多くの親が子供のことを愛し心配しています。そして、よかれと思ってあれもこれも世話をしています。
ですが、この「よかれと思って」はおせっかいで余計なことです。(おせっかいとは他人の問題に首を突っ込むことです)
このおせっかいが子供の成長を妨げ、将来的に子供を不幸にします。
また、おせっかいは子供の成長を妨げるだけでなく、あなたの時間を奪い、不安、心配を掻き起す原因にもなっています。
ここでは他人の問題に首を突っ込む弊害について、具体例を用いてまとめています。
問題があるのは子供ではなく親
ある夫婦が言うことを聞かない20歳の娘のことで思い悩んでカウンセラーに相談に行きました。
夫婦は「娘は自分に問題があると思っていない。娘を治して欲しい」と伝えました。
カウンセラーが詳しい話を聞いたあとで次のように結論付けました。
娘さんの言う通りです。娘さんには何の問題もありません。
問題があるのはあなたたち夫婦の方です。あなたたちがお金を払い、悩み、心配し、あれこれ世話をやいています。
本来娘さんが抱えるべき問題を、あなたたちが横取りしています。
手助けは相手のためにならない
手助けが相手のためにならないことを示すわかりやすい例に、渡り鳥とおじいさんの話があります。
渡り鳥とおじいさん
ある人里離れた山奥の小さな湖のほとりに、白髭を生やしたおじいさんが住んでいました。
ある年からその湖に白い渡り鳥と黒い渡り鳥が来るようになりました。
おじいさんは白い渡り鳥を幸運の鳥と思い、白い鳥をとても大切にかわいがりおいしいパンを与えるようにしました。
黒い鳥は不吉の象徴だと考えたのでエサを与えず追い払いました。
白い鳥は毎年やってきてはおじいさんの元に来てパンを食べました。
黒い鳥は仕方なく湖に潜って自分でエサをとるようにしました。
最初は全然上手くとれませんでしたが、徐々に上達してエサを取れるようになっていきました。年を経るごとにエサをとる能力は上がっていきました。
それから5年が過ぎたとき、おじいさんは体調を崩して亡くなってしまいました。
おじいさんが亡くなったその年も、白い鳥と黒い鳥はいつものようにその湖に来ました。
白い鳥はパンをもらいにおじいさんの家にいきました。ですが待っても待ってもおじいさんは出てきません。
その年は酷い寒波がきていて、白い鳥たちは凍えながら待ちました。やがておじいさんを待つことを諦め湖で魚を取ろとしました。
ですが、上手く捕まえることができず、白い鳥たちはみんな死んでしまいました。
一方、黒い鳥たちはいつもより寒いことでエサをとるのに少し手間取ったものの、これまで培った技術で生きていくだけのエサを十分にとることができました。
そして、これまでとほとんど変わらずに暮らすことができました。
白い鳥にとっておじいさんは優しく、大切な存在でした。おじいさんも白い鳥に優しく大切にしました。
ですが結局、白い鳥に待ち受けていたのは悲惨な死です。たくましく自分らしく生き残ったのは黒い鳥です。
果たしておじいさんがしたことは賢い選択だったでしょうか?
相手との間に壁を作る
子供が自立して歩むためには、子供が自分が抱える問題を認識して、自分で乗り越えていく必要があります。
そのためには、親と子供の境界線を明確にする必要があります。
境界線を明確にするとはお互いの間に干渉できない壁を作るということです。
この壁をつくることがいかに大切かは、「隣人の青い芝」という話を聞くと理解しやすくなります。
隣人の青い芝生
ある綺麗な郊外に住んでいる夫婦がいました。その地域の住宅はどの家も芝生を持っていました。
その夫婦の隣人は芝にまったく水を上げない人でした。ですが、隣の人の芝はいつも青々としていました。
一方、夫婦は毎日仕事に行く前に スプリンクラー(水やり器) の水をきちんと出していくのに、芝が枯れそうになっていました。
というのも、夫婦のスプリンクラーは水の勢いが強すぎて、自分たちの芝ではなく隣の芝に水をかけていたためです。
隣人は隣の家のスプリンクラーから水がきていることを知らず「今日も調子がいいな~」としか考えていませんでした。
この夫婦は「芝生のために、毎日スプリンクラーを使う」という努力をしています。ですが、それは無駄な努力になっています。
そして隣人はいつまで経っても水やりの習慣を身に付けることはありません。
解決策は壁を作る
自分たちの芝生が枯れ、隣人の芝生が青くなる問題を解消するには、隣人の家との間にしっかりとした壁を築くことが必要です。
隣人の家と自分の家の間に明確な線を引いて、物理的に切り離すということです。
こうすると、隣人の家の芝は水やりをしていないために枯れていきます。
一方、自分たちの庭は、水があたる壁際だけ青くなり、水があたらない中心部は枯れていくという問題に気づくことができます。
このように相手との関係に明確な壁を作って干渉しないようにすることで、ようやく自分も相手もそれぞれが抱える問題に向き合えるようになります。
これは親と子供の関係も同じです。親がいつも干渉していて、困ったらお金をくれる、助けてくれる、代わりにやってくれる状態だと、子供はいつまで経っても成長しません。
自分が解決すべき問題と気づくことすらないかもしれません。
あなたが子供に干渉しないよう明確に壁をつくることで、子供はようやく自分が抱える問題と向きあえるようになります。
求められた時にアドバイスする
親がするべきことはなんでもかんでもやってあげることではありません。
高い壁を作って完全に突き放すことでもありません。
子供が自分の問題を認識して、その問題を解決しようと取り組んでいることを、干渉せずに見守ることです。
そして、もし子供から「ここがわからなくて教えて欲しい」と言われたら、そのヒントを教えてあげることです。
あなたが解決してはいけません。解決するのは子供です。
あなたの役割は子供の成長のサポートです。
壁づくりが時間と余裕を生み出す
干渉しないように明確に壁をつくり、困っているときにヒントを出すことは、親と子供の間だけに成り立つものではありません。
上司と部下、夫婦、親戚など全ての人と人の間で成り立ちます。
おせっかいあなたを忙しくする
実は、「相手の問題に首を突っ込む」ことは時間と自由を失う大きな要因の一つです。
本来あなたが抱える必要がないことに首を突っ込むので時間とエネルギーを失って当然です。
おせっかいのことを英語で「busybody」と言います。直訳で「忙しい人」です。そのままです。
おせっかいをしている限りあなたに余裕が生まれることはありません。
明確で越えられない壁を作る
干渉しない壁をしかり立てれば、それまであなたがそのことに使っていた時間や労力、不安、心配がなくなります。
その問題はあなたの問題ではなく、相手の問題になるからです。
干渉せず相談にのるメリット
人はいつも干渉してくる人のことを好きになりません。うっとおしくて嫌い・邪魔だと思います。
一方、困った時に相談してヒントをくれる人のことを好きになり信頼します。
あなたが、子供や親だけでなく、パートナーや上司、部下、親戚など大切な人と良好な関係を築き、時間と心に余裕がある幸福な人生を歩めることを心より願っています。
参考
この記事はAppleやGoogle、FacebookやTwitterなどの世界的に有名な企業でコンサルティング経験のあるグレッグ・マキューン(Greg・Mckeown)氏の「エッセンシャル思考」という本の一部要約と抜粋です。
世界的ベストセラーになったこの本には他にも人生を成功と幸せに導く格言がたくさん載っています。
興味を持たれた方は是非実際に手に取ってみることをお勧めします。