Vercelとは何か?仕組みやメリット・デメリット|料金を解説(どこまで無料で使える?)

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Vercelは、人気フレームワークNext.jsの開発元が提供する、フロントエンドに特化したクラウドプラットフォームです。

単なるホスティングサービスではなく、コードを書くところからデプロイ、そして世界中のユーザーへの高速配信までをシームレスに統合してくれます。

本記事では、Vercelの核となる仕組み、開発者にとってのメリデメ、そして個人開発からビジネスまで対応する料金体系を詳しく紹介しています。


Vercelとは何か?

Vercel(ヴァーセル)は、ウェブサイトやアプリケーションを高速かつ簡単にインターネット上に公開(デプロイ)するためのクラウドプラットフォームです。

特に、モダンなフロントエンド(ユーザーが目にする部分)の開発に特化しており、人気のあるウェブ開発フレームワークであるNext.jsの開発元でもあるため、Next.jsとの相性は抜群です。

Gitにプッシュするだけで自動的にビルド・デプロイ・配信してくれます。ドメイン・SSL・グローバルCDN・サーバレス/エッジ関数といった機能をまとめて提供しています。

「コードを書いたらすぐに世界中に公開できて、しかも速い!」というサービスです。


Vercelの仕組み

Vercelの仕組みは、Webサイトを公開する際の面倒な作業を自動化・高速化してくれる点にあります。

コードの準備と連携

WebサイトのコードをGitHubなどのサービスにアップロードします。

VercelとGitHubを連携させておくと、新しいコードのアップロードをVercelが自動的に検知します。


自動ビルド

Vercelは、連携されたコードを自動的に読み取り、Webサイトとして動作するために必要なファイル(HTML、CSS、JavaScriptなど)を生成します。(この工程をビルドと呼びます)


自動デプロイ(世界中に公開)

ビルドが完了すると、Vercelは生成されたファイルを世界中に配置されているVercelのサーバー(Edge Networkと呼ばれる高速な配信網)に自動で展開します。(デプロイと呼びます)


超高速な配信

世界中のどこからアクセスしても、最も近い場所にあるVercelのサーバーからWebサイトのコンテンツが配信されます。これにより、ユーザーは非常に高速にWebサイトを閲覧できます。


VercelはAWS、GCP、Cloudflareを使用

Vercelは、自前のインフラを持たず、複数の巨大クラウドベンダーのインフラを組み合わせて利用するマルチクラウド戦略を採用しています。

  • AWS(Amazon Web Services)は、 Vercelのインフラの主要な基盤の一つであり、サーバーレス関数(Next.jsのAPIルートやSSR処理)の実行環境として、AWS LambdaなどのFaaSサービスを利用していると考えられます。
  • Google Cloud Platform (GCP)を 一部のコンピューティングリソースやストレージなどで使用しています。
  • グローバルなコンテンツ配信や高速なサーバーレス機能(Edge Functions)を実現するために、Cloudflare(CDN/Edge)のネットワークも活用しています。

つまり、Vercelは、AWSやGCPといった巨大クラウドの「土台」の上に構築された、Next.jsなどのモダンなWebアプリ開発に最適化された「建屋」のような存在です。

開発者はAWS Lambdaなどの複雑な設定を意識することなく、Vercelという一つのプラットフォームを通して、基盤となるクラウドのサーバーレスな恩恵を簡単に受け取ることができます。


Vercelの主要な特徴

ゼロコンフィギュレーション(設定不要)デプロイ

GitHubなどにコードをプッシュ(アップロード)するだけで、Vercelが自動で最適な設定を判断し、ビルドからデプロイまでを完了させます。サーバーの設定や管理といったインフラの知識がほとんど不要です。


Next.jsとの強力な連携

VercelはNext.jsの開発元であるため、Next.jsの機能を最大限に活かせるよう最適化されています。Next.jsを使う場合は、Vercelが「公式のホスティングプラットフォーム」と言えます。


Edge Networkによる高速配信

グローバルCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)を標準で利用しており、世界中のどこにいるユーザーにも低遅延(待ち時間が少ない)でコンテンツを配信できます。


プレビュー機能

メインの公開用コードとは別に、開発中の新しい機能や修正を試すための「プレビュー環境」を一時的なURLで自動生成してくれます。これにより、公開前にチームメンバーやクライアントと確認が簡単に行えます。


サーバーレス関数のサポート

Webサイトのフロントエンドだけでなく、APIなどのバックエンドの処理も、サーバーレス関数(Serverless Functions)として簡単にデプロイできます。これにより、サーバーの管理なしに動的な機能も実現できます。


Vercelのメリット

デプロイの簡単さ

Git連携により、コードをプッシュするだけで公開が完了します(CI/CDの自動化)。複雑な手順は一切不要です。


圧倒的な高速性

Edge NetworkとCDNにより、世界中どこからでも高速にWebサイトが表示される。


スケーラビリティ

トラフィックが増加しても、Vercelが自動的にサーバーの規模を調整(スケール)してくれるため、ダウンしにくい。


無料プラン

個人の趣味プロジェクトなどは無料で利用開始できる(制限あり)。


Vercelのデメリット

独自の仕組み

Next.jsとの親和性が高いため、他の一般的なホスティングサービスとは少し異なる独自の機能や概念を学ぶ必要があります。


高機能ゆえの複雑さ

無料で使える機能が多い反面、大規模なプロジェクトや特殊な要件がある場合、設定やコスト管理が複雑になる可能性があります。


Next.jsのみフル機能

Next.js以外のフレームワークも使えますが、Next.jsと比べると最適化の恩恵をフルに受けられない場合があります。


コスト

無料プランで収まらない大規模な利用の場合、他の一般的なクラウドサービス(AWSなど)と比較して高価になる場合がある。


価格/料金

Vercelには、主に以下の3つのプランがあります

  1. Hobby
    個人、非営利プロジェクト、学習目的。非常に寛大な無料枠。商用利用は不可。
  2. Pro($20/ユーザー + 従量課金)
    チーム開発、スタートアップ、商用プロジェクト。共同作業機能、より大きな帯域幅と実行時間、サポートが追加される。
  3. Enterprise(料金はカスタム)
    大規模ビジネス、高いセキュリティやサポートが必要な企業。専用のサポート、高度なセキュリティ・コンプライアンス要件に対応。


ここではHobbyとProについて解説します。


Hobby

Hobbyプランは「個人または非営利プロジェクト」のために設計されています。

以下の行為を目的とした利用は禁止されています。

  • サイトの訪問者から支払いを受け取ること(例:ECサイト、有料コンテンツ)
  • 製品やサービスの販売を宣伝すること
  • サイトの作成、更新、ホスティングに対して対価を受け取ること(例:クライアントワーク)

商用目的で利用する場合は、最低でも$20/月のProプランが必要です。

主なリソース主なリソース
帯域幅(データ転送量)100GB/月
Serverless Function実行時間100時間/月
ビルド数100回/日
ストレージ1GB
デプロイメント履歴7日間


Proプラン(/ユーザー・月)

チームでの開発や、Webサイト・アプリケーションで収益を上げたい場合に選択するプランです。$20/月なので、1$=150円とすると、約3000円/月かかります。

このプランの料金体系は、「基本料金で利用できる枠」と、その枠を超えた場合に発生する「従量課金(追加料金)」の2層構造になっています。

主なリソース上限
帯域幅 (Bandwidth)1TB
サーバーレス関数 実行時間1,000時間
ストレージ10GB(キャッシュ、ビルドアーティファクトなど)
デプロイメント履歴30日間
ビルド数無制限(レート制限あり)
カスタムドメイン/SSL無制限

Proプランで基本枠を超過し、追加料金が発生する具体的なケースと単価の目安は以下の通りです。

追加料金が発生するケース課金単価(目安)
Webサイトのアクセスが非常に多い場合帯域幅の超過:$40 / 追加の100GB ごとに
バックエンド処理の実行頻度が多い場合関数実行回数の超過:$0.50 / 追加の100万回 ごとに
バックエンド処理が長時間実行される場合関数実行時間の超過:$15 / 追加の100GB-h ごとに
大量の画像を最適化して表示する場合Image Optimizationの超過:$5 / 追加の1,000枚のソース画像 ごとに
デプロイを頻繁に行う、またはビルドに時間がかかる場合ビルド時間の超過:$40 / 追加の100時間 ごとに


Proプランの1TB/月という帯域幅は多くのサイトにとって十分ですが、急なバズや大規模なキャンペーンでアクセスが急増すると、帯域幅の超過により追加料金が最も発生しやすい項目となります。

APIを多用する動的なアプリケーションの場合、実行回数と実行時間の両方で課金される可能性があります。

Vercelでは、基本枠を超えると自動で従量課金に移行します。事前に料金アラートを設定して、想定外の出費を防ぐことをお勧めします。



Vercel以外の選択肢

Next.js+React.jsを使ったWebアプリの個人の学習用であればVercelで問題ありません。また、トラフィックがそれなりにある場合もVercelで問題ありません。

ただし、トラフィックがかなり少ない場合にVercelのProプランを使うと、毎月$20がかかってしまいます。

このためトラフィックが少ない場合は以下の環境を使う手もあります。

サービス/構成月額コスト目安特徴とデメリット
Netlify$0 〜 $19/月Vercelと類似した機能(CI/CD、CDN)を持つ競合サービス。Next.jsにも対応。
無料プランでの商用利用が許可されている点(ただし制限あり)がVercelとの最大の違い。
Firebase Hosting$0 〜 $10/月Googleが提供。
認証、DB、ホスティングが統合されており、無料枠が非常に手厚い。初期コストが最も低く抑えられる。
AWS Amplify$0 〜 $5/月特徴: AWSのサービス。静的ホスティングとサーバーレス機能を統合。初期設定は煩雑だが、無料枠が豊富。
フルスタック(Next.js以外)$5 〜 $20/月特徴: PHP(Laravel)やPython(Django)などのモノリシック構成。低価格なVPSや共有レンタルサーバーで運用し、サーバーレス課金を避ける。

Netlify、Firebase Hosting、AWS AmplifyのいずれもNext.jsのSSR/SSG/ISRといった動的機能のホスティングをサポートしています。


参考リンク

> Vercel公式サイト

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