経営者やマネージャーなど上にいる立場の人に、最高に優れた組織はどんな組織か?という質問をすると「すべてがコントロールできている状態」と答える人がいます。
突発的な問題が起こらず、想定した通りにスムーズに事が運ぶ状態は理想的なように思えます。
ですが「すべてがコントロールできている状態」が続けば企業は衰退しやがて滅びます。
ここでは、なぜすべてをコントロールできている状態が理想的でないのか、ではどうするべきなのか?についてまとめています。
すべてがコントロールできている状態がいけない理由
なぜ、すべてがコントロールできている状態がいけないかというと、そこには予想できる成長や結果しかないからです。
過去の歴史を振り返れば、私たちの社会は、私たちの予想を超えたことをした人や起業が成功しています。
一方、これまでの慣習をずっと守り予想通りのことをし続けた企業は衰退し滅んでいます。特に、インターネットが普及し、グローバル化が進んだ現在で成功するためには、常に想像を超える成長が求められます。
そして、この世は不確実な状態がデフォルトです。未来を予測できる人は一人もいません。
リーマンショック、東日本大震災、コロナウイルスなど誰がそれを予想できたでしょうか?世の中は2~4年のスパンで、そういった不測の事態が起こります。
つまり、絶対にコントロールできないことが起こるのです。コントロールされ続けている環境にいる人たちはそういった変化に対する適応能力が著しく低くなります。
結果として、変化に対応することや、新しいイノベーションを起こすことができずに、企業は衰退していきます。
これらは法律をみればわかります。日本などの国家は国民を上手にコントロールしようと様々な法律をつくりあげています。
ですが、インターネット、仮想通貨やSNSなど次から次へと過去の法律で想定していないことが起こっています。
インターネット、仮想通貨やSNSなどの新しい技術は、私たちの生活を低下させ苦しくするものではなく、よりたくさんの情報や繋がり、可能性をもたらしてくれるものです。
人々はその技術革新を喜んで受け入れます。なぜならその方が楽で楽しく、豊かになるからです。
業務プロセスを上回るスピードで進化する状態がベスト
すべてがコントロールできている状態におくことを重要視すれば、その企業は最高効率を叩き出し売り上げを上げることができます。ですが、それは時代がその状態にフィットした瞬間でのみ発揮されるものです。
時代が先に進んでしまえば、完全だと思えたコントロール状態はどんどんと古いモノになっていきます。
ではどういう状態がベストかというと、商品やサービスが「既存の業務プロセスを上回るスピードで進化している状態」です。
アメリカの有名なF1レーサーにマリオ・アンドレッティという人物がいます。インディ500、デイトナ500とF1チャンピオンを全て獲得した世界唯一のドライバーです。
マリオ・アンドレッティは次のように語っています。
すべてがコントロールできていると感じるのは、十分な速度が出ていないサインだ。
組織内の信頼関係こそが重要
コントロールできないぐらい速度を出している状態とはどういう状態でしょうか?
これまでの決まりや業務の進め方が適用できない状態なので、はっきりいってカオス(混沌)です。
そのような状況下においては、企業の中にいる人たちがいかにまとまり、一つの目標に向かって協力し進んでいけるかが企業が永続的に成長し続けるために重要です。
そのカギとなるのが人間関係です。
社長と社員、社長と上司、上司と部下など、それぞれの立場の人々がお互いを理解し信頼関係を持っていることこそが、カオスな状態を乗り切っていく武器になります。
逆に、お互いの間に信頼関係がなければ、カオスな状態に不満を言い出したり、その状態を自分の利益のために利用とする人たちが続出します。
社長や上司など上の立場であればあるほど「社員とどうやって信頼関係を作るか」「社員同士がどうやったらより深い信頼関係を築けるか」を真剣に考え続け実行していかなければいけません。
仕事よりも人間関係の構築の方が大事
会社へのロイヤリティが高く責任感が強い人ほど、会社へは仕事をするためにいくものだと考えがちですが、それだけでは足りません。
「仕事よりも人間関係の構築の方が大事」という心持こそが、これからの時代を乗り切っていくために重要なことです。
信頼関係の作り方
「信頼関係を作る」とはあちこちで耳にする言葉ですが、具体的には何をすればいいのでしょうか?ただ単に、ウソをつかない、誠実でいるというだけでは不十分です。
信頼は「自分のことを理解し受け入れてもらえた」と感じたときに生まれるものです。
このため、相手の名前をフルネーム漢字で書けるか、妻や旦那などパートナーや子供の名前を憶えているか、趣味は何か、学生時代は何に打ち込んでいたかなど、相手のプライベートを知っていることは信頼関係を構築する基本中の基本になります。(※深く踏み込みすぎて、心を傷つけたりストーカーになってはいけません)
同時に関わった人たちを、笑顔にしたり、褒めて認めたり、気持ちに寄り添うといった配慮が必要です。
どれだけ相手を笑顔にして、承認して、褒めて、気持ちに寄り添っても損することはありません。
新しい職場での3週間ルール
「仕事よりも人間関係の構築の方が大事」を実践するために有効なのは、新しい職場での3週間ルールです。
新しい職場や部署について最初の3週間を「仕事」に費やすのではなく、そこにいる人たちの理解に努めることに使います。
そこで働いている人たちはどういう人たちか、何を優先と考えて仕事をしているか、どんな問題を抱えているかを知ることに全力を注ぎます。
何も仕事をしていないどころか、それよりもっと組織に貢献でき、長期的な持続力がある人間関係の構築を優先するということです。
参考
この記事の内容はGoogleの経営陣 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著「How Google Works ―私たちの働き方とマネジメント」の内容の一部抜粋と要約です。
一国家と同等な資金を持ち、世界中で知らない人はいないほどのGoogleという大成功企業の中で、
- どのような制度が用いられ、どのような人たちが働いているのか
- 人のやる気を引き出し、周りが見たら無理だと投げ出したくなるような事業をどのように達成に導いてきたのか
- 優秀な人材を獲得するための方法
- 採用時にやってはいけないこと
などなど、これからの時代に欠かすことのできない内容がギッシリ詰まった一冊です。堅苦しくなくユーモアがあり読みやすい文体ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。