「個人事業主だけど、事業用の口座から生活費を引き出したらどうなるの?」「事業用のクレジットカードでプライベートな買い物をしてしまった場合の仕訳方法は?」など、個人事業主の方で、このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では、個人事業主が事業用の口座から生活費を引き出した場合の経理処理について、具体的な仕訳例を交えながらわかりやすく解説します。
また、事業用のクレジットカードをプライベートな買い物に使ってしまった場合の処理についても解説しています。
事業用口座から生活費を引き出した場合
個人事業主が 事業用の口座から生活費を引き出した場合 は、経理上の勘定科目を 「事業主貸」 として処理します。
なお、現金として引きだした場合も、プライベート口座に口座振替を行った場合も経理処理は同じです。
例えば、事業用の口座から10万円をプライベート口座に移動した場合は以下のように処理します。
(借方)事業主貸 100,000円 /(貸方)普通預金 100,000円
日付 | 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | 適用 |
3/31 | 事業主貸 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 | 個人の生活費 |
勘定科目の「事業主貸」とは、会社から個人事業主にお金を貸したという意味です。
なお、個人用のクレジットカードで事業用の買い物をした場合、会社は個人事業主からお金を借りた状態になるので、勘定科目は「事業主借」を使います。
「事業主貸」のお金は返却しなければいけない?
勘定科目の「事業主貸」とは、会社から個人事業主にお金を貸したという意味です。
会社からお金を借りているので返さなければいけないのかと思う人もいるかもしれませんが、このお金は返す必要はありません。
個人事業主はプライベート口座とごっちゃになっている人が多いため、帳簿上で事業用のお金と分けて記録さえしておけば問題ありません。
事業用のカードで個人的な買い物をした場合
時と場合によっては、事業用のクレジットカードで個人的な買い物をすることもあります。
この場合も、事業用口座から生活費を引き出したときと同様に、個人事業主にお金を貸した「事業主貸」を使います。
例えば、事業用のカードで、私的な10万円の買い物をした場合以下のように処理します。
(借方)事業主貸 100,000円 /(貸方)未払金 100,000円
日付 | 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | 適用 |
3/31 | 事業主貸 | 100,000円 | 未払金 | 100,000円 | 個人の買い物、○○カード |
クレジットカードで決済をした場合は、銀行口座からの引き落とし(お金が実際に動くタイミング)は後になるため、この時点ではお金の動きはありません。そんなときは勘定科目「未払金」を使います。
クレジットカード決済の経理処理の詳細については下記をご参考ください。
(参考)【確定申告/経理/会計】クレジットカードで支払った決済はどう仕訳けするか?勘定科目「未払金」、個人事業主のプライベート口座
「事業主貸」は経費にならない
事業用口座からの引き出しは 事業の支出ではなく、個人の支出なので、経費として計上できません。
「事業主貸」勘定を使う場合
「事業主貸」勘定を使うのは、上記のように事業用の口座やクレジットカードで、個人的な生活費の引き出しや、個人的な買い物をしたときです。
他には以下のようなものも挙げられます。
- 個人の生活費
- 個人の買い物
- 国民健康保険料、国民年金保険料の支払
- iDeCoやNISAなどの投資
- ふるさと納税などの寄付金
- 生命保険料
- 住宅ローンの返済など
個人事業主のようにプライベート口座と事業用口座の区分けがあいまいだったり、事業用口座で個人的な大きな出費をした場合などに使います。
なお、当然ですが、プライベートのクレジットカードや個人の銀行口座から支払ったものは記帳する必要はありません。
家事按分のやり方
人によっては自宅で仕事をしている場合もあるかと思います。そんなときは事業用とプライベートで家事按分をする必要があります。
例えば、家賃10万円のうち、事業60%、プライベート40%で家事按分しているとします。そして、家賃を事業用の口座から引き落としているとします。
つまり、個人事業主に4万円貸している状態です。この場合の仕分けは以下のようになります。
(借方)地代家賃 60,000円 /(貸方)普通預金 100,000円
(借方)事業主貸 40,000円
日付 | 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | 適用 |
3/31 | 地代家賃 | 60,000円 | 普通預金 | 100,000円 | 家賃の引き落とし |
事業主貸 | 40,000円 |