アプリを開発しているけれど、「サーバー管理が面倒」「リリースを高速化したい」「費用を抑えたい」といった悩みを抱えていませんか?
Googleが提供する「Firebase Hosting」は、そんなあなたの課題を解決する強力なツールです。Webサイトや静的コンテンツの公開に特化し、驚くほどの高速配信と簡単なデプロイを実現します。
この記事では、Firebase Hostingの基本的な特徴から、メリット・デメリット、特に気になるSpark(無料)プランとBlaze(従量課金)プランの違い、そして「どこまで無料で使えるのか」という料金/価格体系を具体的に分かりやすく解説しています。
Firebase Hostingとは何か?
Firebase Hosting(ファイアベース ホスティング)は、Googleが提供するモバイルおよびウェブアプリ開発プラットフォームであるFirebaseに含まれているサービスの一つで、高速で安全なウェブホスティングサービス(サーバー貸出サービス)です。
静的なウェブサイトや単一ページアプリケーション(SPA)のホスティングに最適化されていますが、Cloud FunctionsやCloud Runと連携させることで動的なコンテンツやマイクロサービスも構築・ホストできます。
Firebase(ファイアベース)は、Googleが提供するモバイルおよびWebアプリケーション開発プラットフォームです。
アプリ開発者が、ユーザー認証、データベース、ストレージ、プッシュ通知などのバックエンド機能を、サーバーの構築や管理をすることなく、簡単かつ迅速に実装・運用できるようにするための各種ツールとサービスを統合して提供しています。
ホスティング(ウェブホスティングサービス)とは何か?
ホスティング(ウェブホスティングサービス)とは、インターネット上でウェブサイトやアプリケーションを公開・運用するために必要なサーバーの機能やスペースを、専門の事業者が提供・貸し出すサービスのことです。
簡単に言うと、ウェブサイトの「家」となるサーバー(データを保管し、インターネットに公開するコンピュータ)をレンタルするサービスです。
XserverやLolipop、さくらインターネットなどものレンタルサーバーもホスティングサービスの一種です。
Firebase Hostingのメリット(特徴)
グローバルCDNによる高速配信
アップロードされたコンテンツは、世界中に配置されたコンテンツ配信ネットワーク(CDN)のエッジサーバー(SSDキャッシュ)に保存され、ユーザーに最も近い場所から配信されます。最適な圧縮方法(gzipやBrotliなど)が自動で選択されます。
安全な接続(SSL)
Zero-configuration SSL(構成不要のSSL)**が組み込まれており、カスタムドメインを使用する場合でも自動的にSSL証明書が発行され、HTTPSで安全に配信できます。
簡単なデプロイとロールバック
Firebase CLI(コマンドラインインターフェース)を使用し、シンプルなコマンド一つでウェブアプリをデプロイできます。デプロイ後の問題発生時も、ワンクリックで以前のバージョンに戻す(ロールバック)ことが可能です。
つまり、開発から公開、管理までの手間が少なく、ミスが発生してもすぐに元に戻せるため安心です。
プレビュー機能
ローカルでのテストに加え、一時的なプレビューURLを発行して、公開前に同僚などと変更内容を共有・テストできます。GitHub連携による自動ビルド・デプロイも可能です。
カスタムドメイン対応
独自のドメイン名を接続して使用できます。
幅広いアプリケーション要件に対応可能
Cloud FunctionsやCloud Runといった他のFirebase/GCP(Google Cloud Platform)サービスと連携することで、静的コンテンツだけでなく動的なウェブアプリやバックエンドの機能もホストできます。
複数のウェブサイトの管理が容易
1つのFirebaseプロジェクト内で複数の関連サイトをホストし、同じプロジェクトのリソース(認証、データベースなど)を共有できます。
Firebase Hostingのデメリット
静的コンテンツ向き
基本的には静的コンテンツ(HTML、CSS、JavaScript、画像など)のホスティングに最適化されており、動的なウェブアプリにはCloud FunctionsやCloud Runとの連携が必要になります。
純粋なウェブサーバーとして細かなサーバー設定を行いたい場合には、他のIaaS(Infrastructure as a Service)の方が適している場合があります。
サーバーサイドの細かな制御はできない
サーバー管理が不要な分、OSやミドルウェアのバージョンなど、サーバーサイドの環境について細かな制御はできません。
Firebase依存(ベンダーロックイン)
Firebaseの他のサービスと組み合わせて利用する場合、Firebaseというプラットフォームに依存することになり、他のホスティングサービスへの移行が難しくなる可能性があります。
料金/価格体系
Firebase Hostingには、利用用途に応じて「Sparkプラン(無料枠)」と「Blazeプラン(従量課金)」の2つの料金プランがあります。
Firebase Hostingというサービスを契約するわけではなく、FirebaseのSparkプランやBlaseプランを契約します。その中に、HostingサービスやHostingサービスの無料枠が含まれています。
| プラン名 | 料金体系 | Firebase Hostingの無料枠(月間) | 有料部分の料金(Blazeプラン) |
| Spark | 完全無料 | ストレージ:10 GBまで / データ転送:10 GBまで | なし(無料枠を超過すると一時的にサイトが停止します) |
| Blaze | 従量課金制 | Sparkプランと同じ無料枠が毎月付与。 | ストレージ:10 GBを超えると $0.026 / GB データ転送:10 GBを超えると $0.15 / GB |
他の部分もより詳しくまとめると以下のようになります。
| サービス | Sparkプラン(無料枠) | Blazeプラン(有料/無料枠) | 備考 |
| Cloud Functions (SSRなどに必要) | 利用不可 | 無料枠あり ・月200万回の呼び出し ・400,000 GB-秒/月 ・5GBのネットワーク転送など。 | Next.jsのSSRには必須。無料枠を超えると従量課金。 |
| Cloud Firestore (NoSQL DB) | 無料枠あり ・保存容量: 1 GiB ・読み取り: 50,000回/日 ・書き込み: 20,000回/日 ・削除: 20,000回/日 | Sparkと同じ無料枠を含む。超過分は従量課金。 | 無料枠を超えるとサービスが停止 (Spark)、または自動的に課金 (Blaze)。 |
| Realtime Database (NoSQL DB) | 無料枠あり ・保存容量: 1 GiB ・ダウンロード: 10 GB/月 ・同時接続: 100 | Sparkと同じ無料枠を含む。超過分は従量課金。 | 同時接続数は、Blazeにアップグレードすると20万まで増加。 |
| Hosting (静的ホスティング) | 無料枠あり ・保存容量: 10 GB ・データ転送: 360 MB/日 | Sparkと同じ無料枠を含む。超過分は従量課金。 | カスタムドメイン、SSLはどちらも無料。 |
| Cloud Storage (ファイル保存) | 無料枠あり ・保存容量: 5 GiB ・ダウンロード: 10 GB/月 ・アップロード/ダウンロード操作回数に制限あり | Sparkと同じ無料枠を含む。超過分は従量課金。 | |
| Authentication (ユーザー認証) | ほぼ無料 ・メール/パスワード、Google、SNS認証などは無制限。 ・電話認証(SMS)のみ有料(最初の一定量は無料の場合あり)。 | Sparkと同じ無料枠を含む。超過分は従量課金。 | |
| Analytics, Remote Config, FCM, Crashlytics | 無制限 (制限付きの機能あり) | 無制限 | これらの機能は基本的に無料で利用できます。 |
Sparkプランでできること(無料の限界)
Sparkプランは、クレジットカードの登録が不要な完全無料のプランであり、小規模なプロジェクトやプロトタイプ開発に最適です。
以下のようなことができます。
- 静的サイトのホスティング
Next.jsで静的エクスポート (output: 'export') したウェブサイトをFirebase Hostingで公開できます。(ただし、動的なSSRは不可)。 - 認証
基本的なメール・パスワードやソーシャルログイン(Google, Facebookなど)の機能は無制限で利用できます。 - データベース
Cloud FirestoreやRealtime Databaseの「無料枠」内での利用。
Sparkプランの最大の制約
Sparkプランの最大の制約は、動的なサーバーサイド処理ができないことです。
- Cloud Functionsが使えない
したがって、Next.jsのSSR (Server-Side Rendering)、API Routes、またはバックエンドで複雑なロジックを実行する機能はすべて利用できません。 - 無料枠超過時のサービス停止
Cloud FirestoreやHostingなどで無料枠の制限を超過すると、そのサービスの利用が停止されます(課金は発生しません)。
Next.js+React.jsを用いたアプリ開発をする際、SSRやAPI Routesの機能を使う場合は必然的にBlazeプランを選択する必要があります。
ただし、Blazeプランを選択したらすぐに有料になるわけではなく、かなり寛大な無料枠が設けられています。
Blazeプランでできること(無料枠とその先)
Blazeプランはクレジットカードの登録が必要な従量課金制のプランですが、Sparkプランのすべての無料枠を基本的に含んでいます。
Blazeプランの主な利点(SSRに必須な点)
- Cloud Functionsの利用
Next.jsのSSR、Image Optimization、API Routesなど、動的なサーバーサイドロジックを実装するためにCloud Functionsが利用可能になります。これには毎月かなり寛大な無料枠が提供されているため、いきなり有料になることはありません。 - 無料枠を超えてもサービス継続
Cloud FirestoreやHostingなどの無料枠を超過した場合でも、サービスが停止することはなく、利用した分だけ自動的に課金されることでアプリを継続して運用できます。 - その他の有料サービス連携
Cloud Runや他のGoogle Cloud Platform (GCP) サービスとの連携が可能になります。
SSRの無料枠について
Next.jsのSSRはCloud Functionsを利用して実行されるため、BlazeプランのCloud Functionsの無料枠に依存します。
| Cloud Functions の無料枠(Blazeプラン) |
| 呼び出し回数:200万回/月まで無料 |
| 計算時間 (GB-秒):400,000 GB-秒/月まで無料 |
| ネットワーク転送:5 GB/月まで無料 |
この無料枠は非常に寛大であり、小規模から中規模のアプリケーションであれば、ほとんどの場合、実質無料でSSRを運用できるレベルです。
しかし、大規模なアクセスが発生した場合は、超過分が従量課金されます。


