ストーリーや物語は人を引き付けることができるという事実を知っている人はたくさんいます。そして、私もストーリーを上手に語れるようになりたいと考えている人もいます。
実際、ストーリーは人の人生を変えることができるものです。それは人間の歴史の中で証明されています。
ですが、それでもそこまでストーリーの力を信じ切れていない。胡散臭いと感じる。私にはストリーを作るなんて無理。という人もいます。
ここでは、そういった人々が陥りがちな思い込みを解いて、人の心をグッと引き付けるストーリーを作る方法について解説しています。
ストーリーに関する勘違い
特別なスキルが必要
ストーリーで伝えると言うと「私は物語を作るのは苦手」「噺家じゃないし」と言う人がいます。このように考えてしまう人は、ストーリーを作るには特別なスキルや才能が必要と思い込んでいます。ですが、それは勘違いです。
ストーリーを作るのに特別なスキルや才能は一切必要ありません。ポイントさえ押さえれば誰もが簡単に作ることができます。
超大作を作らなければいけない
2つ目の勘違いは「超大作を作らなければいけない」という考えです。ストーリーというと、シンデレラ、ハリーポッターなど映画や小説などの長い話を思い浮かべてしまいます。
ですが、ストーリーに長さは必要ありません。とても短いストーリーで人の心を動かすこともできます。
たくさんの情報を伝えなければいけない
ストーリーと情報をごっちゃにしている人がいます。ですが、ストーリーと情報は全く異なるものです。
ストーリーは人の心を動かして興味を掻き立てたり話の世界に引き込んだりしますが、情報は人の心を動かしません。
むしろ、たくさんの情報は人に苦痛を与えるものです。子供にこれ読んでみてと言って、シンデレラの本と分厚い辞書を渡したときの反応を想像してみてください。
シンデレラは興味を引き立てられますが、辞書は拒絶を生みます。
情報で人の心は動きませんが、ストーリーは人の心を動かすものです。
正しくなければいけない
ストーリーを作る時に絶対に正しいことだけを言わなければいけない、嘘をついてはいけないと勘違いしている人がいます。
ですがそんなことはありません。世の中に長年愛されているストーリーを思い浮かべてください。シンデレラ、ハリーポッター、ドラえもん、アンパンマン、ディズニー、、、どれもウソの世界です。現実には存在しないフィクションです。
それらがウソをついているから悪いか?と言われれば決してそうではありません。
もちろん相手を騙して陥れることは論外です。ですが、尾ひれ背ひれをつけて話を膨らませて、相手を楽しませようとする行為は決して悪いものではありません。
人生を決める大事な場で情報を喋る
ほとんどの人が辞書よりもストーリーが好きです。情報には目もくれず、ストーリーを求めます。
ですが、面接や就活、好きな人との会話など、いざ自分が話す立場になると、「どこどこ出身で、どこどこを卒業して、なになにを学び、年収はいくらで、、」という情報ばかりを喋ります。
人はストーリーを求めるのに、自分が喋る側になると情報を喋ってしまいます。そして、私は喋るのが苦手と思い込んでしまいます。
特に、自分にとって人生を左右する大切で重要な場であればこそ、ストーリーではなく情報を話します。
これが大きな間違いです。人生を左右する場で話すべきはストーリーです。
これは人生を左右するセンター試験や筆記試験で感情ではなく情報ばかりを求められた弊害です。面接など人と話すときは情報は通用しないということを理解していない人がほとんどです。
人の心の掴み方
いい会社に就職して、良い身なりをしていて、年収が高いと人の心を掴めると勘違いしている人がいます。
初対面で「私の年収は〇〇〇円です」と自慢げに言ってくる人に心を奪われるでしょうか?むしろ嫌悪感を抱いて相手の心は離れていきます。
そういう人は、実績・身なり・お金 >>>> ストーリー と考えています。 これが大きな勘違いです。
人の心を掴むために必要なのは実績・身なり・お金ではなくストーリーです。
つまり、ストーリー >>>> 実績・身なり・お金 です。
言われればわかりますが、実際はどうでしょう?面接で自分の実績ばかり話していないでしょうか?SNSのプロフィールに自慢ばかりを羅列していないでしょうか?
ストーリーと情報の違い
ストーリーと情報の一番大きな違いは感情を説明しているかどうかです。
例えば上記の例だと、話し手の感情はありません。これはただの情報です。
聞き手は「ふーん」で終わりです。
もちろん、情報をたくさん詰め込めばストーリにーになるわけではありません。
ものすごい量の情報ですが、聞いている側はどうでもいいです。心は全く動かされません。途中から「どうでもいい」「うるさいな」としか思わなくなってしまいます。
たくさんの情報が頭に残るかと言えばそうでもありません。「ふーん」といって終わりです。
ですが、先ほどの「5万円のギターを買った」という1つの情報に次のように感情を加えるとどうでしょう?
「5万円のギターを買った」と言う情報に話し手の感情を加えるとたちまちストーリーに変わります。
聞き手は「そんなに子供のころから憧れるギターってどんなのだろう?」「聞いてみたい!」という興味を掻き立てられます。
これがストーリーの力です。
フィクション・ストーリーの力
フィクションというと所詮作り話でしょ?という反応をする人が多くいます。「ストーリーや伝え方で人生が変わる!」と言っても「本当に??」という懐疑的な人がたくさんいます。
ですが、フィクションのストーリーこそが人類を発展させた力です。
イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリさんが出版した世界的ベストセラー「ホモサピエンス全史」でそのことが証明されています。
ホモサピエンスが最も賢き動物として生き残ってこれたかというと、そこには宗教、通貨、国家というフィクションを作って共有してきたからです。
人が顔見知りで維持できるコミュニティーの人数の上限は150人程度ですが、ストーリーを使えばその上限を遥かに上回ってコミュニケーションを取り合えることができます。
つまり、人類の最強の武器とは、フィクションのストーリーを作成し共有できることです。
「ストーリーや伝え方で人生が変わる!」 というのは既に証明済みです。
人の心がなぜ動くか?(3つのチェックポイント)
ストーリーの作り方を学ぶ上で、そもそも人の心がどうやって動くのかを理解しておく必要があります。
人の心が動くためには通過すべき3つのチェックポイントがあります。
ストーリーはこの3つのチェックポイントをスムーズに通ることができます。
相手の注意を引く
相手の注意を引くときに、「みなさん私の話を聞いてください!」や手をパンパンと叩いて「はい、話を始めまーす」と言うのでは、相手に対して話を聞くよう強要している状態になってしまいます。
ストーリーだとスムーズに相手の注意を引くことができます。
ここではストーリーのすべてを語る必要はありません。伝えるのは「こんな物語があるよ」だけです。
例えば「3年前私はどうしようもない落ちこぼれで、上司からいじめられていました。でも今は〇〇をしています。その中で気付いたことがあります。今日はその話をさせてください」
というと、みんなが「何だろう?」「気になる」という気持ちになります。
人はストーリーが聞きたい
子供はよく「この絵本読んでー」と言ってせがんできます。それは、ストーリーが聞きたいからです。
これは人が共通して持つ性質なので子供に限らず大人も同じです。
「こんなストーリーがあります」と言えば自然と食いついてしまうのが人間です。
「なるほど」と思わせる
2つ目のポイントは聞いている人に「なるほど」と思わせることです。
人は「なるほど」と納得したら行動に移す気になります。「なるほど~!よしやろう!」となるわけです。「全然納得できない、、やる意味もわからない、、よーしやろう!」と言う人はいません。
この「なるほど」と思わせ行動を変えることを感化と言います。
例えば、歌いますと言ったときに「よし聞こう」。この商品ですと紹介されたときに「よし買おう」。それがこのテーマパークですと言われたときに「よし行こう」となるのが感化された状態です。
ストーリーはとても自然に感化させることができます。
持続力を持たせる
ここまでで、人の注意を引き、行動を変えさせることができています。ですがこれで終わりではありません。
相手が変えたその行動や心が持続するかも重要なポイントです。
一度「へえーいいじゃん買ってみよう」と言って買った後も、その人の中でその時の気持ちが持続し続けることが大切です。
「うーん、やっぱりいらないな」とすぐに効果が切れてしまっては広まりません。
情報は持続力が弱いです。これに対してストーリーは持続力が高いという特性があります。
中学校2年生の1学期の成績を覚えている人はいませんが、シンデレラや桃太郎の話はみんな覚えています。おそらく一生忘れることはないでしょう。
ストーリーの持続力は半端ない程に強力です。
情報ではなくストーリーを使えば長期のファンになってもらうことができます。
人がディズニーランドに何度も何度も行きたくなるのは、ディズニーランドがただ夢の国で楽しいだけではありません。一つ一つのアトラクションに物語があるからです。
ふとある時にその物語を思い出して「あーディズニーランド行きたいな~」となるわけです。
土下座して頼み込んでも人の心は動かない
ストーリを使えば、インパクトをドーンと与えて相手を引き付け、気持ちを変え行動に移させ、それを長期的に持続させリピーターになってもらうことができます。
どれだけ必死に土下座して、頭を地面に擦りつけて、泣き叫びながら「お願いします買ってください!お願いします」と頼み込んでも相手は「よし、買おう!」という気持ちにはなりません。
お情けでいらないけど買ってくれることはあるかもしれませんが持続力は一切ありません。むしろそんな人とは一生関わりたくないと考え距離を置きます。
ストーリーの作り方
人の行動を変え持続力のあるストーリーを作るのに特別な才能やスキルは必要ありません。次のステップを踏めば誰でも効果的なストーリーを作り出すことができます。
共感できる主人公を設定する
一番最初にすることは共感できる主人公を設定することです。
物語は平々凡々とした暮らしをしている状態から始めます。
ワンピース
例えば、ワンピースのルフィーもそうです。生まれつきゴムゴムの実の能力があって、世界制覇できるほどの力を持っていたわけではありません。ひょんなことからゴムゴムの実を食べてしまい、最初はすごく弱かったけど、戦いながら成長していったという話です。
エバンゲリオン
エバンゲリオンも同じです。平々凡々とした高校生がある日親父に呼ばれて行ったら、巨大な汎用人型決戦兵器に乗せられたという話です。
スラムダンク
ケンカばかりしている不良が、ある日女性に恋をしてバスケットボールを始めてみたら人格が変わったという話です。
平凡な人がとんでもないことに巻き込まれるから、その話に引き付けられるのです。
本音の感情を見せる
ごくごく普通の主人公を用意したら、次にすることは本音の感情を赤裸々に告白することです。
喜怒哀楽といった様々な感情の中でも、一番効果的なのは葛藤と苦悩です。
ワンピース
ワンピースであれば、ルフィーを助けたシャンクスが腕を失ってしまった。そのことでルフィーが泣き叫ぶという苦悩があります。
エヴァンゲリオン
エヴァンゲリオンであれば「父さん!なんで僕がこんなものに乗らなきゃいけないんだ!」という乗りたくない意志を全開にします。
これが、「シンジ、エヴァンゲリオンに乗れ」と言われたときに「はい!」と言って元気に乗って敵を倒して楽勝だったら何も面白くありません。
嫌がり、苦悩し、負けて葛藤するから面白くなるのです。
なぜ苦悩や葛藤がいいのか?
なぜ苦悩や葛藤を赤裸々に告白するのがいいかというと、聞いている人たちが心の中に苦悩や葛藤を抱えているからです。
平々凡々の一般的な人が苦悩や葛藤を見せることで、聞き手が自分の中にある苦悩や葛藤と重ね合わせだんだんとシンクロしていきます。
また、人間は生まれたときは何もできない状態で生まれます。誰もが漏れなく上手くできないという状態を経験しているので、どんなに凄い人が相手だとしても、苦悩と葛藤は効果を発揮します。
詳細を語る(シーン、キャラ)
聞き手が主人公と自分を重ね合わせたら、相手の気持ちを引き付けるために詳細を語ります。
語るべき詳細は2つあります。
- シーンの詳細
- キャラの詳細
シーンの詳細を語る
シーンの詳細を語るとは、例えば3年間付き合った人に告白する場合に、3年間であった出来事をすべて同列に箇条書きで語ることではありません。
3年間の中のどこか1日の中のほんの一瞬にフォーカスすることです。
1点にのみフォーカスし、その詳細を語ることで聞き手の心はぐっと引き付けられます。
映画のワンシーンのようにここだというところでスローモーションにします。
逆に、すべての期間を均一にして届けるのはやってはいけない行為です。
情報を均一にしゃべったら相手が思う感情は「だから何?」「もういいから黙って」です。心を引き付けるどことか離れます。
キャラクターの詳細を語る
設定したキャラクター(特に主人公)を事細かに描くことで、聞き手が抱く親近感を高めることができます。
例えば、ドラえもんでも「人型の汎用ロボット」と言われたら全く親近感がわきません。何それ?で終わってしまいます。
身近な詳細を付け加える
好物、生活習慣、弱点などの詳細を伝えれば理解が深まります。そしてそれらが身近であればあるほど親近感がわきます。
ドラえもんであれば、「どら焼きが好き」「押し入れで寝る」「ネズミが苦手」なぜなら、「昔ネズミに耳をかじられトラウマがあるから」
これだけで、「人型の汎用ロボット」がとても親しみ深いロボットへと変化します。
身近じゃやないと伝わらない
どんなに詳細に語っても身近でないものは伝わりません。
ドラえもんの好物が「ナノ粒子」、寝る場所が「特殊な培養液が入ったカプセルの中」、苦手なものが「5600Hz帯の電磁波」だと親近感は一切わきません。
詳細は親しみやすくなるために設定するものです。
詳細を描くことで実在できる
なぜ詳細を描くことが必要かというと、それは相手の頭の中にそのキャラのイメージを作るためです。イメージが出来上がるとそのキャラは存在するものとして扱われます。
ドラえもんもそうですがアニメやマンガのキャラは実在しません。フィクションです。ですが、みんなが「ああ、ドラえもんね」と言ってその存在を共有することができます。
それは、ドラえもんがどういう存在か頭の中で詳細を描けているからです。
詳細を語るとは、相手の頭の中のイメージを固めていく作業でもあります。
構成の作り方
平凡なキャラを設定し、赤裸々に感情を告白し聞き手の共感を得て、詳細を語ることで相手の頭の中に存在を確立できたら、次はストーリーの構成です。
人を引き付けるストーリーの構成は既に確立されています。
日常→爆発→新日常の例
例:ドラえもん
構成 | 内容 |
---|---|
日常 | のび太くんの平凡な暮らし |
爆発 | ある日突然、机の中からドラえもんがやってくる |
新日常 | ドラえもんが返った後ののび太は、以前ののび太とは変わった |
爆発的な出来事を経た後、主人公が成長するというのが基本ストーリーです。
例:スラムダンク
構成 | 内容 |
---|---|
日常 | ケンカ三昧のヤンキーの暮らし |
爆発 | 女性に恋してバスケを始めた |
新日常 | 人格変わった |
一番大切なのは日常
ストーリーを作るうえで一番大切なのは最初にくる「日常」です。
日常があるから聞き手は自分とキャラクターをシンクロさせ話に聞き入ることができます。
爆発だけはただの情報
世の中には爆発(大きな変化)だけをとりあげたメディアがあります。それはニュースです。
ニュースは事件しか説明しません。「昨夜未明、〇〇駅で殺傷事件がありました。1人の女性が意識不明の重体となっています」
一人の女性が意識不明の重体になるとは一大事です。ですが、この情報を聞いて心が引き付けられ、涙を流す人はほぼいません。
つまり、爆発に人の心を動かす力はありません。
ここに日常を付け加えることで、人の心が動きます。
「学費を稼ぐために16歳で高校を中退し、昼夜を問わず皿洗いや過酷な肉体労働し続け貯めたお金で通信高校と大学を卒業した よしかさん(仮名)がいました。
よしかさんは幼いときに自分が苦労したから、困っている人たちの力になりたいと、困っている高校生を助けるNPO法人に就職しました。
いつも明るく振舞って決して弱音を見せることなく、みんなのサポートを進んでするようなそんな女性でした。
そのよしかさんが出社2日目の朝、〇〇駅で無差別の殺傷事件の被害者になり、現在〇〇病院で意識不明の重体となっています。」
このように、爆発の前に日常が加わると「えーなんで!」「今じゃなきゃだめなの!」「ひどい!かわいそうすぎる」というように聞き手の感情が大揺れして、涙を流すほどの効果を発揮します。
日常を付け加えたことで、爆発に意味がでてきます。
最後に一番仲の良かった友達が「あの事件から3年が経ち、社会はみんなよしかのことを忘れています。でも私の中ではやっぱりよしかがいた頃とは違うんです。今もまだ心に大きな穴が開いています」
という新日常をくっつけるとストーリーが出来上がります。
これは悲痛ニュースをストーリーにしたので悲しい話ですが、もちろん明るい話や成長も同じ構成でストーリー化することができます。
告白するときも同じです。「好きです!付き合ってください!」だけだと相手の心は動きません。生まれるのは困惑です。
そうではなくて、好きになる前の日常を伝える必要があります。「あなたに出会う前の私は~でした」そこから「あなたに会えたことで私はこうなれました」という詳細を語ることで、相手の気持ちは初めて「なるほど」という状態になります。
最後に「だから、好きです。付き合ってください!」というと相手の心に響きます。
ビジネスで使える4種のストーリー
ストーリーの作り方がわかれば、これをビジネスに応用することができます。
ビジネスでは「商品」「創業者」「目的」「お客様」の4方向からストーリーを作成することができます。
それぞれでターゲットや効果が異なります。詳細については下記をご参考ください。
(参考)ビジネスで使える人の心を動かすストーリーの種類と作り方
ストーリーがない?簡単にストーリーを生み出す方法
いざストーリーを作ろうとしたときに「私には特別な才能や実績なんてない」と言う人がいるかもしれません。
ですが、そんな人でも簡単にたくさんのストーリーを作り出すことができます。詳細については下記をご参考ください。
(参考)【誰でも簡単】目立った実績・才能がない人が心を動かすストーリーを作る方法