企業は利益を求めるものです。企業にとってお金とは血液のようなもので、お金が切れれば企業は倒れてしまいます。
だからといって、利益ばかりを追求する企業は社会から見放され潰れていきます。
というのも、企業に対してお金を払うのはユーザーだからです。ユーザーの信頼を失えば、信頼の対価としていたお金が入ってこなくなるのは当然です。
これまでも「ユーザーの信頼」と「利益」を天秤にかけ「利益」をとった多くの会社が潰れてきました。
ここでは「利益」よりも「ユーザーの信頼」を選択した企業の例を示しています。
Googleのユーザーファースト
GoogleクロームやYoutube、スプレッドシート、Google Mapやスマホなど様々な便利ツールを世の中に提供しているGoogleを知らない人はもはや現代にないほどです。
その名前は本拠地のアメリカだけに留まらず世界中で多くの人々が知っています。Googleの資金は小国の国家予算ほどの規模があるといわれているほどです。
そんなGoogleですが、莫大な資金を得るためにやってきたことは利益の追求ではなく、ユーザーの使いやすさの追求です。
例えば、Googleクロームの検索機能の一つにナレッジグラフというものがあります。「IT」のように特定のキーワードを検索したときに、検索結果に辞書のようにその内容を表示してくれるものです。
この機能は、Googleに収益をもたらしたとどこか、広告枠をとってしまうので収益を奪う機能でした。
他にも、パンダアップデートというプロジェクトを実行しました。これは、ユーザーにとって低品質なページのランクを下げて検索結果の下の方においやるというアップデートです。
その結果、ユーザーの満足度よりも広告収益を上げること目的としていたページの順位が軒並み下がりました。広告収益を稼ぎとしているGoogleもその影響を受けて収益が下がりました。
ナレッジグラフもパンダアップデートもどちらもGoogleの収益を下げるものです。ですが、どちらもユーザーの利便性をさらによくし、ユーザーからの信頼を受けることにつながりました。
結果として、これまで以上により多くのユーザーがGoogleクロームを使うようになり、それまで以上の収益を得ることにつながりました。
いくら儲かるのか?では信頼は勝ち取れない
多くの企業では何か新しいビジネスを始めるときに必ず「それをやることでいくら儲かるのか?」を大前提とします。
そしてそれが十分な利益を生まないか、少しでもマイナスになる場合はその提案は即座に却下されます。
「売上」や「利益」ばかりに目を向けていれば、ユーザーの満足を本当に満たすことはできません。
「これをやればユーザーが満足するのに」という確信がデータとして得られている場合は、その結果が直接の売り上げ増加につながらなかったとしてもやるべきです。
一時的に売り上げが下がったとしても、そうして得た信頼やユーザーの満足は将来利益として返ってきます。
利益になる方法をあとから見つける
Googleが無料で世の中に送り出した製品の中にGoogleアースがあります。
Googleアースはキーホールというベンチャー企業が行っていた地図をビジュアル化する技術を元に作られています。
Googleはこの機能を使って開発を進めるためキーホールを買収しました。ですがその買収のとき「この技術でどうやって収益を出すか」については誰も考えていませんでした。
ただそれが非常に面白い技術で実現できれば世の中の多くの人がこぞって使うようになるというイメージを描けたことが企業の買収につながりました。
まさに「ユーザー第一で考えれば、利益はあとからついてくる」の精神です。
その後、Googleアースは無料で世界中の人々に提供されました。あるエンジニアがGoogleアースを欲しがるユーザーはGoogleツールバーという便利な機能も欲しがるに違いないという推測をたて、それを実行したところ、Googleツールバーのインストール数も増え、Google検索を使うユーザー数が増えたことで収益の増加へとつながりました。
このように、まずはユーザーファーストで商品を考えて、後からどうすれば利益できるかを考えると言う方法も、時代に乗り遅れない有効な手段の一つです。
顧客ではなくユーザーを見る
ユーザーファーストで考えるときに間違ってはいけないことがあります。それは「顧客」ではなく「エンドユーザー」を見据えるということです。
そういった状況は、商品を買ってくれる人と、最終的にそれを使う人が違う場合に発生します。
直接的に商品を買ってくれる人だけに目を向けていると、その商品を実際に使ってくれる人たちからの信頼を失っていくことになります。
例えば、GoogleにとってGoogleの広告枠を掲載してくれるのは広告主です。エンドユーザーではありません。
ですがもしGoogleが広告主のことばかり考え、エンドユーザーのことを置き去りにした製品を作っていれば、最終的に商品を使ってくれるエンドユーザーがから見放されます。
エンドユーザーから見放されれば広告主からも見放され、Googleの事業は立ち行かなくなります。
一時は大成功を収めたものの失墜した企業の一つに、アメリカの携帯電話会社のモトローラがあります。
モトローラはその商品を使う人たちではなく、その商品を市場に卸す携帯キャリアを顧客としてそこだけに目を向けた製品づくりをしていました。
結果、とても使いにくい製品が生まれたり、多品種すぎて最終的に携帯電話を使うエンドユーザーに混乱をもたらし、市場での人気はどんどんとなくなっていきました。
実際のユーザーではなく、商品を買ってくれる中間企業のいいなりになった結果、市場から見向きもされなくなったということです。
参考
この記事の内容はGoogleの経営陣 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著「How Google Works ―私たちの働き方とマネジメント」の内容の一部抜粋と要約です。
一国家と同等な資金を持ち、世界中で知らない人はいないほどのGoogleという大成功企業の中で、
- どのような制度が用いられ、どのような人たちが働いているのか
- 人のやる気を引き出し、周りが見たら無理だと投げ出したくなるような事業をどのように達成に導いてきたのか
- 優秀な人材を獲得するための方法
- 採用時にやってはいけないこと
などなど、これからの時代に欠かすことのできない内容がギッシリ詰まった一冊です。堅苦しくなくユーモアがあり読みやすい文体ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。