【コーチングの基本】もっと耳を傾ければ誰もが賢くなれる|オープンクエスチョンをして、敬意を持って答えを聞き取る

人付き合い
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企業やチームなどトップはメンバーの成長を渇望しています。そのため、給料を上げたり、インセンティブを用意するといった報酬でモチベーションを引き出そうとしている組織は少なくありません。

しかし、メンバー自身が自ら自発的に行動するようになるためには、給料やインセンティブといった外から与えられる報酬だけでは不十分です。

なぜなら、それらは組織に対する愛着心やロイヤリティではないため、その報酬が出なくなったり減ってしまえば、そのチームに所属している価値を見失ってしまうためです。

社長や部長など人の上に立っている多くのリーダーが、メンバーのモチベーションを上げ、組織への自発的な貢献を引き出すためにできることがあります。

それは、相手の話に敬意を持って耳を傾けることです。

本来、個人ではなく組織やチームで行動するために「相手の話に敬意を持って耳を傾ける」ことは非常に重要で、チームの成果や成長を望むのであれば、やらなければいけないことでもあります。

それをやらないことは、組織に所属し、組織を引っ張る人たちの怠慢ともいえます。

ここでは、相手の話に敬意を持って耳を傾けることの重要さと、その方法についてまとめています。


組織の中で行われている失敗

組織の中のコミュニケーションで頻繁に見られる失敗に「相手の話に敬意を持って耳を傾けていない」ということがあります。

誰かが「~はどうでしょうか?」と発言すると、食い気味で「それは違う」「それよりもこうするべきだ」といったように、相手の意見に聞き入れるどころか、聞き取らないという意思を示す行為が行われています

そういった発言は主に優秀な人や、知識や経験がある人、上の立場にいる人によって行われます。

そして、そういった発言は適切な事実を述べたものです。

確かに事実はとても重要なのですが、その発言をした結果、メンバーが感じるのは「自分の意見を聞いてもらえない」「言っても無駄」「この組織にいては自分の価値を発揮できない」という感情です。

それは、組織に対しての愛着心や忠誠心を下げます。これは長期的に見て組織にとって非常に大きな損失になります。

なおここでの組織とは、会社だけに限らず、家族や部活など2人以上のチームでも同様です。

point

相手の話に敬意を持って耳を傾けない行為は、組織に対する愛着心や忠誠心を下げ、組織に危機的なリスクをもたらす。


もっと耳を傾ければ、誰もが今より賢くなる

決して適切な事実を言ってはいけないというわけではありません。これまでと同様に事実を発言してもいいのですが、それは相手の話を聞ききってからにすることが大切ということです。

食い気味で被せたり、「それは違う」と否定したりしてはいけないということです。

相手の言葉に耳を傾ければ、相手は「自分の意見をしっかりと聞いてもらっている」と感じることができます。

それは「この組織で自分は発言を求められているし、発言してもいいんだ」という自己認識を与えます。

このとき、組織はその人にとって自分自身でいられる心理的安全性が確保された場所になりまs。

20世紀最高の指導者と呼ばれたアメリカUCLAのバスケットボールコーチ、ジョン・ウッデンは次のように語っています。

もっと耳を傾ければ、誰もが今よりずっと賢くなれる。


今に集中し、相手の言葉を聞ききる

人の上に立つような頭の回転が速い人は、相手の発言を先回りして考える傾向があります。

「この後こう言うだろう」「こういうことが言いたいのだろう」と推測して、その言葉を相手の代わりに発言したり、被せて潰したりします。

しかし、それらはあなたの頭の回転の速さの証明になると同時に、相手のとろくささや発言する機会を奪う行為でもあります。

相手の言葉を聞くことに関して、ジョン・ウッデンは次のように語っています。

ただ言葉を聞き取るだけじゃない。相手が言いそうなことを先回りして考えたりせず、とにかく耳を傾ける。

「今ここに存在する」という言葉が示すように、いつも全身全霊で傍にいて、じっくりと耳を傾ける必要があります。

決して、上の空でスマホをいじったり、腕時計を眺めたり、パソコンをいじったり、窓の外に目をやるなど、ながらで対応してはいけません。

point

いま向き合っている相手に最新の注意を払う。相手に全神経を集中させ、じっくり耳を傾ける。その後で本題に入る。


指図しない(オープンクエスチョンをする)

相手の言葉に耳を傾ける上で、相手に対して敬意を持って接するために重要なことは「指図をしない」ことです。

「あれやれ」「これやれ」「それは違う」「そうじゃない」というのではありません。自分の口から事実を語るのではなく、質問を投げかけることで相手自身が本当の問題に気づけるようにします

優秀と言われる人たちや、論理的思考をする人たちは常に答えを求める傾向にあります。このため彼らは何らかのヒントやアドバイスを求めている場合に、こちらに質問をしてくる場合があります。

そのときに「はい、待ってました」や「しょうがないなー」と言ったように答えを直ぐに教えてはいけません。

それは、相手のためではなく、あなたが自分の能力や優位性を示したい、あるいは認めてもらいたいという欲求に基いた行動です。

質問には、あえて答えないようにする必要があります。

もちろん「教えない」といじわるするのではなく、相手が自発的に答えにたどり着けるように導くことが大切です。

point

質問には”あえて”答えない。相手に敬意を持った質問をどんどん投げかけて、本当の問題に気づかせる。


敬意ある質問の効果

相手に対して敬意ある質問を投げかけることは、相手に次の3つの感覚を感じさせることができます。

敬意ある質問の3つの効果
  1. 「有能感」:自分は試されていて、それに答えることができるという感覚。
  2. 「関係性」:他社とつながっているという感覚。
  3. 「自律性」:自分が状況をコントロールし、選択しているという感覚。

例えば相手が「~はどうでしょう」と言ってきたときに、「それは違う」「それでは不十分だ」というのではなく、「なるほどね。ではこういう場合はどうなりますか?」という質問をすると、相手は、自分は試されているという「有能感」、この人は私の話に耳を傾け意見を聞こうとしているという「関係性」、そして、この場の問題解決は自分自身が担っているという「自律性」を感じることができます。

これら3つの「有能感」「関係性」「自律性」は人がモチベーションを保つために必要な要素といわれています。(モチベーションの自己決定理論の3要素)

組織内で敬意を持った質問をすることこそが、メンバーの育成や成長、モチベーションの維持やアップにつながります

point

敬意ある質問が、自分は目に見えない名もなき存在ではなく、尊重されていて、チームワークの一端を担っていると感じさせる。


まとめ

コーチングの基本は「傾聴」です。

相手に全神経を集中させ、じっくり耳を傾け、相手が言いそうなことを先回りして考えず、あえて答えを言わず、敬意ある質問を通して相手自身が問題の本質に迫ること。

このような態度で接することで、相手は「話をしっかり聞いてもらい、理解され、支えられている」と感じることができます。



参考

この記事の内容はGoogleのCEOと会長を務めたエリック・シュミットやプロダクト責任者を務めたジョナサン・ローゼンバーグらが書いた「1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」の内容の一部要約と自分なりの解釈を加えたものです。

ビル・キャンベルはAppleのスティーブ・ジョブズやGoogleやTwitterの経営幹部のコーチングを務め、世の中に偉大なリーダーを何人も送り出してきた人物です。

ビル・キャンベルが貫いてきた生き方やそこにまつわるストーリーには、最高のチームを作るためにリーダーやコーチが知っておくべき考え方や行動が宝の山のように詰まっています。

その考え方はビジネスやチームを成功に導くだけでなく、人として幸せに生きるためのより本質的な知恵でもあります。

この記事に興味を持たれた方は、本書を実際に手に取ってみることをお勧めします。あなたの人生をより幸せにし、成功へと導いてくれることは間違いありません。



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