日本には雑談をすることを良しとしない文化があります。それは家庭や学校教育で培われたものです。
「授業中は私語を慎みなさい」「食事中は私語を慎みなさい」「誰かが話している時は私語を慎みなさい」など、生きている多くの場面で雑談を禁止されて生きています。
その結果、仕事中には私語を慎むべきだ。仕事中に雑談をするなんて集中していない証拠だと言い張る大人がたくさん存在しています。
「雑談=悪」どころか、「雑談をしないこと=良いこと」いうような間違った風潮まであるくらいです。
ですが、この「雑談=悪」や「雑談をしないこと=良いこと」という考えはあまりにも浅はかです。
というのも、雑談を許さない文化は組織の繋がりを弱め、チームを弱体化させる原因になるためです。
もちろん全ての雑談がいいわけではありません。極力しない方がいい雑談もあれば、集中するべき時も必要です。
ただ、私たちが知っておくべき重要なことは、雑談には「人生を無駄にする低品質な雑談」と、「人生に価値をもたらす人生を変える雑談」の2種類があるということです。
人生を変える雑談
人生を変える雑談とは、その会話をすることで、自分の価値観や何がモチベーションになっているか、あるいは何がモチベーションを下げているかといった自己理解を深めるような会話です。
例えば「今の仕事で一番やりがいに感じてることって何?」といった質問から始まり、「うーんそうだな、お客さんと直接関われることかな」という会話につながったり、「将来やってみたいことってある?」といった質問など、自分の価値観やビジョンを考えることができる雑談が、人生を変える雑談でもあります。
これらは普段の何気ない会話の一つですが、相手が自分の生きる目的や今やりたいと思っていることに気づくことで、その人のモチベーションを上げ、そのモチベーションはチーム全体のエネルギーを底上げします。
こうした雑談は確実に「善」です。どんどんと行われるべきです。
人生を変える雑談が人間関係を築く
人生を変える雑談は相手のことを深く理解しようとする姿勢でもあります。
相手の考え方や価値観にしっかりと耳を傾けると、相手は「私のことを理解しようとしてくれている」と感じます。それは信頼関係へとつながっていきます。
「最近読んだ本で面白いのあった?」
「どこがおもしろかったの?」
「へえ、なるほどねぇ」
という雑談でも、相手が何に興味があり、どう感じたのかということを理解することができます。この雑談のパターンは本以外にも様々なものに応用することができます。
「最近はどんな音楽聞いてるの?」
「特におすすめの曲とかある?」
「どうしてそんなに好きなの?」
「へえ、なるほどねえ」
といた具合です。こちらが相手の興味関心を知るだけでなく、相手は自分が今何に興味を持っているか、どうしてそれが好きなのかという内省するきっかけにもなります。
人生を変える7つの質問
人生を変える雑談につかえる7つの質問があります。質問自体は簡単ですが、その答えは相手にとって深みがあり、自分自身の価値観と向き合うことでもあります。
これらは直接の業務とは関係ないことですが、「自分がなぜ働いているのか?」や「自分がなぜここにいるのか?」「自分の強みや弱みは何なのか」を掘り下げるきっかけになります。
そして、こうした雑談はマネージャーこそ必要としています。
普段から、上司が積極的に人生を変える雑談をメンバーとしているチームは、信頼関係や目的意識を持った強いチームになります。
人生を無駄にする雑談
人生を無駄にする雑談というと、プライベートの話、仕事以外の話と考える人がいますが、そうではありません。
人生を無駄にする雑談とは、業務の進捗や問題点など、仕事の事実だけに注目した雑談です。
「現在の進捗はどのぐらい?」「いつまでにできるの?」「何が足りないの?」という質問から始まる会話は、相手の人生ではなく、仕事に着目したものです。
それらの質問が相手の人生を豊かにしたり、重要な気づきを与えることはありません。
むしろ、それらばかりに捉われていくと、自分が生きている意味や働いている意味を忘れたり、やらなければいけないという恐怖に駆られるようになります。
「タスク」や「期限」「クライアント」「責任」「計画」「売上」という言葉ばかりをやたらと口にしている場合は要注意です。
もちろん仕事を進める上で事実を話す必要がありますが、それらの雑談は相手のためになっていないどころか、相手が本来持っている輝きを奪っていることを理解しておく必要があります。
マネージャーが重視すること
人生を変える雑談と人生を無駄にする雑談から言えることは、マネージャーがメンバー個々のパフォーマンスを引き出すために注意するべきことは、「仕事の進捗ではない」ということです。
それよりも、その人が持つ、モチベーションや信念、価値観、判断基準、強み、弱みなどを理解し受け入れ、相手にも自発的に気づいてもらう事こそが重要です。
人はありのままの人間で全てを受け入れられたときや、自分が大切にしている価値観を明確に把握したとき、どんな逆境にも負けないパワーを発揮します。
参考
この記事の内容はモルガン・スタンレーやGoogleで人材育成や組織開発を率い、自身も起業家であるピョートル・フェリクス・グジバチさんの著書『世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法』の一部要約に個人的な見解を加えたものです。
本書は現代の組織に求めれているものは何か?それを得るためにはどうすればいいかが具体的かつ論理的に記されています。
使われている用語は専門用語ではなく、誰にでもわかりやすいものになっていて、例も豊富に乗っている非常に実践的な良書です。
会社を率いている人や部署を率いている人、あるいはマネージャーを目指している人の必読書といえます。
この記事に興味を持たれた方は実際に本書を手に取ってみることをお勧めします。