従業員が入社するまでの手続きは、企業にとって非常に重要なプロセスです。
本記事では、社員の雇用前、雇用決定後、そして入社後に行うべき手続きを解説しています。
採用から入社までの一連の流れをスムーズに進めるためのヒントが満載です。
従業員が入社した際にやること
従業員の入社に伴う手続きは大きく次の3つのステップに分けることができます。
いずれの場合は、基本的に従業員数10人以上の企業が対象となり、10人未満の企業は推奨事項となります。
雇用前にやること
雇用前にやるべきことは次の2つです。
この2つは、個別の従業員に向けたものではなく、事業所で共通の規定(全従業員に適用)です。
どちらも従業員数が10人以上の場合は作成することが義務づけられています。
これらの資料は従業員に直接渡すか、従業員がいつでも見れる(アクセス可能な)場所に保管しておく必要があります。
就業規則とは?
就業規則とは、企業が従業員に対して、労働条件や職場内のルールを定めた規則集のことです。いわば、会社と従業員の間で交わす「就業に関する契約書」のようなものです。
常時10人以上の労働者を使用する事業主は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。
なお、一度作成した就業規則を変更する場合には、労働者の過半数代表者の意見を聴く必要があります。
就業規則に記載される主な内容には次のようなものがあります。
就業規則には次のようなメリットがあります。
給与規定とは?
給与規定とは、従業員の給与に関するルールを具体的に定めたものです。厳密には就業規則の中の1つです。
常時10人以上の労働者を使用する事業主は、労働基準法に基づき、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。そして、就業規則には、給与に関する事項を必ず記載しなければならないとされています。つまり、10人以上の従業員がいる企業は、給与規定を作成する義務があるということです。
就業規則の一部を構成し、賃金体系、昇給・降給、賞与、手当など、従業員の経済的な側面に関する事項を詳細に規定しています。
給与規定を作成することで次のようなメリットがあります。
雇用決定後にすること
採用が決まったらやらなければいけないことは次の3つです。
法人によっては「内定承諾書」を作成して意思確認をすることもありますが、こちらは法的義務はありません。
「雇用契約書」も法的義務があるものではありませんが、後々トラブルになった際に証拠として発行することが強く推奨されています。
「採用通知書」と「労働条件通知書」は会社側から一方的に送付する書類です。「雇用契約書」は会社と従業員の双方で契約を交わす書類です。
なお、「労働条件通知書」と「雇用契約書」を一枚にまとめて「労働条件通知 兼 雇用契約書」とする場合もあります。
採用通知書とは?
採用通知書とは、企業が応募者に対して、選考の結果、採用が決定したことを正式に通知する書類です。
企業が応募者に「あなたを採用します」と明確に伝えることで、採用意思を表明します。労働契約を締結するための最初のステップとなります。
入社日や提出書類など、入社に向けた具体的な情報が記載されており、入社準備を進めるためのきっかけとなります。
労働条件通知書とは?
労働条件通知書とは、企業が従業員を雇用する際に、その従業員に対して、賃金、労働時間、休日、休暇、退職に関することなど、労働条件を具体的に明示する書面のことです。
労働基準法第15条 により、使用者は労働契約を締結する際に、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示する義務が定められています。この義務を果たすための手段として、労働条件通知書が用いられます。つまり法的義務があるものです。
ただし、対象は常時10人以上の労働者を使用する事業主のため、マイクロ法人は作成の義務はありません。
労働条件通知書に記載される内容は、企業によって多少異なりますが、一般的には以下の項目が含まれます。
なお、労働通知書は書かなければいけない内容が決められています。漏れがあると労働基準法違反となるため注意が必要です。
行政のWEBサイトにテンプレートがあるので、それを使って作成することを推奨します。
雇用契約書
雇用契約書とは、企業(雇用主)と従業員(労働者)の間で、労働条件に関する重要な事項を明らかにし、労使契約を交わす契約書です。
2部作成し、2部共に会社と従業員の双方が署名・捺印をし、それぞれで1部づつ保管します。
雇用契約書に記載される主な内容には次のようなものがあります。
雇用契約書を作成するメリットは次の3つです。
- トラブル防止: 労働条件に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
- 権利義務の明確化: 従業員の権利と義務を明確にすることで、お互いの理解を深めることができます。
- 企業イメージの向上: 従業員を大切にする姿勢を示すことで、企業イメージの向上につながります。
また、雇用契約書を作成する際は以下の点に注意してください。
- 法令遵守: 労働基準法をはじめとする関連法令に違反しない内容にする。
- 明確性: 従業員が理解しやすいように、平易な言葉で記載する。
- 完全性: 労働条件に関するすべての事項を漏れなく記載する。
- 最新性: 労働条件に変更があった場合は、速やかに契約書を改訂する。
入社後にやること
入社後にやることは会社側での手続きと、従業員から提出してもらう書類があります。
会社側での手続き
これらは加入の切り替え対象であれば優先定期に手続きする必要があります。
ただし、親族の扶養に入っていたり、短時間勤務、ダブルワークなどの場合は一部手続きが不要な場合もあります。
従業員に提出してもらう書類
新卒採用や中途採用で必要な書類は変わりますが、従業員に提出してもらうものには以下のような資料があります。
これらの書類を収集する期間は決められていません。しかし、初年度は所得税の計算に必要となるため、できる限り早い段階で回収しておくことをお勧めします。
年末調整のタイミングになって急に慌てて回収ということがないようにしましょう。
なお、マイナンバーカードは高レベルの個人情報となるため、他の従業員に見られないようにする、番号閲覧や利用した際はその都度記録が必要といったルールがあります。漏洩した場合に罰則もあるので注意して取り扱ってください。
基礎年金手帳は要らない?
ひと昔前だと入社時に基礎年金手帳も預けるのが一般的でした。しかし、最近ではマイナンバーから調べることが可能なため、基礎年金手帳を預からない事業所も増えてきました。
主な手続き
年金事務所(社会保険)
社会保険(「健康保険」と「厚生年金保険」)の管轄は、最寄りの年金事務所です。
年金事務所で手続きをすると、年金事務所経由で協会けんぽの健康保険に加入することができます。なお、入社後5日以内と定められているため、予め準備しておく必要があります。
なお、組合健保のように似たような業種や企業独自に設立している健康保険に加入する場合は別途手続きが必要です。
ハローワーク(雇用保険)
雇用保険の管轄は最寄りのハローワークです。雇用保険は入社した月の翌月10日までが手続きの期限となっています。
前職で雇用保険に加入していた場合は、退職時に「雇用保険被保険者証」が渡されているので、これを預かりハローワークに提出します。
労働基準監督署(労災保険)
労働基準監督署に対しては、初めて従業員を雇用する場合に加入する必要があります。
市区役所(住民税の特別徴収)
住民税を給与から天引きする特別徴収への切り替えは、従業員の住民票がある市区町村で手続きをします。このため、郵送やeLTAXといったWEB申請システムで手続きすることが基本です。
※法人の所在地ではありません。