広告の中には、広告であることが見え見えで「これ、誰が信じるの?」と感じたり「ウソっぽくて嫌い」という嫌悪感を抱くものがあります。
ですが、それでも多くの企業が大金を投じて広告をばらまきます。
「こんなの逆効果でしょ」と思うかもしれませんが、実は長期的に見ると効果を発揮します。
ここでは、広告など何かを訴えるメッセージが、例え、見え見えであっても効果を発揮する理由についてまとめています。
メッセージは長期的に見ると効果が出る
戦時中には各国で国民を戦争に駆り立てるためにプロパガンダが至る所で用いられていました。
第2次世界大戦中の日本もプロパガンダを大量に配布していました。カッコいい青年が飛行機を運転しているポスターで海軍の飛行訓練性を募集したり、笑顔で中国満州へ繰り出すことを勧めるポスター、戦争中の中で働いている人にフォーカスした教科書など、様々なものがありました。
プロパガンダ映画の作成に大金を投じていたアメリカは、こうしたプロパガンダに本当に効果があるのかと疑問に思い調査を行いました。
その結果、「これは戦争を鼓舞するためのプロパガンダだ」と分かった人がそれを見た場合、全く効果がないことがわかりました。
ところが、2か月後に再度調査を行うと、2か月前にプロパガンダを見た人たちは戦争に対する共感を示していることが判明しました。
つまり「見え見えだ」とわかりながら触れた情報は短期的には効果がないが、長期的に見ると効果を発揮するということです。
これを心理学用語でスリーパー効果といいます。
スリーパー効果とは何か?
スリーパー効果とは、最初は疑ってメッセージを信じないが、時間がたつとそのメッセージだけが記憶に残り信じてしまうという心理効果です。
アメリカの心理学者 カール・ホブランドによって報告されました。
なぜスリーパー効果が発生するかというと、最初は「こうは広告でしょ」と思ってそこで伝えられているメッセージを取り合いませんが、時間が経つとその出典が何だったかを忘れてしまい、メッセージだけが頭の中に残ることで発生します。
例えば、「〇〇っていう話を昔聞いたよ。ただどこで聞いたかは覚えてない」と語るのが、スリーパー効果の一種です。
これは私たちの記憶のメカニズムが、ただの単語やデータは私たちにとっては非常に覚えにくいのに対し、ストーリーなど感情に訴えるものは記憶に定着しやすいために発生します。
メッセージを何度も伝えることが効果を発揮する
私たちにの心理にスリーパー効果が働くため、もし誰かに伝えたいことがあるなら、相手がそれに共感を示さなかったとしても、伝えておくべきです。
その言葉がじわじわと効果を発揮します。現代社会において有効な使い方には次のような例があります。
ミッションや経営理念
企業がもっているミッションや経営理念は、上層部は熟知していることがほとんどですが、末端の社員には伝わっていないことがほとんどです。
「見ておいて」と伝えても、興味がなく仕事や成績に直結するわけではないので見ません。一度伝えたから大丈夫だろうと思っても忘れ去ってしまうものです。
相手が興味を持っていないことを浸透させるのに効果を発揮するのが「メッセージを何度も伝える」ことです。
そうすれば最初は「企業が押し付けようとしている」と感じても、徐々にその感覚が薄れメッセージに共感するようになります。
肯定的な言葉
人は絶望したり、無理だと感じてしまいやすい生き物です。壁にぶつかり心が折れそうになることは1度や2度ではありません。
そうしたときに、日ごろから「できる」「大丈夫」という言葉を伝えていれば、スリーパー効果によりそのメッセージが浸透していき、壁にぶつかってくじけそうになった時に「できる」「大丈夫」と思えるようになります。
プロパガンダに騙されないために
私たちにスリーパー効果がある以上、戦争や暴力、非合理を煽るプロパガンダや、やらせ広告には注意しなければいけません。
スリーパー効果を防止する方法は「出典をセットで覚える」ことです。
スリーパー効果は出典を忘れて、メッセージだけが頭に残ってしまうために起こります。このため、出典をセットで覚えておけば、騙されることはありません。
逆に、出典を忘れた情報には注意が必要です。必ず出典を確かめるようにしましょう。
参考
この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。
本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。
とても分かりやすく、成功したい、幸福になりたい思っている人の必読書です。
この記事に少しでも興味を持たれた方は是非実際の書籍を手に取ってみることをお勧めします。