プライベートな問題の聞き手になるのもマネージャーの役割|仕事のパフォーマンスを下げるものを取り払う

コーチ・リーダー
記事内に広告が含まれていることがあります。

日本には、マネージャーの仕事は部下の仕事の進捗を管理したり細かく指示を出すことだと考えている人が少なくありません。

会社や組織というチームをより強いチームにして最高のパフォーマンスを出すためにマネージャーがやるべきことは、指示や管理が本質ではありません。

マネージャーの仕事は、部下がモチベーション高く、才能を発揮して仕事に取り組めるようにすることです。

そのためには、部下のプライベートの悩みに乗ることも重要な仕事の一つと言えます。


プライベートの問題は仕事にも大きく影響する

そもそも人は仕事とプライベートを完全に切り離して生きることができません。仕事でいいことがあれば、プライベートもウキウキするものですし、プライベートが順風満帆なら仕事もエネルギッシュに取り組めるものです。

その逆も然りで、プライベートに大きな問題を抱えていると、それは仕事のパフォーマンスにも大きく影響を及ぼします

企業は仕事とプライベートを完全に切り離して考えがちですが、従業員がプライベートで抱えている問題は仕事にも大きく関わりがあるというのが事実です。

このため、部下に仕事でパフォーマンスを出してもらうことを第一に考える上司は、従業員のプライベートの問題にも注意を向ける必要があります。

point

従業員のプライベートの問題は仕事に直結する。


部下と信頼関係が築けているか?

部下のプライベートのことも注意するといっても、部下のプライベートに過干渉になれば、それはセクハラやパワハラになり、嫌われ訴えられる原因にもなります。

上司が部下のプライベートに関与するためには、普段から、部下が自らプライベートの相談を持ち掛けてくるような人間関係が築けていることが重要です。

いつも指示ばかりしていたり、管理監視ばかりしようとしたり、仕事以外の人間性を認めないような上司は論外です。そういった人は社員の能力を発揮させるどころか制限し、チームの能力や結束を下げ弱くしているので即刻改善させるか、改善ができないなら人の上に立つ立場を解任する必要があります。

point

マネージャーの重要な仕事の一つは、部下が自らプライベートの話を打ち明けてくる関係性を築くこと。


1on1ミーティングがプライベートの相談に乗る場

上司と部下が1対1でミーティングを行う、1on1ミーティングは上司が部下との信頼関係を築き、部下がモチベーションをもって仕事に取り組めるようにする部下のための時間でもあります。

もちろん普段からプライベートのことだけを話す必要はなく、部下が業務に対して抱えている不安や悩み、怒りやストレスに向き合う場でもあります。

ただ1対1のときに部下から、「今日は〇〇の業務について相談したかったんですが、どうしてもプライベートで気になる問題があって、話に乗ってくれませんか?」と言ってプライベートのことについて相談され、悩みにのることができれば上司と部下の信頼関係は構築できているとみなせます。

あるいは、気分が落ち込んでいたり、明らかに様子のおかしい部下がいたら「ちょっといいかな」と言ってミーティングルームなどに誘い出し、1on1で話を聞くといった行動も非常に重要です。

問題や失敗、悩みなどの開示や解決は早ければ早いほど効果的です。


話を聞くだけでいい

プライベートの相談に乗るといっても「こうしたらいい」「ああしたらいい」というアドバイスは基本的にする必要がありません。

人はみな自分の中に問題に対する答えを持っているものです。そして、その人たちが抱えている問題はあなたではなく、本人が解決しなければいけないことです。

決して、聞かれてもいないのにアドバイスしたり、解決策を提示してはいけません。それを言った瞬間に相手は「この人は私の話を聞いてくれない」と感じます。

では、何をすればいいかというと「ただ耳を傾けて注意深く聞くだけでいい」です。

会話の最後に相手が「話してみてスッキリしました」と言えば、それで十分に役目を果たしています。むしろそれが、目指すべきゴールです。

point

「話してみてスッキリしました」と言ってもらうことが、プライベートの相談の聞き手としてのゴール


その後どうなりましたか?と聞く

部下との信頼関係を築くには相談を1回キリで終わりにしてはいけません。一度乗った相談は「その後はどう?」といったように折を様子をうかがってみることも大切です。

それは「あなたのことを気にかけています」「あなたのことを大切に思っています」という気持ちを行動で示したものです。

point

部下に対して「あなたのことを大切に思っている」ことを行動で示すのがマネージャーの仕事


あまりにも手に負えない場合は専門家を紹介する

悩みの内容や深さによっては、マネージャーでは受け止めきれないものもあります。そういった場合は、より親身になって相談に乗れる人や、解決策を提示できる人を紹介したり、専門家やカウンセラー、病院などを勧めることも重要です。

ただし、あくまで親身になって考えた結果それを勧めているという姿勢が大切です。

「これは重荷だな。関わりたくない」というような気持ちで他の人を勧めれば、その感情は相手に「関係性の放棄」として伝わります

point

部下の心の傷を癒すこともマネージャーの仕事。そのためには力になりたいという動機が大切。


プライベートの相談の正しい対応例

ある優秀な女性の部下は大事なプロジェクトの出張を目前したある日、結婚相手の彼氏の浮気が原因で婚約破棄になってしまいました。

最初は仕事だからと自分に言い聞かせて、上司にも相談せずにいましたが、大事な出張を前にして自分の心の乱れに耐え切れず、上司に「実は最近、彼氏の浮気で婚約破棄になった」というプライベートの問題を打ち明けました。

上司はまず、部下の話にしっかりと耳を傾け一通り聞ききりました。そして、次のように伝えました。

過去に私の部下で同じ経験をした子がいました。その子は当時はとても辛そうで大変そうでした。ですが、彼女は今、別の男性と出会ってとて結婚しとても幸せに暮らしています。

人生は色々あるもの。でも、今起こったことも、10年後の将来から見たら大した問題じゃないよ。

それにしても、その男許せないな。結婚する前にわかってよかったね。

ポイントは他の人のストーリーを語ることで、励ましたこと。そして、「その男許せない」といって、彼女の気持ちに寄り添ったことです。

さらにその上司は次のように付け加えました。

そんなに大変な中で、ここまで出張の準備をしてくれてありがとう。助かったよ。

悩みを持っている部下の話に注意深く耳を傾け、励まし、気持ちに理解を示す。そして、感謝を示す。これだけで部下の心の傷はとても癒されるものです。

上司は部下の心の傷を癒し、本来の輝きを取り戻すために存在しています

なお最悪な相談の乗り方は「そんなの悩むことじゃない。元気出せよ」といって相手の傷ついたという心を無視することです。

本人は部下のことを考え励ましているつもりですが、相手からすると「この人は私の話を真剣に聞いてくれていない」「私の問題を軽々しく見ている」というように感じます。

何事もあなたがどう思うかではなく、相手がどう感じるかが重要です。マネージャーになる人に必須の能力の一つは、相手の気持ちに寄り添う能力です。

point

マネージャーの重要な仕事の1つ目は「聞くこと」、2つ目は「相手の気持ちに寄り添うこと」



参考

この記事の内容はモルガン・スタンレーやGoogleで人材育成や組織開発を率い、自身も起業家であるピョートル・フェリクス・グジバチさんの著書『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』の一部要約に個人的な見解を加えたものです。

本書は現代の組織に求めれているものは何か?それを得るためにはどうすればいいかが具体的かつ論理的に記されています。

使われている用語は専門用語ではなく、誰にでもわかりやすいものになっていて、例も豊富に乗っている非常に実践的な良書です。

会社を率いている人や部署を率いている人、あるいはマネージャーを目指している人の必読書といえます。

この記事に興味を持たれた方は実際に本書を手に取ってみることをお勧めします。



タイトルとURLをコピーしました