アメリカの医学界には「ひづめの音が聞こえたらシマウマではなく馬を探せ」という格言があります。
When You Hear Hoofbeats Look for Horses Not Zebras.
Hoofbeatsは「蹄(ひづめ)の音」の意味
これは「まずは確率の高い、当たり前なことから疑え」という意味です。
医療の世界では一つの判断ミスが人の生死に関わることがあります。
例えば、ひどい頭痛が続く場合「ウイルス感染」か「脳腫瘍」の疑いがあります。そのとき医師はどちらの判断を下すべきでしょうか?
答えは「ウイルス感染」です。なぜなら「ウイルス感染」の方が「脳腫瘍」よりも発生する確率が高いからです。
この格言がなぜ重要なのかというと、私たち人の性質を的確に指摘しているためです。
人は確率を直感的に理解できない生き物であることがわかっています。
1972年に人が確率をどのくらい理解できるのかを調べる実験が行われました。
実験の内容はとても簡単で、被験者を2つのグループに分けます。グループAには「あなたは電気ショックを受けます」と伝え、もう一方のグループBには「50%の確率で電気ショックを受けます」と伝えました。
そして、被験者が感じる不安を心拍数や発汗、緊張の度合いなどで検証しました。
結果は、どちらも同じだけの不安を抱えるというものでした。
つまり100%の確率で電気ショックを受ける人と、受けない可能性が半分ある人が感じる不安は変わらないということです。
なお、電気ショックを受ける確率を10%、5%にしても結果は同じものになりました。
確率がかなり低い5%も、確実に発生する100%も私たちに人にとっては同じだと感じてしまうということです。
これは、私たちは確率を直感的に理解できないことを示しています。
人の性質上「確率」は意識して計算しない限り理解することができません。だからこそ、確率はとにかく重要なのです。
「ひづめの音が聞こえたらシマウマではなく馬を探せ」の更に強い言い回しがあります。
それは「ワイオミング州で、ひづめの音が聞こえ、シマウマのような縞模様を見たとしても、それは馬だろう」というものです。
When you hear hoofbeats and think you have seen stripes in Wyoming , it is still probably a horse.
ワイオミング州はアメリカ北西部の州で自然に囲まれた州です。ここには基本的にシマウマは生息していません。
どんなにシマウマに似たものを見たとしても、それは馬である可能性の方が圧倒的に高いということです。
この記事のスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
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