動物が持つカチ・サー効果|自動的に作動する本能(ヒトのカチ・サーは何か?)

思考法
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カチ・サー効果という言葉を聞いたことがあるでしょうか?何かのきっかけがあると自動的に行動してしまう本能のことです。

英語ではAutomaticallyといい、まさに「自動的に」という意味です。

野生動物の中には面白いカチ・サー効果を持つものがいます。

七面鳥のカチ・サー

日本ではあまり馴染みがありませんが、アメリカではお祭りの度に七面鳥の丸焼きが振舞わるのが慣習となっています。キジの仲間で最大の鳥です。英語ではターキー(Turkey)と呼びます。

七面鳥には面白い習性があります。それはヒナが「ピーピー」と鳴くとヒナを優しく守ったり温めたりして育てるということです。

一見普通なように見えますが「ピーピー」鳴かないヒナには見向きもせず無視して殺してしまいます

つまりひな鳥ではなく「ピーピー」という鳴き声に自動的に反応しているということです。


動物行動学者のM・W・フォックスは七面鳥の天敵であるイタチのはく製を使った実験をしました。

イタチのはく製を七面鳥に近づけると、七面鳥は激怒して強烈な攻撃をくらわせます。

ところが、イタチのはく製の中に仕込んだテープから「ピーピー」というひな鳥の鳴き声をさせると、七面鳥ははく製のイタチが近づくのを許し、しかもそれを他のヒナと同じく羽根の下に包み込みました

そしてテープを止めると七面鳥はまたはく製のイタチに向かって攻撃を始めした

point

七面鳥は「ピーピー」という鳴き声に本能的に反応しているだけ。


コマドリのカチ・サー

コマドリにもカチ・サー効果があります。

オスのヨーロッパコマドリは自分の縄張りに別のオスが入ってくると、そのオスの胸のオレンジ色の部分だけを激しく攻撃します。

一方、胸にオレンジ色がない本物そっくりのはく製のコマドリを近づけても攻撃せず無視します。

point

ヨーロッパコマドリのオスは胸のオレンジ色の羽根に反応しているだけ。


カチ・サーは基本的に上手くいく

七面鳥やコマドリのように人間がはく製を使って遊ばない限りはカチ・サーの機能は自然界で上手に機能します。

鳴き声を出さないヒナはもともと生存確率が低いので、より生存確率の高いヒナを守り育てることに集中するのはとても合理的です。


カチ・サーの悪用

しかし、自然界ではこのカチ・サーを悪用する例もいくつか見られます。

トゲアリ

トゲアリはクロオオアリなどの他のアリの巣を則ります。その方法は敵の匂いを身にまとって巣の中に侵入することです。

そしてクロオオアリの女王を殺して自分が新たな女王になりすまします。

クロオオアリの働きアリたちはそのことに気付かずせっせと食料を運び込み、トゲアリの女王を育てます。

臭いに反応するアリの習性を上手く使った処世術です。


ホタル(フォトゥリス)

フォトゥリスというホタルは別種のフォティヌスというホタルのオスを食料とする生き物です(名前が似ていてややこしい)。

オスのフォティヌスは食べられないようにメスのフォトゥリスを避けようとします。

ところが、メスのフォトゥリスは相手のメスの求愛信号を真似ておしりを光らせます。するとオスのフォティヌスはそれにつられて近寄ってしまい、捕まえられて食べれれてしまいます。

おしりの光を上手く使った処世術です。


人のカチ・サー

カチ・サーの反応があるのは動物や昆虫だけではありません。人にもカチ・サーがあります。

性的反応

フォトゥリスは相手のメスの求愛信号を装ってオスを捕食しました。人にも求愛信号というか、女性の魅力によって男性を動かす力があります。

ウィーン大学の生物学者のアストリッド・ジュエットらは女性の膣の匂いとよく似た化学物質を若い男性に嗅がせる前と、嗅がせる前で何人かの女性の顔写真を評価してもらいました。

すると膣の匂いを嗅いだ後はほとんどの女性がより魅力的に見えるようになりました

性的興奮による力はアメリカの行動経済学者 ダン・アリエリーの実験でも明らかになっています。

普段はどんなに理性的な男性でも、静的に興奮した状態になると正常な判断ができなくなることがわかっています。

これは私たちヒトが子孫繁栄を最大の目的としてプログラミングされていることを示しています。


返報性の法則

私たちヒトに働いている強力なカチ・サーの一つに返報性の法則があります。

これは、相手に何かをしてもらったら返さなければいけないと思う本能のことです。

返報性の法則はモノをあげる以外にも、罵倒されたり蹂躙された場合の報復などにも働きます。

心理学者のデニス・リーガンは人が持つ返報性の法則の力を調査するために次のような実験を行いました。

美術鑑賞会に参加した学生に対して、同じく参加を装った助手が1枚250円の新車が当たる可能性があるクジを買うように依頼します。

「1枚250円*のチケットを買って欲しい。何枚でもいいんだ。もちろん多いに越したことはないけど」(*コーラ1本100円として換算)

その際次の2パターンを用意します。

A: チケットを買うように依頼する。
B: 休憩時間に「君の分も買ってきたよ」と言ってコーラを渡しておく。

結果は先にコーラを渡しておいた場合は圧倒的に多くのチケットを買う結果になりました。中には7枚(1750円)分も買った人もいました。


専門家の言う事を信じる

他にも「専門家が言うなら間違いない」というカチ・サーも存在します。

専門家に聞いて、その人が言ったことなら疑いもせずなんでも鵜呑みにしてしまうということです。

最たる例になると、その専門家の専門分野以外のことまで信じるようになります。専門家はその専門分野以外では素人にも関わらずです。

他にも成功している経営者や有名な政治家など社会的な地位や権力を持っている人の言う事を、鵜呑みにして信じてしまうことが往々にしてあります。

相手が凄いと、専門以外のプライベートなど他のことまで勝手に上手くいっていると想像してしまう性質をハロー効果と呼びます。


人には他にもたくさんのカチ・サーがあります。


ビジネスにおけるカチ・サーの利用

当然ですが、資本主義社会のこの世の中ではカチ・サーを使ったワナがあらゆるところに張り巡らされています。

無料の試供品も返報性の法則を使ったマーケティング手法です。

自分の経歴や専門性をアピールして凄い人に見せて色々とモノを売る人もいます。

こういった社会で上手に生きていくためには七面鳥やコマドリをバカにして笑いものにせず、私たち自身にも同じような自動的な反応が備わっていることを知る必要があります


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人が持つカチ・サーの詳細や、そのカチ・サーがマーケティングでどのように使われているか、私たちはどう注意して生きていくべきかを知るには世界的ベストセラーの「影響力の武器」をご参考ください。


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