最近はインターネットの登場や技術の発展により、どんどんと新しい商品やサービスが出てきます。
仮想通貨や電気自動車、スマホ、アプリ、食料、医療などその発展は目覚ましい限りです。
多くの人が世の中の流れに遅れまいと、新しいものをどんどんと受け入れていこうとします。新しいものを進んで受け入れに行く人をアーリーアダプターと呼んだりもします。
一方、時代の流れについていくことをやめた人たちもいます。「もう年だから」という言葉はその代表例でしょう。
時代は目まぐるしく変化しているように見えますが、本当にそうでしょうか?私たち自身や私たちの暮らしはそれほどまでに変化しているのでしょうか?
本質は変わっていない
いきなり結論に入りますが、新しい商品やサービスがたくさん出てきているものの、私たちの本質はほとんど変わっていません。
例えば、現存する最も古いテーブルは約3570年前のエジプト王朝で使われていたものが残っています。ズボンは5000年以上前に発明されたものです。
フォークも2000年以上も前から中国や古代ローマなど様々なところで使われていました。
そのもっと昔から、切り株を椅子にしたり、大きな石はテーブルに、小さく尖った石はフォークとして使われてきました。
つまり、私たちの身の回りにあるものは、全く新しい発明ではなく、アイテムや手段が少しづつ進化してきたにすぎません。
いずれも、食事や睡眠、娯楽や移動といった本質的価値をサポートするものです。
新しいもの=いいものではない
世の中にはアーリーアダプターのように、新しいモノやサービスにすぐに飛びつく人たちがいます。
そういった人たちは「新しい」=「いいもの」だと信じ込んでいます。これは、「新しいもの」に対する過大評価です。
重要なことは「それが私たちの生活を、本質的に豊かにしてくれるかどうか」です。
この観点からいけば「古いもの」=「悪いもの」でもありません。古くても、私たちの生活を本質的に豊かにしてくれるのであれば、それはいいものです。
このため、自分たちの生活の質や、モノやサービスの良し悪しを判断するときに「新しい」「古い」というモノサシで測っていると、重大な欠陥に至ります。
どれだけ新しいもので囲まれる生活を送ったとしても幸せになるとは限りません。
逆に、どれだけ古いもので囲まれる生活を送ったとしても不幸になるとは限りません。
正しくは、新しくても悪いものは悪いし、古くても良いものは良いです。
その新しいものはどんな価値があるか?
どの企業も常に新しい商品を出してきます。昔はiPhone3Gが世の中に出たときに大騒ぎしていましたが、既にiPhone13が発売されています。
Appleフリークは新しいiPhoneが発売される度に、新しいiPhoneに切り替えます。ですが、そのiPhoneはその人たちにとって本当によりいい価値をもたらしてくれるのでしょうか?
もちろんiPhoneはとてもいい商品です。古いものに固執することはよくありません。例えばiPhone6とiPhone12の性能や使いやすさには雲泥の差があります。
iPhone6を持っている人がいたら、今すぐにより新しいiPhoneに変える価値があります。
ただしその時はiPhone6のどこが不便か、新しいiPhoneにすることでどう改善されるのか?という価値を理解した上で変更するべきです。
ただ「新しい」という理由で購入を決定すると、今後も新しいものが欲しくなってしまう「新しいもののワナ」にハマり続ける道を歩むことになります。
この世の中には「新しい」という理由だけで存在している、無価値なものがたくさんあります。
「新しい」の過大評価により、無価値なものにあなたの貴重な時間を潰さないように注意が必要です。
あなたの製品は本質的に何を改善しているのか?
「新しい」を過大評価するのは消費者に限ったことではありません。多くの企業も陥りやすい危険なワナです。
商品を売り出すときに「新しい」「斬新」「過去に類をみない」といった触れ込みで売り出しているモノやサービスがあります。
それらは「新しい」の価値を完全に過大評価しています。
そうした商品は物珍しさで一時的に売れることはあっても、すぐに失速し消えていきます。なぜなら、本質的な価値がないからです。
もしあなたが長期的な成功が欲しいと考えているのであれば、あなたの企業の製品が、人々のどんな本質的行動や欲求を改善するものなのかを考える必要があります。
例えば、食べるをサポートするツールなのか、移動をサポートするツールなのか、コミュニケーションをサポートするツールなのかということです。
その上で、あなたの商品を使うと、それをサポートするためにどのような価値を生み出すのかを考えることが重要となります。
長く存在しているものの価値を考える
「新しい」という理由だけで存在しているものは、時代の流れとともにすぐに消えていきます。
ベンチャー企業が10年後に存続している確率はたったの6.3%、20年後には0.3%という低さがそれを物語っています。
逆に、椅子やコップ、布団のように私たちの身の回りに長く存在しているものは、それらが私たちの本質的な行動を満たしてくれているということです。
新しい商品を考えるときは、「新しいもの」に目を向けるよりも、私たちの身の回りにある「当たり前のもの」の本質的な価値を考えてみる方が、時代の流れに耐える商品を生み出せる可能性が上がります。
参考
この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。
本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。
とても分かりやすく、成功したい、幸福になりたい思っている人の必読書です。
この記事に少しでも興味を持たれた方は是非実際の書籍を手に取ってみることをお勧めします。