創業者はガッツ、まともさ、クレイジーさを併せ持つ
企業するガッツと才能のある人は、毎日が圧倒的に不利な状況の中で、これが生死をわける戦いだと理解するまともさと、その中でも自分は絶対に成功できると信じるクレイジーさの二つを持ち合わせた貴重な人材です。
そういった人材をつなぎとめておけるかどうかが、あらゆる企業の成否を分けます。
創業者こそが、企業にとっての心と魂でビジョンを前進させ続ける人です。
創業者は愛着と思いやりが優れている
世の中の企業の創業者よりも、頭のいい大学を出て、海外に留学し、他社でより大きな業績を収めた人がいます。
起業を成功に導きたい投資家や取締役会は、そうしたより優秀な人たちを創業者の代わりに据えようとする傾向があります。
しかし、そういった人たちは大きな見落としをしています。それは、学業成績やビジネスの実績以外に、「企業に対する愛着心」や「従業員に対する思いやり」という評価が抜け落ちているということです。
この二つの要素は、ときに優秀さよりも重要な成功要因になります。
なぜなら、一人一人の優秀な人の集団よりも、お互いが信頼関係にあり、チームファーストで動ける集団の方が強く生き残る確率が高いためです。
このため、創業者が企業というリスクをとった大胆さよりも、事業に対して抱いている愛情やビジョンは、その他の欠点を補ってあまりあるほどの価値があるといえます。
解任されそうになったジェフ・ベゾス
現在では世界中で知らない人がいないほどの大企業になったAmazonのジェフ・ベゾスは一時期解任騒動に巻き込まれたことがあります。
2000年頃に、ジェフ・ベゾスは家族と過ごすために休暇をとりました。そして、自分の役割を担う人としてジョー・ガリという人物を雇いました。
ジェフ・ベゾスが休暇から戻ってくると、会社の業績は大きく下がり酷い状態になっていました。
出資者などの取締役会はこの混乱を招いた責任を負わせるため、ジェフ・ベゾスをCEOから解任してジョー・ガリを後任に据えることを検討し始めました。
そして、その結論を出すために数週間にわたる調査を行いました。その結果は次のようなものになりました。
ジェフ・ベゾスがCEOとして留まるべきだ。ジョー・ガリはプライベートジェットや報酬などの特典にやたらとこだわっている。従業員はベゾスを慕っている。
この結果、ジェフ・ベゾスがAmazonのCEOとして残り、結果、世界に類を見ない大企業へと変貌しました。
欠点と愛着とビジョンの男 スティーブ・ジョブズ
Appleを創業し、iPhoneやMacなどの大ヒット商品を生み出して世の中に変革をもたらしたスティーブ・ジョブズは世界中で最も有名な創業者の一人です。
スティーブ・ジョブズは万能で全てに優れていたかといえばそうではありません。ITや技術を愛するエンジニアでもなく、その人格は人を叱責したり、怒りをぶつけるなど最悪な上司といわれるほどでした。
その結果人望を失い一時はAppleから追い出されたほどでした。本人も自分が立ち上げた会社から追い出されたときのことを絶望だったと語っています。
その後、スティーブ・ジョブズがいないAppleは業績がどんどん下がり酷い状態になりました。そのボロボロで酷い状態にも関わらずスティーブ・ジョブズはAppleに戻り、再び指揮をとり大復活劇を遂げました。
これは、スティーブ・ジョブズが自分の創業した会社や事業に対して、深い愛着や並々ならぬ情熱を持っていたからこそ成し得たことです。
スティーブ・ジョブズは、能力の限界やあまりあるほどの欠点を持ちながらも、強烈なまでのビジョンと愛着で企業を成功に導いた代表例です。
会社には心と魂が必要。創業者の仲間になれ
企業の中では、上の役職に就こうとする戦いが勃発することがあります。そして、ときには創業者から社長の座を奪うことを画策すらもいます。
ですが、企業が今後も成長し生き延び続けるために必要なのは「心と魂」です。そして、それを持ち合わせているのは創業者です。
このため、その企業で働き続けたいと考えるのであれば、創業者を敵に回すべきではありません。
創業者を敵に回すことは一時的な成功の代わりに長期的な衰退と滅びを意味しています。
そうではなく、創業者の仲間になるべきです。特定の企業で働くとは、創業者のビジョンに賛同し助けるために行うものです。
企業の中にいる情熱を持つ人々に敬意を払い、守る
創業者が企業や事業に対して抱いている情熱や愛情は、創業者の生き様となって現れます。ですが、その企業のビジョンや使命を実践している人たちは創業者だけではありません。
会社のビジョンや使命、精神を実践する人たちは他にもたくさんいますが、それらは、バランスシートや損益計算書、組織図や業績には現れにくいものです。
そうした人たちは自分の利益よりもチームの利益を優先しがちだからです。いわゆる縁の下の力持ちでもあります。
そうした、会社のビジョンや精神に賛同し命を燃やす人たちこそ、貴重な資産です。
参考
この記事の内容はGoogleのCEOと会長を務めたエリック・シュミットやプロダクト責任者を務めたジョナサン・ローゼンバーグらが書いた「1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」の内容の一部要約と自分なりの解釈を加えたものです。
ビル・キャンベルはAppleのスティーブ・ジョブズやGoogleやTwitterの経営幹部のコーチングを務め、世の中に偉大なリーダーを何人も送り出してきた人物です。
ビル・キャンベルが貫いてきた生き方やそこにまつわるストーリーには、最高のチームを作るためにリーダーやコーチが知っておくべき考え方や行動が宝の山のように詰まっています。
その考え方はビジネスやチームを成功に導くだけでなく、人として幸せに生きるためのより本質的な知恵でもあります。
この記事に興味を持たれた方は、本書を実際に手に取ってみることをお勧めします。あなたの人生をより幸せにし、成功へと導いてくれることは間違いありません。