最強のチームを作りたいと願っているリーダーはたくさんいますが、自分にはそんなカリスマ性はないし、才能も実績もない、と悩んでいる人も少なくありません。
ですが、最強のチームを率いるリーダーになるには、カリスマ性も才能も実績も必要ありません。
特別な才能がなくても誰にでもできることで最強のチームを率いるリーダーになることができます。
ここでは、最強のチームを率いるリーダーになる方法について解説しています。
偉くなってはいけない
最強のチームを率いるためのリーダーになるために最も重要なことは権威的な存在にならないことです。
最強のリーダーは偉い存在だと考えている人がいますがそれは勘違いです。最高のパフォーマンスを出すチームを作るためにはリーダーは決して偉くなってはいけません。
このため、まずはあなたの目的を明確にする必要があります。
目的 | やるべきこと |
---|---|
偉くなりたい | 才能、実績、カリスマ性で偉そうに威張り散らす |
最強のチームを作りたい | 偉くならない |
偉くなりたい!人を従えたい!という人に最強のチームを作ることはできません。残念ですが、、
ここでは、最強のチームを作るための方法論なので、偉くなりたいという人は別のサイトにお進みください。
なぜ偉くなってはいけないか?
なぜ最強のチームを作るときにリーダーが偉くなってはいけないか?という理由には、アメリカ海軍の特殊部隊であるネイビーシールズ(Navy SEALs)の実験結果があります。
ネイビーシールズの最も優秀な上司とは?
ネイビーシールズのリーダーとは精鋭中の精鋭です。そして、そのリーダーの中で誰が最も優秀か?という検証を行ったときに、最も票が集まったのは、素晴らしい実績をもつ突出した上司ではなかったのです。
最も票が集まったのは非常に気さくなタイプの上司でした。
そして検証を勧めたところ、この上司はわざと気さくなタイプの上司を演じていたことがわかりました。
なぜ気さくな上司を演じていたか?
なぜこの上司が気さくで話しかけやすい人を演じていたかというと、それは過去の実体験に基づくことでした。
過去にその人(ここではニックとします)が所属していたチームの長官はものすごく厳しく「これは命令だから聞け!」というトップダウンの命令を絶対視する人でした。
その長官の判断が間違っていないときは問題ありません。スピーディーな命令系統で作戦は見事に上手くいきます。
ですが、どれだけ有能といえど人間なので間違っていることもあります。
あるとき、命令を聞いたときにニックは「この作戦で行くと、どこどこで妨害工作が行われているから失敗する」と察しました。
そして、そのことを上官に告げました。するとその上官は「上官の命令に対して口答えするな」「いいから聞け」と言って意見に聞く耳をもたず作戦を実行しました。
そして、上官の言うとおりに作戦を実行した結果、作戦は失敗し被害が出ました。
この経験からニックは、トップダウンだけではミスを防げないと気付き、常に反論や反対意見は吸い上げなければいけないと考えるようになりました。
それが、あえて気さくな態度をとっていた理由です。つまり、リーダーが偉くなりすぎて周りが意見を言えなくなると、防げるミスに気付けないという致命的なリスクを生むということです。
第2次世界大戦における日本軍が失敗した原因をまとめた「失敗の本質」という本でも語られていますが、負けないためには大きな実績を上げることよりも失敗をしない方が重要です。
気さくなタイプの上司がしていたこと
具体的にこの気さくなタイプの上司があえてしていたことは次の2つです。
自分のことを肩書や階級で呼ばせなかった
部下が「〇〇大佐!」と呼ぶと、「大佐なんて呼ばないでくれ、ニックと呼んでくれ」
というように、あだ名で呼ぶようにお願いをしていました。
命令よりも意見交換を優先した
部下と話をするときも「これは命令だ!」と言うのではなく、「これは命令ではない。みんなの意見を聞かせてくれ」と言って、命令よりも意見交換を重要視していました。
妨害者の意見と建設的反論を見分ける
ここまでは誰にもができることですが、最強のチームのリーダーになるうえでとても重要なスキルがあります。
リーダーのやるべきこと
それは、反論や反対意見を言ってくる人が攻撃や妨害工作として言っているのか、それとも建設的な反論として言っているのかを見分ける必要があるということです。
つまり、リーダーに求められるスキルは妨害者や攻撃的な意見は排除し、建設的な反対意見を吸い上げるということです。
- 妨害者の意見は中和した上で遠ざける。
- ただし、イエスマンを集めてはいけない。
反対意見はマイルドかつ具体的に言ってもらう
妨害や攻撃を目的とした意見を排除するには、反対意見をいう時にはマイルドかつ具体的に言うことを徹底することです。
このような具体的な改善提案を取捨選択し反映していくことがリーダーの大切な役割の一つです。
妨害者・攻撃者の排除
リーダは常にメンバーが安心して発言できる環境を作る必要があります。
そのためには、妨害・攻撃的な意見を中和し場を和ませる必要があります。
もし、中和しきれないほどに妨害や攻撃が酷い場合は、その人たちに退場してもらったり、会議のメンバーに入れないよう選定する必要があります。
これこそがリーダーの役割です。
改善には様々な意見が必要
製品や作品、パフォーマンスを改善するためには余計な意見を省く必要があると考えている人がいますが、実際は省くだけでは最良のアウトプットは生まれません。
Pixarの作品制作
トイストーリーなどの作品を生み出している世界的に有名な映画配給会社のPixar(ピクサー)では、最初に作品ができたあとに信頼できる賢い人たちにその作品を見てもらい意見を吸い上げるというブレイントラストの時間を設けています。
「あのキャラの形はあれでいいんですか?」
「歌が短すぎませんか?もっと聞いていたいです」
こういった意見を吸い上げて反映することで、世界中の人々がハッと息を飲むような言うような作品に仕上がるのです。
重要なのは、反対意見を言う時は攻撃的や批判的に言うのではなく「〇〇でいいんですか?」「もっと~したらどうですか?」というようにマイルドかつ具体的に言うということです。
リーダーが弱さを見せる
もう一つ最強のチームを作るためにリーダーがやらなければいけないことがあります。それはまずリーダーが弱さを見せることです。
リーダーが偉く権威的だと、周りはリーダーに任せておけば大丈夫となってしまい、自分たちの意見を言わなくなります。
そうなってしまうと、チームとしての力は発揮できず最強のチームを作ることができません。
リーダーが言うべきこと
メンバー「私たちも参加しなきゃ」と感じ率先して意見を言うように、リーダーは「私も人間です」「こういうところがダメなんです」「こういうことができないんです」という弱みの部分を正直に伝える必要があります。
そして、「ここを補ってくれる人がいるととても助かります」とメンバーに伝えることです。
集団で補い合う事こそが最強のチームの鉄則です。能力の高い人間が一人で率いることではありません。
優秀な人が最強のチームを作れない理由
優秀なリーダーは往々にして最強のチームを作ることができません。それは優秀な人は弱みを見せたくないからです。
このため、周りのメンバーはどうサポートしていいのかわからず、何をしていいのかわからないという状態になります。
仮に指示をしたとしても、メンバーは指示待ちになるばかりで自分から動く人材にはなりません。
だから相互に補い合うチームとして機能せず、最高のパフォーマンスを発揮することができないのです。
メンバーが自分の弱さをオープンにする
まずリーダーが自分の弱さをオープンにすれば、メンバーがリーダーをサポートできる体制が整います。
メンバーが弱さをオープンにすることの重要性
更にチームを強化するには、各メンバーも自分の弱みをオープンにして、メンバー同士でサポートし合える環境を作ることです。
リーダーもあの人はこれには向いてないからこっちに配置しよう。これにはあの人が向いているからこっちにしようという判断ができるようになります。
このようにして初めて連携のとれたチームが出来上がります。
メンバーが弱さをオープンにできる環境づくり
メンバーが弱さをオープンにすることは最強のチームを作るうえで必須条件です。ですが、人は「弱さをオープンにして」と言われて弱さをさらけ出せるものではありません。
人が自分の弱みを言うためには、絶対的に安心した環境である必要があります。弱みをさらけ出しても、非難されることも評価が下がることもない。みんなが受け入れてくれてありのままでいられることが約束されている必要があります。
そういった信頼し合える人間関係や安心した環境をつくるのもリーダーの役割です。
メンバーが安心し合える環境を作る具体的な方法については以下をご参考ください。
(参考)最強のチームの作り方:安心な環境は才能や実績に勝る|中和者が敵対・反抗・怠惰・愚痴・文句を凌駕する
繰り返し企業理念や目標を伝える
企業理念や目標を伝えるタイミングは土台ができてから
リーダーとして偉くならず、自分の弱みを伝え、みんなが意見を言い合える安全な環境を作り、みんなが弱さを言い合えるようになったところがようやくビジョンを共有するタイミングになります。
よくチームや会社のビジョンを伝えることばかりにフォーカスしている情報がありますが、そうではありません。
伝えた理念や目標がきちんと受け入れられる土台を作っておくことこそが最強のチーム作りに欠かせない条件です。
企業理念や目標は繰り返し伝える
理念や目標は1度言うだけでは浸透しません。どんなに土台がしっかりしていてもです。
ビジョンの浸透度の調査結果
企業600社を対象にのビジョンの浸透度を調べた面白い実験があります。
まず上層部に社員の何%がビジョンを理解していると思いますか?という質問をしたところその平均は半分より少し上の64%でした。
そして、実際に社員に対してアンケート調査を行ったところ、自分の会社のビジョンを理解している人はたったの2%でした。
ほとんどの人が自分の会社がどこに向かっているか分かっておらず、ただ言われた通りの業務をこなしていただけでした。
ですがこれが普通です。仮に今「あなたの会社はどこに向かっていますか?」と聞かれたときにドキッっとせず即答できますか?ということです。
企業理念や目標の伝え方
企業理念や目標などのビジョンもただ紙に書いてあることを棒読みするだけでは決して伝わりません。
ビジョンを伝える具体的な手順があります。
自分の信条を伝える
最初にやることは自分の信条を伝えることです。
自分がなぜそれを理念や目標に掲げたのか。どういう思いで行動しているのかをメンバー全員に伝えます。
物語を伝える
理念や目標のみを伝えるのではなく、過去→現在→未来を物語にして伝えます。
過去に何があって、だから現在この理念や目標を掲げていて、将来どうなっていきたいかを伝えます。
毎日毎日伝える
そして、自分の信条と、なぜその理念と目標掲げどこに向かっているかという物語を毎日毎日繰り返し語ります。
そこまでしてようやく、メンバーが「ああ、なるほどね」となり動けるようになります。
当選する政治家はやたらと交流している
最強のチームを作るうえでビジョンを伝えるのは一番最後。それまでにやることはとにかくメンバーと交流することです。
当選する政治家は漏れなくこの手厚い交流をやっています。選挙になってから急に「皆様!よろしくお願いします!」というのではなく、普段からやたらと有権者のところに行って意見を聞いています。
「商店街に活気がないんです。どうにかしてください」「ここにも道路を造ってください」という個人の意見に耳を傾け「なるほど。そういう状況なんですね」と理解を示しています。
そして「私が政治家になったら一緒にいい街を作っていきましょう!」と言って回っています。そういう政治家が当選します。
伝えているメッセージは「あなたはここにいていい」。それを毎日毎日伝えています。
大事なのは決戦の時ではありません、その前の普段の状態からコミュニケーションを取っておくことです。
あなたらしくて大丈夫を伝える
最後に、とても大切なことなので繰り返しますが、最強のチームを作るためにリーダーとしてやるべきことはチームのメンバー全員に「あなたらしくて大丈夫」を伝え続けることです。
例
部下「すみませんここがわからないんですけど」
リーダー「今わからなくてもいいよ、一緒にやろう」
部下「一緒にやってもらってもわからないです、、」
リーダー「そうか、じゃあ別のことを試してみよう」
部下「私何もできなくてすみません」
リーダー「大丈夫、あなたはあなたのままでいいよ!」
これをすべてのメンバーに毎日繰り返しできる人が最強のチームを作るリーダーです。
リーダーになってはいけない人
メンバーから「すみませんここがわからないんですけど」と言われたときに、次のように考える人はリーダーになってはいけません(リーダーにしてはいけません)。
このように考えている人は虹色に輝く最強チームを作ることはできません。
むしろ、チームの輪を崩し連携を阻止する妨害者なので早急にチームから取り除く必要があります。