コーチの役割とは何か?
チームを率いるコーチの役割とは、メンバーの能力やチームワークを最大化して「チームとして最大のパフォーマンスを得ること」です。
そのためには、メンバーのモチベーションを引き出す必要があります。
人が大きな問題を抱えている場合は別として、自らの意志でチームに所属し、やることが明確で期限が決まっていれば、自ずとモチベーションを持つものです。
なぜなら、チームにいるのであれば、決められた期限までにパフォーマンスを出すことが必要だからです。
例えば、バスケットボール部に所属している人はバスケが好き、バスケが上手くなりたい、試合に出たいという明確な個人目標を持っています。
このため、来月レギュラー選びの選定があるにも関わらずモチベーションが上がらないという人はそうそういません。自ずとそこに向けて努力するものです。
ただ、仕事の場合は生活のためにやらなければいけないといった部分もあったり、自分だけの目標ではなく会社のミッションも重要なため、それらと共存できる個人目標を設定することがモチベーションを出すために非常に重要です。
すなわち、コーチの役割は「メンバーが自分で個人目標を設定できるようにすること」とも言えます。
コーチとメンバーの目標は違う
コーチがメンバーの目標設定をサポートするときに覚えておかなければいけない重要なことがあります。
それは「コーチ(マネージャー)や会社とメンバーの目標は違う」ということです。
理想を言えば全員が全く同じ方向を向いて、同じ目標を追いかけるのが最高のチームです。ですが、人は生まれ育った環境や価値観がそれぞれで異なっているため、自分が納得できる目標も異なるのが普通です。
例えば、素晴らしいスマホアプリを開発したいという場合に、企業は「人々に楽しいを届ける」というミッションを抱き、マネージャーは「自分たちが開発したスマホアプリの売り上げが自分が社会に及ぼしたインパクト」と考え、メンバーは「技術的にクールなアプリを開発することが、自分の一番の楽しみ」と考えている場合があるとします。
みんな「素晴らしいスマホアプリを開発する」という目標を追いかけていますが、その指標は「人々の楽しさの増幅」「売上」「技術的にクールかどうか」というように目的が大きく異なります。
人の心や思いを無視してどれか一つに統一することは、モチベーションを下げる原因にしかなりません。
あくまで大切なことは、企業などのチームが追い求めるものは何かを明確にして、それと共存する個人毎の目標を立てることです。
自分で目標設定する能力を身につける方法
メンバーが自分で目標設定する能力を身につける方法は比較的簡単です。
それはメンバーが自分自身に「自分は何でこの仕事をやるのか?」「今年は何をやるか?」「どうやって価値を出していくか?」といった問いかけを行うことです。
そして、実際にコーチやマネージャーに「あなたはなぜこの仕事をやっているのですか?」「今年はどんな目標を立てて、そのために何をしますか?」と聞かれたときに答えれれれば、十分に自分で目標設定する能力が身についているといえます。
この問いかけを仕組み化するのがコーチの役割です。
目標設定を促す問いかけ
目標設定の問いかけを仕組み化するためには、普段からそういったことをメンバーに問いかける機会を作ります。
四半期や毎週の1on1ミーティングで聞くなど、定期的に問いかけることが重要です。もちろん定期的なミーティング以外に、日々の雑談の中で価値観を問うような問いかけをすることも効果的です。
メンバーが「これを聞かれるな」と思うようになれば、自ずとそのことについて考えを巡らせるようになります。
目標設定を促す問いかけには次のようなものがあります。
いきなりこれらの問いかけをされても、すぐに答えることができないのが普通です。
「あなたにとって重要なことは何ですか?」といった問いかけをして「うーん」と相手が黙り込んでしまったら、「今すぐに答えを出さなくてもいいですよ。また来週訊くので、その時までに考えておいてください」と一言伝えればOKです。
むしろ「直ぐに答えて」といったように急かしたりすれば、本心とは違うとってつけたような答えがでてきます。その答えに心から納得することはなく、個人の目標設定をするために逆効果となります。
繰り返しが重要
自分で目標設定ができるようになるためには、繰り返し伝えることが非常に重要です。
バスケットボールでシュート率の高いフォームを身につけるためには、修正を加えながら何度も何度も繰り返し何度も何度もシュートを打つ以外に方法はありません。
スラムダンクの流川も豊玉戦で相手のエースの肘内をくらって片目がふさがってしまった状態でシュートを決めました。その時に次のように言っています。
何百万本もうってきたシュートだ。
コーチもメンバーが自分でできるスキルを身につけられるようになるまで、何度も何度も繰り返し問いかけをして、メンバーの成長をサポートする必要があります。
問いかけは何度行ってもその効果は消えません。それどころか「また聞かれる」という感覚が身につき、自然と考えられるようになります。