節税のために青色事業専従者給与を税務署に届け出ればそれでOKと思っていませんか!?
個人事業主が家族に給与を支払う「青色事業専従者」の仕組みは、所得を分散して大きな節税効果を得られる素晴らしい制度です。しかし、一度でも給与を支払えば、あなたは単なる「個人事業主」から、税金を徴収して納める「源泉徴収義務者」という立場に変わります。
実は、この立場に変わることで発生する「年末調整」や「法定調書の作成」といった事務作業を知らずに放置してしまうと、後から税務署から指摘を受けるリスクもあります。
また、パートタイマーとは異なり、「いくら少額でも配偶者控除が受けられない」といった、専従者ならではの厳しい落とし穴も存在します。
本記事では、青色事業専従者として申告した後に必ず発生する事務手続きから、絶対に知っておくべき注意点まで、【重大な8つのポイント】に凝縮して総まとめしました。
この記事を読めば、1月の期限ギリギリになって慌てることなく、自信を持って専従者給与の処理を完結できるようになります。損をせず、かつクリーンな経営を行うためのチェックリストとしてご活用ください。
青色専業従事者とは?
「青色事業専従者」とは、個人事業主が家族に支払う給料を、経費として認めてもらうための制度です。
以下の条件をすべて満たす必要があります。
①家族・親族であること
生計を一にしている(同じ財布で暮らしている)配偶者や、15歳以上(その年の12月31日時点)の親族。
②「専ら従事」していること
年間で6ヶ月超、その事業をメインに働いていること。
※学生(高校生・大学生)や、他でフルタイムで働いている人は原則として認められません。
③青色申告をしていること
事業主本人が「青色申告」を選択している必要があります。
④事前に届け出していること
事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に届け出ておく必要があります。一般的には給与を経費にしたい年の3月15日までに届け出が必要です。
または、新たに開業した、または新たに親族が従事し始めた場合は、その日から2ヶ月以内です。
(※一度の提出でOK。毎年提出する必要はありません。給与額の変更がある場合は提出が必要です)
青色専業従事者のメリット
青色専業従事者のメリットは、給与を経費にできることです。
給与を受け取った家族側も「給与所得控除」が使えるため、家計全体で非課税枠が増えます。
青色専業従事者の注意点まとめ
青色専業従事者はメリットが多そうですが、必ず得をするわけではありません。気をつけなければいけないこともあります。
- 配偶者控除・扶養控除から外れる(所得税)
- 給与明細の発行と振込
- 勘定科目は「専従者給与」
- 源泉所得税の天引きと納付
- 納付書(所得税徴収高計算書)の提出
- 年末調整
- 法定調書・給与支払報告書の提出
- 確定申告時、青色申告決算書の「専従者給与の内訳」欄に従事した月数や金額を記入
- 配偶者控除・扶養控除から外れる(所得税)
- 金額によっては社会保険の不要からも外れる
- 場合によっては確定申告が必要(通常は年末調整でカバー)
配偶者控除・扶養控除から外れる
青色専業従事者として給与を1円でも支払っている場合、その人は配偶者控除・扶養控除から外れます。
個人事業主と会社勤めを兼ねている場合、「扶養控除申請書」の欄に対象者を記入することはできませんし、控除を受けることもできません。
給与明細の発行と振込
届出した金額を対象者に支払う必要があります。証明しやすいように現金手渡しではなく、直接的な支払いが大切です。
その際、以下の書類を作成しておきます。
- 給与明細(毎月)・・・給与受け取り者。
- 給与台帳(1年分まとめ)・・・法廷帳簿(税務署用)
家族(専従者)であれば、本人が「明細はいらない」と言えばトラブルにはなりません。
そのため、実務上は「給与台帳」を1枚作り、それを月々の明細の根拠にするという形でも、税務上は大きな問題になりにくいです。
給与台帳は以下のように記録し保存します。複数人要る場合は、誰にいついくら払ったかの明細がわかるようにします。

勘定科目は「専従者給与」
家族(専従者)に支払う給与は、一般的な従業員に使う「給料手当」とは区別して、家族(専従者)に支払う給与は、「専従者給与」という専用の勘定科目を使います。
<仕分け例>
| 日付 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
| 1/25 | 専従者給与 | 80,000 | 普通預金 | 80,000 | 1月分給与(専従者 氏名) |
源泉所得税の天引きと納付
青色事業専業従事者(家族従業員)として給与を支払った場合、原則として「源泉徴収(天引き)」と「納付」の両方の手続きが必要です。
ただし、全員が必要というわけではなく、社会保険料控除後の金額が月額88,000円以上であれば、所得税を天引きする義務が生じます。
なお、天引きした源泉徴収は税務署に納付する必要があります。
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出することで、支払いを半年に1回まとめることができます。
1月〜6月分(納付期限:7月10日まで)
7月〜12月分(納付期限:1月20日まで)
★e-Taxで申請できます(申請の翌月から適用可能)
納付書(所得税徴収高計算書)の提出
源泉徴収が0円の場合でも、納付書(所得税徴収高計算書)の提出が必要です。
提出しないと、税務署側は「給与支払いを忘れているのか」「報告を忘れているのか」が判断できないためです。
e-Taxを使ってオンラインで提出と納付ができます。詳細は下記をご参考ください。
年末調整
年末調整は義務
青色事業専従者として給与を受け取っている場合、金額にかかわらず「年末調整」の手続きが必要となります。
所得税が発生しない(源泉徴収額が0円)場合であっても、事業主として年末調整の事務を行う必要があります。
個人事業主本人は年末調整をする必要はありません。代わりに確定申告をします。
年末調整でやるべきこと
個人事業主が給与支払者(雇用主)として行う年末調整の事務作業は、大きく分けて「12月の計算作業」と「1月の書類提出(法定調書)」の2段階あります。(年末調整でやるべきことは法人と同じです)
- 必要書類を記入してもらう
- 扶養控除等(異動)届出書(全員必須)
- 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(全員必須)
- 保険料控除申告書(生命保険や地震保険を配偶者の名義で払っている場合)
- 1年間の給与総額を確定させる
1月〜12月までに支払った給与(額面)と、天引きした社会保険料(もしあれば)を合計します。 - 年税額を計算する
給与総額から給与所得控除や基礎控除などを引き、最終的な所得税額を出します。- ※計算には国税庁の「年末調整計算ツール」や、お使いの会計ソフト、または「源泉徴収簿」という用紙を使います。
- 過不足の精算(還付・徴収) 「1年間で天引きした税額」と「計算で出した正しい年税額」の差額を、12月(または1月)の給与で調整します(多く取っていたら、給与に上乗せして返金します)
給与受け取り者に記入してもらう必要書類および「源泉徴収簿」は国税庁のHPで入力用のPDFをダウンロードすることができます。
書き方は下記をご参考ください。
>【法人の年末調整】年末にやるべき書類まとめ|控除申告書・源泉徴収票・納付書(所得税徴収高計算書)・支払調書・給与支払報告書(個人明細書・総括表)
法定調書・給与支払報告書の提出(1月31日までに)
年末調整の一環ではありますが、作成した書類から「法定調書」「給与支払報告書」「源泉徴収票」を作成し提出する必要があります。
計算が終わったら、その結果を国と自治体に報告します。ここが一番の「事務作業」です。
- 「源泉徴収票」の作成と交付
計算結果を記入した「源泉徴収票」を2枚作成し、1枚を配偶者に渡します。 - 「給与支払報告書」の提出(市区町村へ)
源泉徴収票とほぼ同じ内容の書類です。配偶者が住んでいる市区町村へ提出します。これによって配偶者の住民税が決まります。 - 「法定調書合計表」の提出(税務署へ)
1年間に支払った給与の総額や、源泉徴収した税金の合計を1枚の紙「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(正式名称)」 で作成し提出します。
eLTAXを使うと「法定調書」「給与支払報告書」「源泉徴収票」をまとめて、市区町村と税務署に申告することができます。実際のやり方は下記をご参考ください。
> 【年末調整】eLTAXを使った給与支払報告書(個人・総括)と源泉徴収票&法定調書合計表の提出方法を実例で解説|給与支払報告書・源泉徴収票の入力内容/書き方
確定申告時、青色申告決算書の「専従者給与の内訳」欄に従事した月数や金額を記入
自分の確定申告で「青色申告決算書」を作成し、その中に以下の内容を記述する必要があります。
「専従者給与の内訳」欄には、以下の項目を記入します。
・氏名・年齢: 配偶者の情報
・続柄: 「妻」または「夫」
・従事月数: 1年間のうち、実際に仕事に従事した月数(通常は12月)
・性質(職種): 「事務」「販売補助」など、具体的に何をしているか
・給与・賞与: 年末調整で計算した「支払総額(額面)」を記入します。
※金額は、源泉徴収票の「支払金額」と必ず一致させること
給与をもらう側の注意点
給与をもらう側も以下のことは注意しておく必要があります。
特に社会保険の不要から外れると、支払う金額が一気に増えます。専従者給与が社会保険の不要から外れない金額か確認しておくことも非常に重要です。
- 配偶者控除・扶養控除から外れる(所得税)
- 金額によっては社会保険の不要からも外れる
- 場合によっては確定申告が必要(通常は年末調整でカバー)


