親のいうことを聞いてくれない子供。いつまでたっても言われたことができるようにならない子供。自分から動こうとしない子供。ありがとうやごめんなさいを言える子にしたいのになかなか言おうとしない。
そんな子育てによくある、でもとても深刻な悩みを抱えている人は多いと思います。
そもそも子供のしつけはどうするのが正しいの?「〇〇しないと、△△できなくなるよ~」と言って脅したり、恐怖心を与えるしつけはいいことなの?
そんな悩みにお答えする、自律心のある子に育てるための15個の金言をご紹介します。
- こうしなさいと言われてやっているうちは、自律性は身につかない
- 怖がらせて恐怖でしつけると、犯罪者になりやすい
- 花の種に水を与えるように、自律できるまで繰り返し教え続ける。それがしつけ
- 自律は子ども自身が考え、行動し、失敗し、納得した、その先にあるもの
- 子供に言うことを聞いて欲しいときは、子供にお願いする
- 親に言うことをきいてもらえない子は、親の言うことを聞かない
- 甘やかしてはいけない、などと思う必要はありません
- 外でいい子、家でワガママという子は安心。心配なのは逆パターン
- 子供がして欲しいということは、できるだけしてあげてください
- 子供の言うことを日頃からよく聞いてあげている人が、子供に言うことを聞かせることができる
- 無理やり言わせるようにすることと、素直に言えるようになることは違います
- 普段の言葉で「ありがとう」はあるかもしれませんが、「ごめんなさい」のない家庭は多いもの
- 問題行動があって精神科を訪れる子の多くが、親から厳しく育てられた子
- 待つというのは5分、10分ではなく、4歳、5歳になったらという姿勢
- 早くできることがいいわけではない。遅いから悪いわけでもない
こうしなさいと言われてやっているうちは、自律性は身につかない
大人に「こうしなさい」と言われて、そのままやっている子や、「こうしなさい」と言われることを察して親の望む行動する要領のいい子には自律性は身につきません。
大人に言われてもできない子も、要領よくできる子も、自律性が育っていない点においては同じなのです。自分で考えて行動しているわけではありません。
早くできるようになる子は、たまたまその年齢にしてはできるというだけで、それ以外の意味を持ちません。見せかけの「できた」に惑わされてはいけません。
怖がらせて恐怖でしつけると、犯罪者になりやすい
怖がらせて黙らせることは正しいしつけでしょうか?
言うことを聞かせるために、大声をだしたり、「言うことをきかないと地獄に落ちてこんな目にあうのだ」と教えたり、恐い鬼を使って「こらぁ!なんで親の言うことを聞かないんだぁ」と子供を怖がらせてしつけることが近道だと考える人がいます。
確かに子供は怖い人のいうことは聞きます。でもそれは、「怖くない人の言うことはきかなくてもいい」ということでもあります。
「叱られなければいい」「バレなければいい」という気持ちが育ち、犯罪行為を引き寄せます。犯罪者の成育歴をたどると、親が恐怖をともなってしつけていたケースがほとんどです。
怖くなくても、しかられなくても、処罰されなくても、自分で判断して「これは大切なことだからやろう」「これはやらないようにしよう」と思える気持ちが自律性です。
花の種に水を与えるように、自律できるまで繰り返し教え続ける。それがしつけ
できるようになる時期は、子ども自身が決めるものです。
同じ年齢でもパッとできるようになる子もいれば、親のいうことを素直に聞く子もいます。親はそういう子をいい子と思いがちです。でも、そうでない子ができない子や悪い子ではありません。
よその子と比べてどんなに遅れているように思えても焦らないでください。
待つということは放ったらかしにすることではありません。できるようになるまで、何度でも繰り返し教えるのです。穏やかに教えるのです。飽きずに教えるのです。
やり方を見せ、一緒にやり、失敗したら助け、人に迷惑をかけたら一緒に謝る。そうやって時間をかけて、できるようになるのを待つのです。
花の種を植えた時と同じです。毎日水をやり、肥料をやり、雑草を抜きながら芽が出るのを待ちます。「早く芽を出せ」「まったく遅いんだから」としかることはしないでしょう?子供だって同じです。
自律は子ども自身が考え、行動し、失敗し、納得した、その先にあるもの
子供ができるようになるまで、何度でも繰り返し、穏やかに、飽きずに教えることで、子供の心の中に自律性が育っていきます。
自律は子ども自身が考え、行動し、失敗し、納得した、その先にあるものです。そのためには時間が必要です。
親に信じて見守ってもらった経験は、親に対するゆるぎない信頼感と尊敬となって心のなかに根付きます。
子供に言うことを聞いて欲しいときは、子供にお願いする
子供ができるようになるまで、何度でも繰り返し待つ。そうはいっても、「ここでは、言うことを聞いて欲しい」と思うこともあるでしょう。
そういうときには、子供にお願いをしましょう。2~3歳であっても、親が真剣に頼むことを子供は受け止めることができるはずです。
親に言うことをきいてもらえない子は、親の言うことを聞かない
子供に真剣にお願いしても反抗されたり無視されることがあるかもしれません。その時は、親自身が子供のいうことをどれだけ聞いているかを振り返ってみてください。
子供に言うことを聞かせたいと思うなら、まず親が子供の言うことをよく聞いてあげることです。
親の言うことを聞かない子のほぼ全員が、親に言うことをきいてもらっていません。これは本当に確かなことです。
だから、親は「この子の言うことを聞いてから、私のいうことを聞かせよう」「子供を喜ばせてから、私が喜ぶことをしてもらおう」という、おおよその順番を意識してみるとといいです。
甘やかしてはいけない、などと思う必要はありません
子供は大人が期待するほどのスピードではやりません。時間がない場合や、やり方がわかっていないような時は、進んで手伝ってあげてください。「甘やかしてはいけない」などと思う必要はありません。
子供にはみな自立心がありますから、どんなに手伝ってあげたとしても「いつまでも親にやってもらている方が楽だ」とは思いません。
困った時に助けてもらえるという安心感があるからこそ、今度は自分でやってみようという気持ちになるものです。
外でいい子、家でワガママという子は安心。心配なのは逆パターン
保育園では優等生タイプ、なのに家では自己主張が強く、自分がこうしたいと思ったら絶対に譲らない。要求が通らないと勝つまで大声で泣き続ける子供に、がまんする力をつけるにはどうすればいいかと悩む方も少なくありません。
ですが、この子は十分がまんする力を持っています。保育園で優等生なのは、人前では感情をコントロールしているからです。何も心配はいりません。
親の前でダダっ子なのは、親を信頼し安心している証拠です。そういう子は心配いらないのです。自主性があり、自己主張のはっきりしたお子さんの個性を上手に伸ばしてあげることが、お母さんの大切な仕事だと思います。
心配なのは逆のパターンで、親の前ではいい子、園では手のかかるワガママな子です。親が怖くて、顔色をうかがうように育っているので、親の目の届かないところで悪さをします。
このような子は、小・中・高・社会人として成長していく過程でも、いじめや非行など反社会的な行動や、引きこもるなどの非社会的な行動をとりがちです。
ですから、先生に「園ではとてもいい子ですよ」と言われて、親が「本当ですか?家ではものすごくワガママなんですよ」と驚くくらいがちょうどいいのです。この子は安心な子だ、自分のしたいことが分かっている子だ、将来が楽しみだ、と心からおもっているといいですね。
子供がして欲しいということは、できるだけしてあげてください
親の前で大声で泣いて自己主張をするようなことは、やめさせてあげなければいけません。泣かないと聞き入れてもらえないから泣いているのです。この子だって本当は泣きたくないんです。
日頃から、親にして欲しいことをたっぷりしてもらっている子は、こういう形で自己主張はしないものです。
日常生活の中で、子供が「して欲しい」ということは、できるだけしてあげてください。泣いて勝つのはおしまい。泣かなくても勝たせてあげましょう。
ワガママになったりはしません。信じてあげてください。
親がゆっくり笑顔でやってあげてください。時間の許す限り、いえ、多少時間が許さなくとも子供のやりたいことをやらせてあげてください。
子供の言うことを日頃からよく聞いてあげている人が、子供に言うことを聞かせることができる
「子供の言うことばかり聞いていると、ワガママな子になる」と思っている人がいますが、そんなことはありません。
幼い子どもが望むことは、何をどれだけやってあげても大丈夫なのです。
子供の言うことを日頃からよく聞いてあげている人が、子供に言うことを聞かせることができるのです。その順番を間違えないことです。
無理やり言わせるようにすることと、素直に言えるようになることは違います
「ありがとう」や「ごめんなさい」は人間関係をつくるうえで非常に大切な言葉です。その言葉を適切に使える子に育てたいと思う子育て方針にも同感です。
でも、何度説明しても子供の口から「ごめんなさい」が出てこない、からといって「謝るまでおやつはおあずけ」などと追い詰めるのは違うと思います。
無理やり言わせるようにすることと、素直に言えるように育てることは違います。大事なことは、自然に口をつくようになることです。
普段の言葉で「ありがとう」はあるかもしれませんが、「ごめんなさい」のない家庭は多いもの
赤ちゃんや子供は、周囲の大人が使う言葉を聞いて、真似して、少しずつ覚えていきます。覚えた言葉をどのような場面で使うかと言うと、大人の使い方を聞いて学ぶのです。
お子さんにとって重要なのは、家庭での普段の会話です。「ありがとう」は言っているかもしれませんが、「ごめんなさい」のない家庭は多いものです。
もしかしたら、家の中で「ごめんなさい」を口にしているのはこの子だけなのかもしれません。だから、謝ることに抵抗や屈辱を感じているのかもしれません。
大人でも、夫や妻や子供に対して、謝らなければいけない場面は必ずあります。食事の時間に遅れた、うっかり何かをこぼした、休みの日に疲れてしまって遊びにいけなくなった、、、いくらでもあるでしょう。
そんなときに、「ごめんなさい。許してくれるかな?」と大人が謝る姿を見せるのです。
同時に、「いいよ」「大丈夫だよ」と答えることも大切なことです。謝ることが屈辱ではないのだと、お父さんとお母さんが示してあげてください。
問題行動があって精神科を訪れる子の多くが、親から厳しく育てられた子
「子供のしつけは厳しいほど効果がある」と思っている方が少なくありません。でも、「厳しくすればいい子に育つ」とはとても思えません。
問題行動があって精神科を訪れる子の多くが、親から厳しく育てられた子だからです。
逆に、やさしくされすぎて問題行動が出た子を見たことはありません。
待つというのは5分、10分ではなく、4歳、5歳になったらという姿勢
しつけのキーワードは3つです。
- 穏やかに
- 繰り返し言って
- できるようになるまでゆっくり待つ。
中でも「できるようになるまで待つ」ことはとても重要です。「ごめんなさいを言えない子とは遊ばないよ」と脅すのではなく、「ごめんなさいを言えるようになるといいね」という姿勢で待ってあげるのです。
それは、5分、10分待つというのではありません。今は言えなくても、4歳、5歳になったら言えるようになるかなという姿勢で待つことです。
早くできることがいいわけではない。遅いから悪いわけでもない
早くできることがいいわけではありません。遅いから悪いわけでもありません。ゆっくりと、その子の心の内側で、機が熟すのを待つのです。
果物と同じですね。熟すまでじっと待つことで美味しい実が育つのです。
参考
この内容は、川崎医療福祉大学特任教授、横浜市リハビリテーション事業団参与で、自閉症を持つ人々のための支援プログラム、TEACCH(ティーチ)を米国から日本に紹介するなど様々な経歴をもつ精神科医 佐々木正美先生の「この子はこの子のままでいいと思える本」の要約と一部抜粋です。
本書には他にも、気づきを与え、心を軽くしてくれる、子供の育て方に関する金言がたくさん載っています。
興味を持たれた方はぜひ一度手に取って見てはいかがでしょうか?