現代社会はプロセスよりも結果の方が大事だとさる結果主義が広まっています。「結果が全て」という人もいます。
もちろん結果は大切です。そこには事実が詰まっています。
ただし結果から理由を推測することは危険です。時には成功という結果を手にしても、それが偶然の産物でプロセスが間違っていることもあります。
ここでは結果から理由を推測することの危険性について解説しています。
結果から理由を推測することがなぜ危険かというと、人は事実とは関係のないことでも無理やりに結び付けようとするからです。
例えば、1000人の幼い子供に株式投資をしてもらったとします。1年後に利益が出た人は50%、利益が出なかった人は50%になるとします。
次に利益が出た500人のうちもう1年投資をしてもらい、1年後に利益が出た人は50%、利益が出なかった人は50%になるとします。
すると2年連続で利益を出した子供は250人になります。
これを何年間も繰り返して最後の一人まで絞り込んだとします。この1人は偉大なる成功者です。何年間も成功を掴む選択をしてきたわけです。
周りの人々はこの子供を成功者としてもてはやします。そしてこの子供が成功した理由を探し出そうとします。
その結果、この子は「他の子と違い絹のパジャマを愛用していた」「毎朝シリアルを食べていた」「絵を書くのが好きだった」といった事実が見つかります。
すると、寝具業界は「絹のパジャマを着続ければ成功する!」といった広告を打ちます。シリアル業界は「毎朝しあリアルを食べれば成功する!」といった広告を打ちます。絵画業界は「絵を書くと成功する!」といった広告を打ちます。
ですがどれも本質ではありません。この子が投資で成功したのは1/2の確率でたまたま勝ちの側にいることが続いたにすぎません。
ある手術において手術が成功する確率が80%だったとします。
同レベルの3人の医者が5人の患者に対して、まったく同じ方法で手術を行いました。1人目の医者による手術での死亡者は2名。2人目の医者の手術による死亡者は1名。3人目の医者の手術による死亡者はいませんでした。
結果だけ見ると、3人目の医者がもっとも優秀なように見えます。
ですが、みな行ったプロセスは同じです。3人目の医者がもっとも優秀と結論付けた人は間違っています。
ただその手術の生存確率は80%だったというだけです。
結果から過去を振り返れば「そんなのは当然だ」と多くの専門家が理由を並べます。
何かが起こってから上の人に相談すれば「そんなことぐらいわかるだろう」と言われます。
ですが、結果が出る前はわからないことが頻繁にあります。
例えば、70歳というやや短命で亡くなった人がいます。すると周りの人は「あの人はヘビースモーカーだったから」「油物ばかり食べていたから」という理由を並べ立てます。
ヘビースモーカーで油物好きで80歳以上まで生きている人がいると言う事実を無視します。
リーマンショックも同じです。リーマンショックが来る前はどんな一流の専門家もあれほどと金融危機が来るとは予想していませんでした。
しかし、今になっては金融の専門家たちはリーマンショックは来るべくして来たと語ります。
未来は未知で結果が出るまではわからないのがこの世の中です。
結果からその理由を推測すると見誤ります。正しく判断するには「プロセス」と「回数」に着目する必要があります。
結果に着目するのではなく「プロセス」に着目するとは、その人が行った手順を厳密に観察することです。
そうすることで違いが見えるようになります。
「プロセス」ともう一つ大切なのが回数です。できる限り同じことを繰り返すことで何が正しいのかが見えてきます。
80%の成功確率だとして、100回行ったうち最初の20回が失敗することもあります。ですが、その後の80回はすべて成功します。
逆に、最初の20回が全て成功だったとしても、残りの80回が全て失敗することもあります。どちらも成功確率は同じです。
「プロセス」に着目し、「回数」をこなさない限り正しい判断はできません。
どんなに成功確率の高い方法でも1度や2度の失敗はあるかもしれません。
失敗していたから方法が間違っていたと結論づけるのは短絡的すぎます。
結果が「成功」だったら満足して、「失敗」だったら落胆したり怒るのでは本質は見えてきません。
「なぜそのように考え行動したのか?」を考えることが本質的な成功へとつながっていきます。
もし結果が失敗となる判断だったとしても「なぜそのようにして、行動したのか」に明確な理由と目的があれば、もう一度同じ判断をすることが正しいこともあります。
この記事の内容はスイスの有名起業家 ロルフ・ドベリが記した「Think right ~誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法~」の一部抜粋と要約です。
人が陥りがちな思考の罠がとてもわかりやすくまとまっています。この記事の内容以外にも全部で52個の人の性質がわかりやすい具体例で解説されています。
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