地域特化型ビジネスの4つの成功事例とその理由|カギはスモールスタート・自力・返済可能

経済
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過疎化や少子化が叫ばれている昨今、地元や田舎を活性化したい!地方創生したい!と考えている人は多くいます。

ですが、一体どんなビジネスから始めてみればいいのかわからない、、という人がほとんどです。

ここでは、地域特化型で成功している事例を4つ紹介しています。

4つの成功事例
  1. 東京八百屋の会
  2. HOTEL CYCLE
  3. オーガルアリーナ
  4. オーガルプラザ


東京八百屋の会

事業を立ち上げるときの基本はスモールスタートです。そして、実態に合わせて改善を続け、収益のお増加に沿って規模を拡大していくことが大切です。

基本を実行しビジネスを軌道に乗せた事例として、東京都の小さな3軒の八百屋さんが集まった「東京八百屋の会」があります。

補助金ゼロで自分たちの営業力をベースに立ち上げた、特産品の開発&販売事業です。

この東京八百屋の会が成功しているポイントは次の3つです。

成功のポイント
  1. 補助金を入れていない。
  2. 消費者ありきでの商品開発。
  3. 数量限定販売。


補助金を入れていない

地方自治体や国は地方創生のために補助金などの多額の予算を確保しています。補助金を受け取れさえすれば容易にスタートがきれて、設備を充実させることができるので、喉から手が出るほど補助金が欲しいと思う人がほとんどです。

ですが、補助金を導入すると、出だしから身の丈に合った収支バランスの確保ができなくなります

また、最初に全体計画を提出しなければいけなかったり、報告義務が生じたりと、小さく初めて改善を繰り返すことが難しくなります

そもそもその事業が成功するかはやってみないと誰にもわからないことです。そしてどんなに成功すると見込が高いアイディアでも改善を繰り返していかなければ失敗します。

逆に失敗する可能性が高いと思われたアイディアも改善次第では成功することもあります。

事業を始める上で、補助金があるからやるという姿勢ではなく、補助金がなくてもやるという姿勢が成功につながった一つの理由でもあります。


消費者ありきでの商品開発

事業を存続させるためには黒字化して収益を上げることが必須要件です。そのためには、消費者が買いたいと思う商品を作る必要があります。

ですが、地方活性化を目的とした事業の場合、消費者に対して目が向いていないことがほとんどです。

商品開発するときも次のような目的や思い込みが先行してしまいます。

  • 地域にあり余っているから有効活用したい。
  • 自分たちの地域のものが一番いい。
  • 自分たちの利益を十分に確保する。

結果として、誰も求めていないものを高値で商品化することになります。このように売りたい側だけの都合を取り入れたものが売れるはずがありません。


東京八百屋の会はそもそもの商品開発のアプローチが、売りたい側の都合ではなく、消費者目線でスタートしています

まずは、試作品となる試食品を複数作ってみます。そして、各八百屋のテンポで30名ずつ、試食してくれるモニターを募集して試食してもらいます。

実際の消費者の声から絞り込みを行い、商品を決めるというプロセスです。


数量限定販売

実際の消費者の支持を得た商品を選定した次に重要なことは「販売する数を決める」ことです。

あくまでスモールスタートが基本なので、いきなり大量生産することはしません。

身の丈に合わない生産は過剰在庫を生み出し、他の商品を追いやりスペースを占領したり、余計に販売しなければいけないという労力が必要になります

そもそも、スタートしてみない限り本当にどのくらいの需要があるかはわからないものです。

このため、最初に販売数を決めて生産地に発注するという方法で、過剰在庫を抱えることがなくよりリスクが少なくう事業を回すことができます

そして、売れ行きに応じて追加で発注するという方法をとります。

point
  • 新規事業はスモールスタートが基本。
  • 補助金を入れない、消費者ありきでの商品開発、数量限定販売の3つが無理なく継続できる条件。
  • 販売実績に基づいて、徐々に生産量を増やしていく。



HOTEL CYCLE

2つ目の成功事例は広島県尾道市のしまなみ海道の玄関口にあるHOTEL CYCLEです。

しまなみ海道は広島県と愛媛県つなぐ全長約60㎞の島と島をつなぐ道です。他では見られない絶景が続きサイクリストの聖地と呼ばれ、毎年世界中から多くのサイクリストが集まります。

しまなみ海道は1999年開通の比較的新しい道です。また、サイクリストたちが持ち寄る自転車は数十万円~数百万円と高価なモノがほとんどです。

この新しい変化と集まる人たちのニーズに特化して、室内に自転車を持ち込めるようにしたのがHOTEL CYCLEです。

1泊約2万円~とかなり高額ですが、オシャレな内装やサイクリストに特化したサービスが評判を呼び事業として成功しています

しまなみ海道やサイクリングの聖地は他には少ないため、あくまでこの地域でのみ有効なビジネスモデルです。


人口減少に合ったビジネスモデル

日本は世界の中でどこも経験したことがないほどの人口減少を控えている国の一つです。そのような状況の中で、これまでの人口が増え続け、チェーン店てきに同じものを量産し、10,000人の人に1,000円でサービスを展開するような、薄利多売のビジネスもでるは成り立たなくなっています

それよりも、特定の顧客ニーズに特化して、1,000人に10,000円でサービスを展開する方が重要になっています。

HOTEL CYCLEはまさに現在の日本に合ったビジネスモデルです。


オーガルアリーナ

特定の顧客ニーズに特化した事業の成功例の一つに岩手県紫波町(しわちょう)のオーガルアリーナがあります。

オーガルアリーナはバレーボール練習専用の体育館に特化し、民間資金だけで作られたものです。

全国や各市町村ごとに体育館が存在します。ですが体育館は税金を使ってバレーボールだけでなく、バスケットボール、バドミントンなどあらゆる競技に使える汎用的なものを全国一律で作ったものばかりです。

多目的に使える反面、どの競技にも最適ではないというデメリットがあります。

一つの目的に特化

オーガルアリーナはこれとは逆に、バレーボールの国際基準に合わせたコート設計とし、更に、試合施設としてではなく練習専用に特化するために客席を設けず、サーブフォームをチェックするカメラを設置しています。

非常にニッチなニーズに特化させた結果、非常に不利な立地にも関わらず、全国各地の中学生からプロまでの練習需要を取り込みフル稼働しています。

また、合宿施設として併設したホテルの稼働率も高めています。


人脈と営業力

バレーボール専用で客席もなく練習に特化している体育館が需要があるかもという見込だけで作られたわけではありません。

オーガルアリーナの社長を務める地元出身の岡崎正信さんが、バレーボールの指導者を務め、全日本男子チームをはじめとする日本を代表するバレーボーラーとも親交が深く、多方面に営業ができる人であることも成功している理由の一つです。

なお「オーガル」とは岩手弁で「成長する」という意味がある「おがる」と、フランス語で駅を意味する「Gare(ガール)」を組み合わせた「人が集まる成長拠点」意味です。

point
  • ニッチな目的のみに特化。
  • 人脈と営業力がある。


オーガルプラザ

オーガルアリーナと同じく岩手県紫波町に建設されたオーガルプラザも地方創生の成功事例の一つです。

補助金を使わない民間開発

成功した大きな要因の1つは、行政が主体となり税金をかけて開発するのではなく、民間に任せて開発したことです。

実情は行政の財政基盤が貧弱で何もできないので、民間開発に切り替え、金融機関から資金長太いつして公共施設と民間施設の両方の開発を進めるという方針です。

当初は「民間に任せるのは行政の仕事放棄だ」「そんなやり方は聞いたことがない」「そんな上手い話は無理だ」という反対論がたくさんあがりました。

ですが、紫波町の行政・民間チームはプロジェクトと向き合い、当初決まっていた計画を、民間が投資可能な内容に合わせていきました

民間は補助金や交付金に頼らないという覚悟を決め、テナント運営で黒字化を目指す計画を立て、金融機関と調整を続けて資金調達を可能にしました

金融機関はもちろん融資金を回収できる見込みがある事業にしか投資しません。


開発前のテナント募集

補助金を使った大規模な商業施設の開発で失敗する例は、入居してくれるテナントの目途を立てずに、巨大な複合施設ができれば自然と人やテナントが集まるという考え方です。

オーガルプラザの場合は銀行からの融資を得るために、あらかじめ入居するテナントを探し、すべてのテナントが決まってから開発に移っています

実にその間1年6か月も使っています。

ですが、この1年6か月があったからこそ、建設後も正常に運営することができています


計画の下方修正

行政の補助金主体のプロジェクトは「人が集まり、雇用が生まれ、地域が活性化する」という夢のようなストーリーを掲げ、使える限りの補助金を使って超豪華な大型施設を建設するのが一般的です。

ですが、オーガルプラザは現実に合わせて計画の下方修正を行っています。

計画当初の建物は鉄筋コンクリートの3階建てを予定していました。ですが、この施設は過大すぎると判断し、より安価に建設できる木造の2階建てに変更しました。

結果として、行政が経てる通常の建設プランよりも、数億円という単位で建設費を抑えることを可能にしました


行政が民間に合わせた

計画を推進する上でとても重要だったことは行政が民間に合わせたことです。

通常、行政は一度決定した計画を民間の計画に合わせて覆すことはありません。ですが、行政が民間の計画に合うように計画を修正するという、これまでの常識を覆す行動をとってきたおかげで、このプロジェクトは実現に至りました。


行政の開発手法を使うと失敗する

オーガルプラザの成功例を受けて、公共施設を開発する際に、民間と協力しながら開発を行うところが出てきました。ですが、そのほとんどが失敗しています。

失敗の原因は行政の開発手法を適用したことです。

行政の開発手法は、まず補助金や交付金などの予算ありきです。そして、必要や不要という判断は抜きにして、割り当てられた予算額を最大限使う計画が立てられます

策定される計画は、融資先への返済計画に沿って立てるのではなく、コンサルや学識者の見解を元によりいいモノを求めて過剰な設備投資を行います

予算は年度毎に割り当てられるのが普通なので、年度末になると計画が固まっていないにも関わらず強制的に走り出さなければいけない状況になります。

結果として、足元が固まっていない段階での見切り発車と過剰設備により、赤字を生み続ける設備が建設されます


民間の開発方法

一方で民間の開発方法は、補助金や交付金を当てにしないため、銀行などから融資を得ることで資金にめどをつけます。

計画の内容は現実的でかつ返済の見込みがないと、融資を得ることはできません

ただ夢のようなストーリーに沿って動き出すのではなく、最初にその実現性を厳しくチェックしてから走り出すことで、現実的な問題と向き合い、計画をより実現可能なものへと近づけていくことができます

民間と行政の開発方法の違い

最後に民間と行政の開発方法の違いを、「予算」「スケジュール」「仕様」の3つの観点でまとめると次のようになります。

項目民間行政
予算返済可能な金額使える予算の最大額
スケジュール計画が固まるまで融資が下りない年度に合わせる
仕様返済可能な範囲使える予算で最大の設備


まとめ

これまでにたくさんの地方自治体や国などの行政が新規事業を起こしてきてくれたおかげで、その結果が上手くいったかどうかのデータが出そろってきています。

その中で成功する確率が高い事業の条件をまとめると次のようになります。

成功する確率が高い事業
  • スモールスタート。
  • 消費者目線での開発。
  • ニッチなニーズに絞る。
  • 補助金や交付金を使わない。
  • 金融機関などから資金を調達する。
  • シビアにチェックされた返済計画ある。
  • 過剰な設備を伴う計画は下方修正する。
  • 売り先が決まってから動き出す。


なお失敗する確率が高いのはこれらの逆を行った場合になります。

失敗する確率が高い事業
  • 最初から大規模に始める。
  • 売りて目線での開発。
  • 誰でも・どこでも使える汎用的なニーズに合わせる。
  • 補助金や交付金を使う。
  • 金融機関などから資金を調達しない。
  • 楽観的な返済計画しかない。
  • 過剰な設備。
  • 売り先が決まってないのに動き出す。


たくさんの税金を使って失敗してくれている先行事例がたくさんある世の中です。今から自分で同じ失敗を繰り返す必要はありません。

その情報をしっかりと取り入れ、巨人の肩に乗って事業を起こしていくことが賢い選択になります。

あなたの事業が軌道に乗り、あなたやあなたの周りにいる人々が幸せで豊かになっていくことを心より願っています。


参考

この記事の内容は経済産業研究所や内閣官房地域活性化伝道師を務めた木下 斉さんの「地方創生大全」の一部を要約しまとめたものです。

本書の中にはより具体的な事例や数値データなど、地域活性化や地方創生のための事業を始める際に知っておくべき内容がたくさん詰まっています。

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