どんなにリスクをとって行動しても命を奪われることはほとんどありません

逆に、リスクをとって行動した人が、新しい経験を積み能力を経てどんどんと成功に近づいていく時代です

賢い人たちは私たちの原始的な本能である「損失回避」「現状維持バイアス」「デフォルト効果」を上手に利用してきます。

だからこそ、その心理的障壁を突破することこそが、現代で幸せと成功を手に入れるために必要不可欠なスキルになります。

point

原始的な本能に服従せず、考えて生きよう。


参考

この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。

本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。

とても分かりやすく、成功したい、幸福になりたい思っている人の必読書です。

この記事に少しでも興味を持たれた方は是非実際の書籍を手に取ってみることをお勧めします。



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