獅子やライオンが崖から子供を突き落とすはウソ|厳しい試練を与えれば人は病み、辞めていく

歴史・人物
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ライオンは子供を崖から突き落とすは本当?

「獅子の子落とし」という諺を聞いたことがあるでしょうか?

獅子の親は子供に厳しい試練を与えるために、あえて崖から突き落とすという意味です。

獅子とは百獣の王ライオンが元になっているといわれる古代の伝説上の生き物のことです。このため、ライオンは子供を崖から突き落とすことで強く厳しく育てるといった考え方をしている人もいます。

ですが、実際にはライオンは自分の子供を崖から突き落とすことはしません。むしろ、崖から落ちた仲間のライオンをなんとか助け出そうとする心優しい姿が目撃されています。

つまり、獅子の子落とし」とは過去につくられたウソということです。


現代社会では病んだり、辞める

スパルタな親や上司は「獅子の子落とし」という諺を盾にして、子供や部下にいきなり厳しい試練を課すことがあります。

たいていの場合その理由は「自分もそうされてきた」というものです。

崖から突き落とすような厳しい試練を与えた結果、子供は自尊心が傷ついて精神を病んだり、部下であればプレッシャーに負けて辞めてしまったりということも少なくありません。

ごくたまに乗り切れる人がいますが、それはごくわずかです。

そしてそういった試練を乗り切った人は「私は厳しいことを乗り越えた」「周りとは違う」と激しく思い込み、周りを批判したりバカにしたり、協調性のない人格に育つ傾向があります。


2500年前の知恵

約2500年前に中国の孫氏によって書かれた兵法書「孫氏の兵法」というものがあります。

そこには、戦で勝つために必要なことが、城の備え、リーダーの心構え、人の育て方まで載っています。

その一説に次のようなものがあります。

卒を視ること嬰児(えいじ)の如し、故にこれと深谿(しんけい)に赴むくベし。
卒を視ること愛子の如し、故にこれと倶(とも)に死すべし。

厚くして使うこと能わず、愛して令すること能わず、乱れて治むること能わざれば、譬えば驕子(きょうし)の若く、用うベからざるなり。

これは最強の軍団を作るためのリーダーの心構えです。

最強とうたわれた「孫氏の兵法」の中の極意なので「獅子の子落とし」のように強烈に厳しい内容なのかと思い込みがちですが、まったく真逆のことが書いてあります。

兵士たちを赤子にように気を使ってみること。そうすれば、一緒に深い谷底までついてきてくれるようになる。

兵たちを子供のように愛すること。そうすれば、一緒に命をかけて闘ってくれる。

愛してすぎてしまい、仕事で使うことができず、命令をすることができず、乱れているところを治めることができなければ、調子に乗った子供たちのようになってしまい、用いてはいけない。

子供や部下に対しては「赤ちゃんを見るように気を使う」「わが子のように愛す」これが、上に立つ者の心得ということです。

よく耳にする諺にだまされないことは大切です。

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