この世の中には情報が溢れかえっています。書籍だけでなく、インターネットで各国のサイトに行けば様々なデータが過去何十年分にも渡って閲覧可能になっています。
一人一人の消費者の声や、具体的な使い方、細かいネガティブな点など、様々な情報が入手可能です。
多くの経営者や、マネージャー、消費者がより正しく賢い決断を下すためにたくさんの情報を手に入れようとします。
一見すると正しいように思えますが、実は大きな間違いを含んでいます。
ここでは、情報を集めすぎることの愚かさについて解説してます。
情報を集めすぎると決められなくなる
仮にあなたが、ロードバイクを購入しようと考えたとします。
楽天市場にいって、検索をかけるとロードバイクが山のように出てきました。2スクロールほどしところでパッと見、いいなと思う商品がありました。
しかし、他にもっといいものがあるかもしれないと思い、他の商品を一つ一つ見て、自分の好きなデザイン、耐久性、コスパ、口コミなどあらゆる情報を調べました。
あまりの商品の多さに決めかねてしまい、いったん楽天を離れてAmazonに行きました。そこには楽天以上に品数が多いロードバイクが出品されています。
口コミがいいものもいくつもあります。更に判断材料を得ようと、それぞれのロードバイクを紹介しているブログを見に行きました。
それぞれの持ち主が自分のロードバイクのいいところを主張しています。
この日は、調べるので疲れてしまい、一旦寝てまた明日調べることにしました。
2日目にたくさん調べて良さそうな情報にたどり着きました。狙いを定めた自転車を賢く買うために、メルカリとヤフーオークションなどの中古商品を見ることにしました。
走行距離、製造年、キズ、カスタムなど様々な商品が出回っています。さんざん悩んだあげく、1週間後に最高の商品、最も安い価格で買うことができました。
あなたはとても満足しています。
ところが、ここにはとても重大な落とし穴があります。それは、1週間という莫大な時間を消費したということです。
確かに、満足した買い物になっていますが、1週間あれば他の仕事をしたり、スキルアップするなど様々なことに時間を使えます。時給1000円で毎日8時間バイトをすれば5万6千円貯まります。
果たして、メルカリやヤフオクで細かい情報を調べ上げて最終的に選んだものは5万6千円以上の価値があったのでしょうか?
最安値の新品と比べて安くなったのはよくても数千円~2,3万円といったところでしょう。そうすると、単純に時間をすごく無駄にしただけです。
今回は良い商品に出会えましたが、いつでもそうなるとは限りません。悩みに悩んだあげくどれがいいか判断できず、買えない状態が続くことも少なくありません。
「ロードバイクを買って、外を走る」という目的があったのに、情報を集めすぎたせいで、それを達成できなくなったか、大幅に遅れてしまったわけです。
正確な情報=必要な情報ではない
アルゼンチンの作家 ホルヘ・ルイス・ボルヘスは、正確さを求めることが常に重要とは限らないことを面白い例で紹介しています。
私たちにとって地図はとても役立つものです。情報はできる限り正確な方がいいと考えるでしょう。
通常の地図の縮尺は1/10000といったようにかなり縮小されていますが、より正確さを求めるために、1/1の縮尺の地図を作ったとしたらどうでしょう。
とても巨大で、あたかも本当の街のようです。
そうです。それは実際にその町にいるのと何も変わらないのです。つまり、ものすごく正確で作成に時間のかかった1:1の地図は、その意味を全く成さないということです。
このように「情報が多ければ多いほどい決断が下せる」と勘違いしてしまうことを「情報バイアス」といいます。
目的と基準を明確にする
現代のような情報過多の時代において、何かを決めるときに重要になるのは「目的」と「基準」を設定することです。
目的を明確にする
例えばあなたが地図を見たいと思ったとき、その目的はなんでしょうか?
もし「旅行の経路を把握したい」というのであれば、小さな地図が一つあれば十分です。定規で距離を測って平均的な走行速度で割れば、だいたいの時間がわかります。
精密で大きな地図は必要ありません。むしろ、地図である必要すらありません。カーナビで調べるのでも、人に聞くのでも問題ありません。
そうではなく、「正確な地図が欲しい」というのが目的になってしまうと、1:1のより正確な地図が欲しくなってしまいます。
どのような目的を持つかで必要になるものは大きく変わります。
そして、明確な目的をもったことで何が必要かを判断で何が不要かを判断することができます。
「ロードバイクが欲しい」ではなく、「スピードの出る自転車で、来月、車道を走りたい」という目的が明確になれば選ぶことに余計な時間をかけなくなります。
基準を設ける
目的を明確にしたら次は「基準」を設けることが重要です。
楽天やAmazonなどの商品の絞り込みでもそうですが、「〇〇円以上」「〇〇円以下」「サイズは〇〇」「色は〇」といったように最初に基準を設けてしまえば、選択肢の幅はかなり狭くなります。
選択肢の幅が狭くなれば、付随する情報が少なくなります。
付随する情報が少なければ少ないほど、選択が楽になります。
参考
この記事の内容はスイスの経営者かつ小説家でもあるロルフ・ドベリの「Think Smart ~間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法~」の一部要約と自分なりの見解を加えたものです。
本書では人々が陥りやすい思考のワナとその対処法が、実例を踏まえてふんだんに紹介されています。
とても分かりやすく、成功したい、幸福になりたい思っている人の必読書です。
この記事に少しでも興味を持たれた方は是非実際の書籍を手に取ってみることをお勧めします。