初めての子育てでお父さんとお母さんが不安いっぱいになるのは仕方のないことです。わからないことだらけです。
私に子供を満足に育てることができるのか?自分でなんとかやっていけるのか?子供がワガママで言うことをきいてくれなかったら?なかなか泣き止んでくれない子供をどうやって叱ればいいのか?など、悩むことはたくさんあると思います。
そんなありふれた、だけどとても深刻な悩みにヒントを与えてくれる佐々木正美先生の22個の言葉をご紹介します。
- 犬でも猫でも子育てしているのだから、私にだってできる
- 人はみな未熟なのだから、頼り頼られ、迷惑をかけあいながら成長していけばいい
- 心を病む人のほぼ全てが人間関係の障害を持つ。だから精神医療の目的は人間関係を修復すること
- 人間関係の量は大切。頼る人がいる安心感、頼ってもらうことの信頼感。それが親の不安を取り除き子供をのびのびとさせている
- 人間はみな不完全で未熟なまま死んでいく
- 人生はデザインするほど不安だらけになる。思い通りにならない人生を楽しみましょう
- お母さんになってたったの4年はまだまだ初心者。子育てがヘタで当然。わからないことがあって当然。
- 子供をいくら早く早くと急かしたところで、少しも早くはならないもの
- 早くするのは、まず大人
- わが子をかわいいな、いい子だなと感じるのは、くつろぎ、ゆっくりとした時間の中
- 子供を叱ることでプラスになることはない
- 運命とは不公平なもの、それでも前に進むことはできます
- 人間は人間関係を通してしか、人間関係の不足を解決できない
- 相手に喜びを与えるうちに、いつかもっと大きな喜びが自分のところに返ってくる
犬でも猫でも子育てしているのだから、私にだってできる
豊かで自由で平等で平和で医学も進歩して情報も簡単に手に入るのに、うつ病や不安障害に悩まされる人が多く、年間3万人を超える自殺者がいる日本。
戦後の日本が貧しく、平和でなく、差別も不自由も多くあり、食べるものも着るものもなかった時代。その頃だって、お母さんは子供を産み育てていました。
そんな時代を生き抜いた一人の女性の考え方。「犬でも猫でも子育てしているのだから、私にだってできる」
人はみな未熟なのだから、頼り頼られ、迷惑をかけあいながら成長していけばいい
こんなにも豊かな日本で不安な人が多いのはなぜか?安心できないのはなぜか?それは、お互い迷惑をかけず自己責任でいこうという風潮がそうさせているのかもしれません。
互いが迷惑をかけない自己責任重視の社会では、子供や障害者、高齢者はもちろん、子育て経験のない親だってみんな生きずらく不安になります。
「人はみな未熟なのだから、頼り頼られ、迷惑をかけあいながら成長していけばいい」のです。
心を病む人のほぼ全てが人間関係の障害を持つ。だから精神医療の目的は人間関係を修復すること
現代精神医学の礎を築いたアメリカの精神科医ハリー・スタック・サリバンの言葉。心を病む精神病の原因は人間関係。それを治すには、人間関係を修復する術を学ぶ以外に方法がない。
逆に、人間関係が円満であれば、人は心を病むことはない。
会社や学校はもちろん、親との関係も人間関係。夫婦の関係、父と子の関係、母と子の関係の一つ一つが密接にその子の心と関わっている。
人間関係の量は大切。頼る人がいる安心感、頼ってもらうことの信頼感。それが親の不安を取り除き子供をのびのびとさせている
人間関係の「質」に悩んでいる時は「量」を増やすのが一番。頼り頼られる人間関係が増えれば、「私は私のままでいい」「この子もこの子のままでいい」という気持ちにつながっていく。
戦後の豊かでも平和でもない時代、人々は助け合わないと生きていけませんでした。だから、人間関係の「量」だけは十分にありました。
それが親の不安を取り除き、子供をのびのびと育てることにつながっていたのだと思います。
人間はみな不完全で未熟なまま死んでいく
ドイツの社会心理学者エーリッヒ・フロムの言葉。わたしたちはみな不完全だからこそ、安心できる人間関係を必要としています。
日本が豊かになったからと言って、人間が未熟であることに変わりはありません。精神的に安定するためには、自分も含め人間はみな不完全で未熟あることを理解し、安心できる人間関係を作っていくことが大切です。
人生はデザインするほど不安だらけになる。思い通りにならない人生を楽しみましょう
現代の日本は、自分の人生を計画的に思い通りにコントロールしようという思いが強いです。「2人目、3人目を生むべきか?」「仕事に復帰すべきか?」という悩みを持っている人は少なくありません。
どう生きるか選択をし、目標に向かって努力することがいい人生だと考えている人が多いです。でも、その結果、理想通りにいかなかったとき「自分の人生は失敗だった」と思うのでしょうか?
だとすれば、人生はデザインすればするほど不安なものになります。
佐々木正美さんが高校を卒業したとき、日本はまだ戦後の貧しさの中で、家には大学に行くお金はありませんでした。そのため、東京に出て信用金庫で働き、お金が貯まったら進学しようと考えました。「何がなんでもそうしなければ」とも「お金がたまらなかったらどうしよう」とも思いませんでした。そして、職場の人に支えられながらも6年働き、お金が貯まったので大学の医学部に進学しました。
大学では学費滞納者としてよく名前が張り出されましたが、なんとか卒業することができました。結果として児童精神科医という仕事を得ることができました。
でも、もしそうでなかったとしても自分の人生が不幸だったとは思えません。信用金庫で得られた人間関係がかけがえのない財産になったように、それ以外の場所でいろんな出会いがあっただろうと思うからです。
予定どおり、時間どおり、スケジュールどおりでデザインした通りの人生を歩むことはそうそうできません。小さな子どもがいればなおさらです。人生を限定せず、自分の与えられた運命を「まあ、いいか」と受け入れて、その中で誠実に生きていけば最終的には「これでよかった」と思える人生になるのではないでしょうか。
お母さんになってたったの4年はまだまだ初心者。子育てがヘタで当然。わからないことがあって当然。
赤ちゃんの頃はとても穏やかな子だったとしても、子供はいつまでも赤ちゃんではいてくれません。自己主張をしたりわがままを言ったりするようになります。
そんな子を見て「自分は子育てがヘタだ」「だめなママだ」と思う必要はありません。お母さんになってたったの4年はまだまだ初心者。子育てがヘタで当然。わからないことがあって当然です。
子供をいくら早く早くと急かしたところで、少しも早くはならないもの
子供というのは、いくら早く早くと急かしたところで、少しも早くはならないものです。そもそも「早く」や「いい加減にしなさい」「ダメ」というのは具体性がないため、子供には伝わりにくい言葉です。そう言われたところで子供はどうすればいいのかわかりません。
親が最初に身につけるべきことは待つことです。「早く」や「ダメ」ではなく「〇〇したらいいんだよ」と何をすべきか教えてあげることが必要です。
「ズボンはけたね。じゃあ、次は上着を着ようか」と言った感じです。もしどうしても急ぐのであれば、親が手伝ってあげればいいのです。
早くするのは、まず大人
朝時間がなくて「早く早く」と子供を急かしても子供は決して早くなりません。そんなに時間がないならもっと早く起きるのがいいと思います。起きれないなら早くねる必要があります。
早くするのは、子供ではなく大人の方です。
わが子をかわいいな、いい子だなと感じるのは、くつろぎ、ゆっくりとした時間の中
子育てするときは、少しも急がない時間を作ってあげることが大切です。例えば、お風呂にゆっくり入る。髪や体を洗うのなんてサボってもいいので水鉄砲などお風呂におもちゃを持ち込んで遊ぶ。寝る前に、子供の気がすむまで絵本を読んであげる。
そんなゆったりした時間があると、昼間の慌ただしさで失ったものを少し取り戻すことができます。
特に、上の子には、ママを独り占めする特別な時間が必要です。下の子がお昼寝したあとは、上の子にゆっくりと絵本を読んであげるのもいいでしょう。小さなおやつを用意すると喜びます。
わが子をかわいいな、いい子だなと感じるのは、くつろぎ、ゆっくりとした時間の中です。
子供を叱ることでプラスになることはない
子供を叱らないで子育てしましょう。「もう△△だから〇〇してね」とも言わないのです。
泣き出さないと止まらないのであれば、やさしく抱きしめて落ち着くまでずっと抱っこしてあげるのです。
叱るというのは、その都度、子供の人格を否定することになります。取り返しがつかないものになる場合もあります。子供を叱ることでプラスになることはありません。
そして、叱る時間が減ると、今よりもっと子育てがしやすくなります。
運命とは不公平なもの、それでも前に進むことはできます
親や祖父母に可愛がられたことがなく、優しい言葉もかけてもらった記憶がない。大切にしてもらったことがないから、私には人を大切にできる自信がない。だから、子供を平等に愛してあげられるか不安という方がいます。
でも、人にはそれぞれ、持って生まれたものがあります。容姿、体型、健康状態、経済的な豊かさ、生まれる国、平和かどうかも。人はみな千差万別で不公平でわたしたちは選ぶことはできません。
そして、与えられなかったものがどんなに大きいとしても、そこに心を奪われているばかりでは、前に進むことはできません。大切なことは、恵まれなかったものをどう補っていくかです。
運命とは不公平なものそれでも前に進むことはできます。親から言われたかった言葉を子供に伝えられるのはあなたです。決意しましょう。
人間は人間関係を通してしか、人間関係の不足を解決できない
どんなに強く望んだとしても幼い頃に不足した愛情が、今更親から与えられることはないでしょう。けれど、代わりに別の人から与えてもらうことはできます。
親が子に与えるような無条件の愛情ではありませんが、自分が何かを与えることによって、相手から何かを与えてもらい、心が満たされることはできるのです。
自分の好きなことで人と関わってください。手芸が好きなら手芸を。歌が好きならコーラスを。山歩きのサークルや料理教室でもいいです。その会に参加して人との交わりを深めましょう。
その中で、誰かの役に立ったり、感謝されたり、何気ない言葉を交わして経験を積み重ねていくことで、きっと満たされていきます。
最初は気を使ってしまい、一人でいるほうがよかったと思うこともあるかもしれません。けれどそれは、相手からも気遣われているということです。
時間が経つにつれ、満たされることの温かみがわかってきます。人間は人間関係を通してしか、人間関係の不足を解決できないものです。
相手に喜びを与えるうちに、いつかもっと大きな喜びが自分のところに返ってくる
自分が愛情を与えてもらえない環境にいるのであれば、なおさら、「まずは私が相手に喜びを与えるのだ」と思ってください。わが子に対しても同じです。
相手に喜びを与えるうちに、いつかもっと大きな喜びが自分のところに返ってくるのです。
特別なことはいりません。家族の好きな食事を用意するのがてっとり早いでしょう。高価な食材やぜいたくなメニューという意味ではなく「あなたの好きな〇〇を作ったよ」と。それがいいのです。
すぐに成果はでないかもしれませんが、何週間、何ヶ月、何年もかかっていい方向に向かうものだと思ってください。
昨日より今日、今日より明日という気持ちで続けていけば、あるとき穏やかな心を取り戻していることに気がつくでしょう。
参考
この内容は、川崎医療福祉大学特任教授、横浜市リハビリテーション事業団参与で、自閉症を持つ人々のための支援プログラム、TEACCH(ティーチ)を米国から日本に紹介するなど様々な経歴をもつ精神科医 佐々木正美先生の「この子はこの子のままでいいと思える本」の要約と一部抜粋です。
本書には他にも、気づきを与え、心を軽くしてくれる、子供の育て方に関する金言がたくさん載っています。
興味を持たれた方はぜひ一度手に取って見てはいかがでしょうか?