人間の特性を利用した非常に強力なマーケティング手法に「断らせてから譲歩する」があります。これを英語では ドア・イン・ザ・フェイス (Door in the face)といます。
日本でもドア・イン・ザ・フェイスという言葉がそもまま使われることも多くあります。
直訳すればドアの前に顔があるという意味ですが、なぜこれが「断らせてから譲歩する」という意味になるのでしょうか?
ドア・イン・ザ・フェイスの由来・語源
ドア・イン・ザ・フェイスの由来は「shut the door in someone’s face」または「slam the door in someone’s face」という慣用句からきています。
どちらも「話すことや情報を与えることを断る」という意味です。
shutは閉じる、slamはバタンと閉じるという意味で、直訳すると「相手の顔の前でドアをバンッと閉める」という意味になります。
嫌な人が訪ねてきたらドアをバンッとしめて拒絶の意思表明をするのと同じです。
If someone shuts the door in your face or slams the door in your face, they refuse to talk to you or give you any information.
ドア・イン・ザ・フェイスの意味
マーケティングにおけるドア・イン・ザ・フェイスの内容は本当に商談して欲しい内容を通すために、「まずは過大な要求を断らせる」ということです。
相手からの断りや拒絶を引き出す必要があるため、「shut the door in someone’s face」にちなんで、ドア・イン・ザ・フェイスと呼ばれるようになりました。
手法なので末尾にTechniqueという単語をつけ、Door-In-the-Face Technique 略して、DIFTとも呼ばれます。
フット・イン・ザ・ドアとの違い
ドア・イン・ザ・フェイスと類似したマーケティング手法の名前にフット・イン・ザ・ドア(foot-in-the-door)があります。
人間心理を利用した強烈なマーケティングであることは同じですが、その内容は全くことなります。
フット・イン・ザ・ドア(foot-in-the-door)は直訳するとドアに足があるという意味です。これは訪問販売のセールスマンが「お話だけでも」と言ってドアに足を挟み込む行動からきています。
最初に「話しぐらいは聞いてあげるか」という小さなイエスを生んでしまうと、その後にイエスといいやすい心理が生まれます。(「一貫性の原理」といいます)
セールスマンはその後も小さな要求でイエスを積み重ねていき、最終的に商談までもっていきます。
マーケティング「手法」の一つなので末尾にtechniqueをつけて Foot-In-the-Door-Technique。略してFIDTと呼ばれたりもします。
FIDTとDIFT略されるわかりにくいですね。
ドア・イン・ザ・フェイスとフット・イン・ザ・ドアを比較すると次のようになります。
テクニック | 略 | 内容 | 利用する人間心理 |
---|---|---|---|
ドア・イン・ザ・フェイス | DIFT | 最初に過大な要求を断らせて、本当に売りたいものを売る。 | ・返報性の法則 ・コントラストの原理 |
フット・イン・ザ・ドア | FIDT | 小さなイエスを積み重ねて、商談を成立させる。 | ・一貫性の原理 |