【売る方法】お客に意志を表明せることの重要性|言わせる・書くの力。一貫性の原理を使ったフット・イン・ザ・ドアとは何か?

ビジネス
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商品やサービスを売っている販売員やビジネスマン、個人事業主の人は必ず次のようなお客さんにあたったことがあるはずです。

「買うのか買わないのかが曖昧ではっきりしない」「買う意思が曖昧なだけでなく、次回の打ち合わせ日程なども不明確」といった人たちです。

人の性質として自分で決断を下したくないという心理があります。なのでこういった反応をしてしまうのは人なら仕方のないことでもあります。

ですが、マーケティングの手法を上手に使うとこういった人たちにモノやサービスを購入してもらうことができます

ここでは、人が持つ性質の一つである「一貫性の原理」を利用したフット・イン・ザ・ドアという手法を紹介しています。


コミットさせる(「はい」を表明させる)

「断られたら嫌だ」という気持ちを持っている人は「買うご予定がありますか?」といったようにお客さんに商品を買う気があるのかをなかなか尋ねられない場合があります。

ですが、それをしていると多くの場合商談を逃します。

ある自動車ディーラーで販売促進の講演会を主催している中古車販売のマネージャーは契約を結ぶために次のようなアドバイスをしています。

契約を結ぶためのステップ
  1. 価格が適切なら今すぐこの車を買う気があるか答えさせる。
  2. お客を契約書の前に座らせる。
  3. お客に「はい」と書かせる。
  4. 頭金を払わせる。

重要なことはまずそもそも買う気があるのか確認することです。

ここで「はい」を引き出すことができれば、その後は比較的スムーズに進みます。

お客さんが急に尻込みしてやっぱりやめましたとならないようにするポイントは、小さな「はい」を積み重ねていくことです。

小さな「はい」を積み重ねることは契約の流れとしてとても自然です。この自然な流れを作って、いかにお客さんをコントロールするかが重要です。

小さな「はい」はコミットといいます。英語の訳は「責任を伴った約束」です。

プロミス(Promis)も約束という意味ですが、プロミスには責任を負うというニュアンスはありません。コミットとは相手に対してそれをやる責任を負うということです。

コミットには迷いがあっても構いません。とにかく大事なのは「はい」と公言させる、あるいは書類に「はい」と書かせることです。

point
  • まずは購入する意志があるのかを尋ねる。
  • 小さな「はい」を積み重ねると自然な流れで契約にたどり着く。


フット・イン・ザ・ドア

小さな「はい」を積み重ねるて最終的に商談をまとめる手法をフット・イン・ザ・ドアといいます。

フット・イン・ザ・ドア(foot-in-the-door)は直訳するとドアに足があるという意味です。これは訪問販売のセールスマンが「お話だけでも」と言ってドアに足を挟み込む行動からきています。

最初に「話しぐらいは聞いてあげるか」という小さなイエスを生んでしまうと、その後にイエスといいやすい心理が生まれます(「一貫性の原理」といいます)

セールスマンはその後も小さな要求でイエスを積み重ねていき、最終的に商談までもっていきます

マーケティング「手法」の一つなので末尾にtechniqueをつけて Foot-In-the-Door-Technique。略してFIDTと呼ばれたりもします。

point

最初は小さな「はい」から始めて、要求を段階的に強めていくことで、自然により大きな要求に合意させることができる。


「元気におすごしでしょうか?」でもいい

小さな「はい」を積み重ねるとは必ずしも相手に「はい」と言わせなければいけないわけではありません。

やりたいことは相手にコミット(意思表明)をさせることです。

何を意思表明させるか売っている商品やお客さんに求めている行動にもよります。

例えば「元気におすごしでしょうか?」という質問で「はい」や「元気です」「まあそれなりに」という回答を引き出すこともコミット(意思表明に)なります。

そしてこの「元気におすごしでしょうか?」という質問を最初にしただけで、そうでない場合に比べて商品が売れる確率が約2倍に跳ね上がったという研究結果があります。

その商品は何かというと、飢餓救済協会のクッキー販売です。

研究者のダニエル・ハワードはクッキーの売れ行きを調べるために、ランダムに選んだ人の家に電話し次の2パターンの売り方をしました。

パターン1

「飢餓救済協会の者ですがお宅までクッキーを売りに伺ってもいいでしょうか?売り上げは貧しい人たちへの食事の提供に使わせていただきます。」

パターン2

「こんにちは。飢餓救済協会の者ですが、元気にお過ごしでしょうか?」(回答を待つ)

「お宅までクッキーを売りに伺ってもいいでしょうか?売り上げは貧しい人たちへの食事の提供に使わせていただきます。」

パターン1とパターン2の違いは冒頭で「元気におすごしでしょうか?」という質問をしただけです。

クッキー販売の了承率はパターン1が18%、これに対してパターン2は32%でした

なおパターン2の冒頭の「元気にお過ごしでしょうか?」という質問をしたところ90%(120人中108人)が「元気です」「まあまあです」と返しました。

質問承諾率
商品を直接売りこむ18%
冒頭で元気か尋ねる32%

これは、最初に自分が元気であることを表明してしまったため、自分より貧しい人たちへの施しを断りにくい心理が働いたためです。



なぜコミットに効果があるのか(一貫性の原理)

中古車販売の講演会や飢餓救済協会のクッキー販売もそうですが、なぜこれほどまでにコミット(意見表明)させることが重要なのでしょうか?

そこには人の性質の一つである「一貫性の原理」があります。

「一貫性の原理」とは自分が何かを表明した場合、意識せずにその通りになるように行動する心理のことです。

つまり、カーディーラーの店員に「買うつもりはありますか?」と聞かれ「はい」と意志表明した時点で、自分が車を買うつもりの人になり、それに合った行動を自然にするようになります。

「お元気ですか?」と聞かれ「元気です」と答えたら、自分は元気であるというコミットです。その後で、「売り上げは貧しい人たちへの食事の提供に使わせていただきます」と言われると、元気な自分が、より苦しい立場にいる人に何か施しをしなければいけないという気持ちになります

自分で言った「元気です」を行動でも守ろうとするということです。

ポイントは一度「はい」と言ってしまったり、何かをコミットしてしまうと、自分の中で自然とそうあろうとする気持ちが生まれ、今後、それに反した行動をするには意志力など労力が必要になることです。

大半の人は自分の中から湧き出てくる義務感のような感情に抗うのが大変なため、楽さを優先して一貫であろうとします。


参考

この記事の内容はアメリカの有名な心理学者 ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の内容の一部抜粋と要約です。

現代のマーケティングで使われている手法が心理学の面から解き明かされ、たくさんの事例を交えてわかりやすい文章で記されています。

この本の内容を細かく知っているかどうかで、現代の市場に隠されているたくさんのワナにハマりカモになるのか、それを避けて利用する側に回れるのかが大きく分かれます。

気になった方は是非手に取って読んでみることをお勧めします。



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