他社の仕組みをそのまま取り入れても意味がない
この世にある全ての企業はミッションやビジョンなどなんのために存在し、何を目的として活動をしているかや、どういう行動を奨励して、どのように売り上げをあげているかが異なります。
にも関わらず、成功している企業がやっていることをそのまま導入すれば、自分たちも成功できると考えている人が少なくありません。
企業文化や取り扱っている製品、販売方法が異なるのに、違う組織の仕組みをそのまま持ってくれば、成果が生まれるどころか、破綻が生まれます。
成功事例を真似たり試してみることは変化を生み出すうえで非常に重要ですが、そのまま使うというのではあまりにも浅はかということです。
企業ごとに目指しているゴールが異なる
他社の仕組みをそのまま取り入れても意味がないのは、そもそも企業ごとに目指しているゴールが異なるためです。
そもそも、全く同じ商品やサービスを提供しようとしているのであれば、別々の企業として存在している意味がありません。
例えばトヨタの生産方式が素晴らしく効率的だからといって、ホンダがそのやり方をそっくりそのまま自社に持ってきたら、ホンダはもはやオリジナルな会社ではなく、トヨタの下請けのような存在になってしまいます。
出来上がる商品は本物を真似た二番煎じでしかありません。
多くの人が仕組みを移植可能な表面的なものと捉えていますが、実際はそうではありません。仕組みは企業の差別化を支える根幹です。
他の企業はどうやっているんですか?には要注意
他社の仕組みをそのまま取り入れても意味がないことを理解していない人の多くは「他の企業はどうやっているんですか?」といった質問を多用します。
これは、自分たちで考えるのは放棄して、他の人たちの方法をもらおうという考え方です。その根底には自分たちのやり方はダメだという考えがあります。
もちろん、他の企業の方法を参考にすることは大切です。ただしそれは、自社のオリジナリティの追求や日々の最適化を促進するためでなければいけません。
自社のミッション(ゴール)から逆算する
仕組みを作る時に最も重要なことは、その企業のミッションやビジョンをベースにすることです。
ミッションやビジョンから逆算をして仕組みを作っていくことで、そのミッションやビジョンを達成するような仕組みやそこに向かっていく仕組みができあがります。
つまり、仕組みだけを輸入してきたところで、その仕組みが何のためかが分からなければ意味がないということです。
大前提として、自分たちが市場に対してどんな価値を提供しているのか?そのためにどんなビジネスモデルを使っているのか?を正確に把握している必要があります。
仕組みはその本質をサポートするためのツールでしかありません。
なんでも仕組み化すればいいというものではない
世の中には、何かイレギュラーなことが発生する度に、明文化して規則を継ぎ足していく企業があります。
「社内規則」と書かれた恐ろしく長いルールブックを持っている企業も少なくありません。
こうした企業の社員は自分の行動を決めるときに、ルールに載っているやっちゃだめ。ルールに載っていないからやってもいいというように、法律の網の目を探すような行動をします。
時代が変化しどんどん新しいモノや情報、サービスが出てくる社会においては、ルールで対応するのでは間に合いません。
国の法律が良い例です。ビットコインなどの仮想通貨や、インターネットなど、明文化しないと行動できないような組織では、あまりにも動きが遅すぎます。
そうではなく、企業が求める人としての在り方を示す必要があります。例えば「チームメンバーへの配慮を欠いてはいけない」という本質的なルールがあれば、それにもとるような行為をすればルール違反といえます。
確かに曖昧ではありますが、各人が意識して行動することで、大きな変化があっても対応することが可能ですし、「書かれていないからやっていい」といったことも起こらなくなります。
言語化された仕組みよりも、「考えればわかるでしょ」という一言で伝わるような企業文化を作る方が大切です。
新規ソフトの導入よりも、手や紙の方が早い場合もある
企業の担当者の中には、新しいモノフリークのように、新しいものをどんどんと導入し、IT化することが重要だと考えている人もいます。
ですが、新しいものを導入するために、かなりの時間を割いたりするぐらいであれば、手を動かしたり、紙で対応する方がシンプルで早いこともあります。
重要なのは新しいものを導入して最新っぽくすることではなく、チームのパフォーマンスを最大化する方法を採用することです。
もちろん、ずっと紙や手でいいということではありません。それよりもいいサービスが登場すればそちらに乗り換えるべきですし、もはやその業務がもたらす効果が引くいのであれば、作業自体を廃止することが重要です。
ツールや方法、仕組みは企業というチームのパフォーマンスを最大化するための手段の一つでしかないことを忘れてはいけません。
自動化・パターン化は最強
とはいえ、業務の効率を上げるために社員が手を動かしてやっている仕事を自動化・パターン化することは非常に重要です。
それだけでより多くの時間を生み出すことができます。そしてより多くの時間を生み出すことができれば、生み出した時間をもっと生産性の高いことに回すことができます。
なお、企業にとって生産性を生みだすために効率の高い方法は次のようになります。
いうまでもなく、自動化やパターン化よりも「やらない」という決断を下す方が、大きなコスト削減につながり、時間を生み出す結果になります。
最適な仕組みはチーム毎に異なる
仕組みを作る上で重要なことは、会社全体で同じ仕組みを使う必要はないといことです。
チームによっては話し合い情報共有することが重要な部署や、黙って黙々とミスなくこなすことが重要な経理のような部署があります。
前者のチームの場合、パフォーマンスを最大化するのは、メンバー同士が顔を向き合って座ったり、手を伸ばせば簡単に触れたり、それぞれが話している内容が耳にはいってくるような環境です。
新しいものをどんどん取り入れて、失敗する仕組みも重要です。
一方、後者のチームの場合、パフォーマンスを最大化するのは、机の配置がそれぞれが個別で余計なものが目に入らない静かな環境です。
ミスがないことを第一として仕組みが重要になります。
このように、チーム毎に必要な仕組みが異なるので、各チームの特性に合った仕組みを導入することが大切です。
すぐに振り返り
仕組みはを取り入れたら、月1回、少なくとも3か月に1回は本気の振り返りが必要です。
振り返りは次のような質問をすることが重要です。
などです。振り返りを実施し、アップデートや必要に応じて廃止をしていく。
このようにして自社に合った仕組みへと変えていくことができます。
なお、振り返りは1か月後など決められたときまで待つ必要はありません。気づいたときに、タイムリーに持ち出して変更をかけていくことが最も効率が良い方法です。
参考
この記事の内容はモルガン・スタンレーやGoogleで人材育成や組織開発を率い、自身も起業家であるピョートル・フェリクス・グジバチさんの著書『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』の一部要約に個人的な見解を加えたものです。
本書は現代の組織に求めれているものは何か?それを得るためにはどうすればいいかが具体的かつ論理的に記されています。
使われている用語は専門用語ではなく、誰にでもわかりやすいものになっていて、例も豊富に乗っている非常に実践的な良書です。
会社を率いている人や部署を率いている人、あるいはマネージャーを目指している人の必読書といえます。
この記事に興味を持たれた方は実際に本書を手に取ってみることをお勧めします。