この世は不確実で何が起こるかわからないのがデフォルトなため、将来のことを考えるのはとても大変で難しい作業です。
学校のテストのように答えがあるものでもありません。何が正解か不正解かは本人にすらもわからないものです。
このため「将来のことを考えても無駄だ」といって考えることを放棄してしまう人がいます。ですが、それは非常に危険なことでもあります。
ここでは、将来どうなりたいかを考えることの重要性についてまとめています。
将来は入れたもので決まる
なぜ将来どうなりたいかを真剣に考えることが重要かというと、あなたが将来どうなるかは、何をやったかで決まるからです。
アメリカでハーバード大学教授でシンガーソングライターでもあるトム・レーラーの言葉に次のようなものがあります。
人生は下水管のようなもので、何が出てくるかは何を入れるかで決まる。
あなたが下水管の中にゴミを捨てれば、ずっと先の出口からゴミが出てきます。
オレンジジュースとリンゴジュースを入れれば、オレンジジュースとリンゴジュースのミックスが出てきます。
スティーブ・ジョブズは学生のときにカリグラフィ(文字を美しく見せる学問)を学びました、その後ITの世界に入りました。その結果、下水管の出口からカリグラフィとITがかけ合わさった、MacBookやiPhoneなどの製品が出てきました。
将来あなたが何を生み出すか、どんなことができるようになっているかは、全て今何を入れるかにかかっています。
5年先の理想の仕事を考える
下水管の入り口をずっと見つめていては、最終的に何が出てくるのかわかりません。
ですが、下水管の出口から出てきたものを見れば、何を投入したのかが見えてきます。複雑に絡み合っている場合もありますが、分解していけばその原料を突き止めることができます。
将来ビジョンやキャリアもこれと同じです。
「今」を基準にしてやりたいことを考えていては何もわかりません。
今何をすべきかを知るためには、5年後にどんな仕事をしていれば理想的かの答えを出す必要があります。
パっと思い浮かばない場合は、逆に「こんな状態は絶対に嫌だ」というところから考えるのも助けになります。
この方法であれば下水管の中に「何を入れてはいけないか」がわかります。
様々な基準を設けていく方が選択肢が絞られ、理想的な仕事を考えやすくなります。
なお、5年後の理想の仕事を考えることは一番重要です。決して諦めたり、適当に決めてはいけません。
5年後の理想とは下水管の出口、すなわち目的地です。目的地が分からなければそこにたどり着くことはできません。
このことは、アメリカで野球殿堂入りを果たし、ヤンキースの永久欠番を持っているヨギ・ベラの言葉が指し示しています。
目的地がわからないときは、注意した方がいい。おそらくそこにはたどり着けない。
人に自分の得意な事を聞く
理想の仕事を考える上で重要なことがあります。それは、自分の得意なことや特殊能力を活かすことです。
自分の得意なこととは「特に気負うこともなく当たり前にできること」なので、自分では見つけにくいことがほとんどです。
あなたが得意になりたいことではないということに注意してください。
このため自分が何が得意なのかを知るためには、自分のことを知っている知り合いに訊ねてみるのがもっとも効果的です。
これまで生きてきた中で自分に自然と備わっている能力を活かさないと人生は苦しくなります。逆に、その能力を活かせたら大きな成功を掴みやすくなります。
アメリカで有名な投資家 ウォーレン・バフェットも次のように言っています。
自分の能力の輪がわかっているなら、そこに留まっているのがいい。その輪がどのくらい大きいかはそれほど重要ではない。
しかし、その輪がどこで終わっているかを、正確に知ることはとても大切なことだ。
その仕事につくための履歴書を考える
理想的な仕事が見つかったら、その仕事に就くために必要な能力が何かを考えます。
有効な手段は、その職種に応募し合格率を極限まで高めることができる履歴書を考えてみることです。
「私には〇〇と〇〇の能力があります」「私には〇〇の経験があります」「私には〇〇の実績があります」ということが思いつけば、その〇〇こそが今のあたながやるべきテーマです。
あなたの下水管の入り口に〇〇を入れていくと、将来下水管の出口から、それらが合わさったものが出てきます。
結論が「今の仕事」になったら考え直す
もし将来の理想的な仕事を考えた結果、その結論が「まさに今の仕事だ!」となったら、それは、あなたの野心が小さすぎるということです。
現状の仕事の中でも、より良くできることは必ずあるはずです。足りていない部分、こうだったらいいのにと思う部分、そういったものを徹底的に洗い出していきます。
目標は少し背伸びしたぐらいがちょうどいいものです。
どうしても見つからない場合
どうしても5年後の理想像が思い描けないという人は、今興味があることに没頭するというのも有効な一つの手段です。
自分が興味を持ち情熱を持って取り組めることというのは人生においてそれほど多くはありません。
そして、それをやれば将来、下水管の出口からは、自分の興味を持っているものが合わさって出てきます。
スティーブ・ジョブズは大学でカリグラフィ(文字を美しく見せる学問)を学びましたが、それが将来自分に役立つというビジョンはその当時は描けていませんでした。
ただ、興味があったからのめり込んだと語っています。
大学時代に興味あるものに情熱を持って取り組んだ結果、最終的に下水管の出口からMacBookやiPhoneなどの素晴らしい製品が出てきたわけです。
なお、スティーブ・ジョブズはこのことを、コネクティング・ドット(黒点をつなぐ)と呼んでいます。
最初は何の繋がりがあるかもわからない、ただの黒い点ですが、点が増えていくとそれが結びついて、線になっていくという考え方です。
嫌いなものをやってはいけない
「興味があり情熱を持てることをやる」と似た大切なルールに「嫌いで情熱を注げないことをやってはいけない」があります。
生理的に受け付けない事や、心から嫌いなことを我慢してやっていると、あなたの下水管にはそれがどんどんと取り込まれて行きます。
その結果、将来下水管の先から出てくるものは嫌いなものが交じり合ったものです。そんなものにワクワクしたり希望を抱けるわけがありません。
大嫌いだけど我慢してやっていれば、きっと全く別の素敵な仕事に出会えると考えている人は要注意です。大嫌いな仕事を我慢してやった先にまっているのは、大嫌いな仕事をこなす能力と、それがかけ合わさった能力です。
結果として、その先の将来もずっと大嫌いなことをやらなければいけない人生を歩むことになります。
それは、自分の人生や過去に絶望を抱くことになってしまいます。
もしあなたが、今の仕事や勉強などを大嫌いだと思っているのであれば、真剣にその道から離脱することを考えてください。
全く新しいことを始めるのは骨が折れてとても大変なことですが、将来下水管の出口からは、必ずそれが混ざり合ったものが出てきます。
大丈夫!あなたならきっとできます。
参考
この記事の内容はGoogleの経営陣 エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著「How Google Works ―私たちの働き方とマネジメント」の内容の一部抜粋と要約です。
一国家と同等な資金を持ち、世界中で知らない人はいないほどのGoogleという大成功企業の中で、
- どのような制度が用いられ、どのような人たちが働いているのか
- 人のやる気を引き出し、周りが見たら無理だと投げ出したくなるような事業をどのように達成に導いてきたのか
- 優秀な人材を獲得するための方法
- 採用時にやってはいけないこと
などなど、これからの時代に欠かすことのできない内容がギッシリ詰まった一冊です。堅苦しくなくユーモアがあり読みやすい文体ですので、ぜひ一読されることをお勧めします。