【タバコ・お酒をやめる方法】パブリック・コミットメントの力(禁煙・禁酒するための心理テクニック)

健康
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1992年にWHO(世界保健機構)がタバコの喫煙は発がん性があり体にとって有害であると公表してから、日本でも喫煙を推進する動きが急速に進んできました。

近年では飲酒についても「お酒はわずかでも体に悪い」という見解が発表されています。

ですがタバコもお酒も依存性があるためやめることは容易ではありません。その難しさはタバコ吸ったりお酒を飲んだりしない人にはわからないでしょう。

ここでは、それほどまでに難しい禁煙と禁酒を達成する方法について、人間心理を上手く活用した方法を紹介しています


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お酒が私たちの身体にとってどうして危険なのか?については下記をご参考ください。

(参考)お酒の危険性|DNAに傷をつけ、短命でこの世を去る(アルコール依存者の寿命は-30年)


書く+公表する

禁煙・禁酒を成功させるための強力な手法は「書くこと」と「公表すること」の2つです。

なぜこの2つが強力かというと、私たちヒトの心理に強力な影響を及ぼすからです。

アメリカの著名な社会心理学者であるモートン・ドイチュ(Morton Deutsch)は自分の意見を書き出すことと公表することが、その人の心理にどのくらい影響を与えるかを調べました。

実験の内容はとても簡単なものです。大学生に一本の線を見せてその長さを心の中で見積もってもらいます。それぞれの答え方は次の3パターンで行ってもらいます。

3パターンの答え方
  1. 書き出さず、口頭で答える。
  2. 自分の答えを紙に書くが公表はしない。文字を消せるパッドに記入し、消してもいいとする。
  3. 自分の答えを紙に書き、署名した上で提出する。

この3つの方法で答えてもらった結果、最初の判断が間違っているという情報を伝えられた後に、自分の判断にどれぐらい固執するかを調べました

結果には明らかな違いが出ました。

パターン1の「書き出さず、口頭で答える」とした学生は、自分の意見に疑問を投げかけられ、新しい証拠を見せられると、その新しい情報にすぐに影響を受けて、自分が正しいと思っていた行動を変えました

パターン2の「自分の答えを紙に書くが公表はしない。文字を消せるパッドに記入し、消してもいいとする」とした学生は、新たな証拠を見せられても自分の意見をなかなか変えることがありませんでした

誰にも公表していないにも関わらず、自分の考えを「書き出した」だけで、自分が最初に出した答えを変えることに対して抵抗感を覚え、一貫性を保とうとしました。

パターン3の「自分の答えを紙に書き、署名した上で提出する」とした学生は新しい証拠を見せられても、頑なに自分の意見を守ろうとしました

つまり、強烈に一貫性を保とうとしたということです。

point

人は紙に書き出しただけで、その意見を守り抜こうとする。それを他の人に公表した場合はしつこいまでにその意見に固執する。


禁煙を成功させた人

「書く」+「公表する」手法を使って実際に禁煙を成功させた人がいます。

ある女性の喫煙者 たか子さんは職場の人たちの喫煙率が高いこともあってタバコを吸っていました。ある日テレビで「タバコはガンの原因になる」という科学的なドキュメンタリー番組を見て、禁煙したいと思うようになりました。

ところが、やめてみて2~3日するとどうしようもなく我慢できないぐらいにイライラしてしまい、結局また吸ってしまいました。

自分で決意するだけでは禁煙できないと悟ったたか子さんは、次のような戦略を立てました。

喫煙の3つのステップ
  1. 尊敬して欲しい人たちの名前をリストアップする。
  2. カードに「もう二度とタバコを吸わないと約束します」と書く。
  3. リストアップした人たちにカードを手渡すか郵送する。

たか子さんは親友、会社の上司、故郷にいる兄と妹にカードを渡しました。

一人、その頃付き合っていた大好きな彼にはカードを渡すことができませんでした。もしこれで禁煙に失敗したら死ぬほど恥ずかしいと考えたからです。

ですが、意を決して彼にカードを手渡しました。

禁煙することは、これまで生きてきた中でも一番辛いことでした。もう無理、吸うしかないと思ったことは数えきれないほどありましたが「ここで踏みとどまれなかったらカードを渡した人たちから軽蔑される」という思いが、たか子さんの禁煙を後押ししました

結果として、何年もの間禁煙することに成功しています

point

「書いて」「公表する」ことが、禁煙や禁酒をする強力な後押しになる。


パブリック・コミットメントの力

禁煙を成功させたたか子さんのように周りの人に「~します」と自分の意志を公表することをパブリック・コミットメントと言います。

パブリックとは公、コミットメントとは自分の言ったことに対して責任を負うと言う意味です。

パブリック・コミットメントをすると、それを守ることができなければウソつき、優柔不断、不安定、信頼できないといった社会的評価が下されることになります。

私たちには「よく見られたい」という感情があり、そうみなされることを避けようとします。

結果として、無意識のうちに自分が公表したことと一貫するような行動をとるようになります

このように、自分が言ったことや公表したことを守るように行動する人の性質を「一貫性の原理」といいます。

point

「書く」+「公表する」は私たち人が持つ強力な性質の一つ「一貫性の原理」を利用した手法。


ダイエットにも効果がある

パブリック・コミットメントが効果を発揮するのは禁煙や禁酒だけではありません。自分がこうありたいと思っていることならあらゆるものに効果があります。

もちろんダイエットにも効果があります。

あるダイエットジムのオーナーはパブリック・コミットメントの力をよく理解していて、入会者に何kg痩せたいかの目標を書かせて、その目標を友人、家族、隣人にみせるように勧めます

オーナーは次のように語っています。

他のあらゆるダイエット手法が失敗したとしても、パブリック・コミットメントという単純な方法だけは効果を発揮しやすい。


パブリック・コミットメントの効果を得やすい人

パブリック・コミットメントは人によって効果の得やすさが変わります。パブリック・コミットメントが特に有効なのは「プライドや自尊心が高い人」です。

そういった人たちは「人から良く見られたい」という思いが強かったり、「自分で言ったことは守る」という意識が強いので、パブリック・コミットメントしたときに驚くほどの心理的な効果を発揮します。


まとめ

タバコやお酒をやめたいと思っているけどやめられない人は、まずは「やめたい」と思っている意思を周りの人に表明することが大切です。

むしろ、周りに表明せずに自分の中だけでやめようとすることは不可能です。

周りに表明すれば一貫性の原理により、自分の中でタバコやお酒をやめようとする強い力が働きます。「吸いたい」「飲みたい」という気持ちに抗う力になります。

また、周りの人たちもあなたがやめようとしていることを応援してくれるはずです。

更にいいことに「やめたい」と宣言した人の周りには「私もやめたいと思っています」という人たちが集まってきます。

一人では不可能なことを公表することで、大勢で成し遂げることへ変わっていきます。

現在ではSNSやブログなど公に宣言するための便利なツールがたくさんあります。そういった便利ツールと人間心理をフル活用して、あなたが健康で充実した人生を送れることを心より願っています。


参考

この記事の内容はアメリカの有名な心理学者 ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の内容の一部抜粋と要約です。

現代のマーケティングで使われている手法が心理学の面から解き明かされ、たくさんの事例を交えてわかりやすい文章で記されています。

この本の内容を細かく知っているかどうかで、現代の市場に隠されているたくさんのワナにハマりカモになるのか、それを避けて利用する側に回れるのかが大きく分かれます。

気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。



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