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「全部やりたい」が失敗を招く理由|なぜ人は向性を見失うのか?

世の中には刺激的なことが溢れています。アニメやメディア、ゲームなどのエンターテイメント、仕事、本、Amazonや楽天で買えるモノなど、私たちのすぐ外の世界はモノと情報の洪水です。

SNSでは「〇〇へ行きました」「〇〇しました」「〇〇食べました」という自慢合戦の連続です。

そういった情報に触れている人たちは「あれをやりたい」「これもやりたい」という状態に陥っています。

この「あれもこれもやりたい」というのはあなたが悪いわけではありません。

現代の社会の中で生きていれば、そう考えてしまうのが普通です。

ですが、こういった考え方をしている限り成功や幸せが手に入ることがありません。あなたの人生はいつも中途半端で成果が出ず、忙しく「時間がない」と叫ぶ状態になります。

ここでは、多くの人がなぜ「全部やりたい」と考えて方向性を見失ってしまうのかについて解説しています。


選択肢が多すぎる

選択肢の扱い方を知らない

今私たちが生きている時代はこれまでの人の歴史の中でまったく新しい状態になっています。

私たちの暮らしを大きく激変させたのは工業化(モノ)とインターネット(情報)です。

今までの人の歴史はモノと情報がとても限られた状態でした。このため、権力や選択肢を持っているのはモノと情報を持っている人たちでした。

そして多くの人々は選択肢すらもたないのが普通でした。

身分や階級があり差別的な社会が当たり前のように続いていたのが工業化とインターネットによって破壊され、みんながより平等にモノと情報を得られる世界は今が初めてです。

これは私たち人類にとってとてもいいことです。その一方で多くの人が全く新しい状態に陥っているため、モノ情報など多くある選択肢の扱い方を知らない状況です。

point

私たちの暮らしは歴史上初めて、大多数の人々が選択肢を持つようになった時代。ただし、社会は未だにその状況に対応できていない。


選択肢が多いと大事なことを見失う

人類の歴史を振り返ってみると、情報やモノを多く手にしている人が人々の上に立ち成功を治めています。

特に下剋上など上に登っていく人ほど、限られた選択肢を巧みに取捨選択し、大事なことに注力しています。

ですが、そういった成功者もより多くの選択肢を手にすると大事なことを見失いがちになります。

そして権力の使い方を間違え「あれもこれも欲しい」と訴えて民の税収を強化したり、他の地域から奪うことを画策し、その結果、力が分散したり恨みを買って滅んでいます。

つまり、選択肢があまりに多すぎて大事なことを見失った人は、どんな権力者であろうが失敗し滅びていきます

成功を治める人は常に「持っている選択肢を上手に使える人」です。


選択肢が多いほど人は疲れる

選択肢が多いことは幸せなことのように感じます。ですが、人の性質は真逆です。

心理学の研究で選択肢が多いと疲れて正常な判断ができなくなることがわかっています。

似たような2つ以上のモノや情報から1つを選び出すという作業は多量のエネルギーを消耗します。このため「あれにするべきか」「これにするべきか」とたくさん迷った人は判断力を消耗して、まともな判断ができない状態になります。

このように迷ったことで判断力を消耗していくことを専門用語で「決断疲れ」と言います。


裁判官も決断疲れを起こす

判断力の消耗に頭がいい悪いは関係ありません。エリート中のエリートである裁判官も私たちと同じく決断疲れを起こします。

裁判官はたくさんの案件を裁いていかなければいけません。一番やってはいけないことは危険な人物を世の中に放り出してしまうことです。

そして、公平に判決を下す必要があります。

ですが、研究の結果、午前中は釈放される人の割合が多く、午後は少なくなることがわかりました。

これは、午前中の判決で判断疲れを起こし、午後はより安全策である釈放しないという判決をしていることを表しています。つまり、正常に考えられなくなったということです。

point
  • 選択肢の多さは迷いを生む。
  • 迷いは多量のエネルギーを使い判断力を消耗する。
  • 賢く優秀な人でも選択肢が多いと判断疲れを起こす。



余計なオプションを買ってしまう理由

自動車ディーラーに行ったときに自動車を選んだ後の商談で、車のオプションや保険などとりあえず言われたままに全部つけてしまうことがあります。

これは決断疲れを利用した商法です。

自動車本体を選ぶことで判断力を消耗した結果、割高なカスタム部品や点検オプション、ローン契約などを正常に判断するエネルギーが残っておらず、とりあえず買ってしまう状態です。


スーパーのレジ前にスイーツが置いてある理由

スーパーのレジ前にスイーツが置いてあるのは決断疲れを利用した商法の一つです。

スーパーは似たような商品が所狭しと並んでいます。このためレジにたどり着く前にたくさんの判断を行い脳は疲れた状態になっています。

疲れた脳は糖分を欲するため、レジ前にスイーツがあると何も考えずについ買い物カゴの中に入れてしまいます

賢い人たちは私たち人の特性をわかっていて、自然に売りつけるためにたくさんのトラップを仕込んでいます。


選択肢が多いと満足できない

よくある勘違いに「選択肢が多い方が買い物が楽しくなる」「選択肢が多いほど満足できる」があります。

実際はこの逆です。人は選択肢の数が多いほど「選択することが重荷」になり「満足感が少なくなる」ことがわかっています。

3種類と24種類のジャム

選択肢の数と購買行動を調査した研究に、ジャムの種類の数を調査した面白いものがあります。

選択肢が多いと重荷になる

ジャムを買いに行ったときにジャムが3種類しかない場合、人は簡単に選ぶことができます

ですが、ジャムが24種類あると、選択にものすごく時間がかかり、結果何も買わずに帰る人が出ます

つまり、選択肢の多さが楽しさではなく重荷になっています


選択肢が多いと満足感が下がる

また、3種類のうちから1つ選ぶ場合だと納得して購入しているので、購入後も満足している確率が高くなります。

一方、24種類から1つ選んだ場合は、納得しきれていない場合が多く、後から「あっちにしておけばよかった」という感情にさいなまれ満足感が下がります

人にとって選択肢が多い状態は、決して幸せな状態ではありません。むしろ不幸な状態ともいえます。


選択肢のパラドックス

選択肢が少ないとき人はより多くの選択肢を求めて戦いを挑んだり挑戦します。こういう人たちにとって選択肢はどうしても欲しいものです。

ですが、一方ですでにたくさんの選択肢を手にしている人からすると、選択しなければいけない状態は非常に重荷で、選択肢を手放したいと考えていることがあります。

このように選択肢は少ししか持っていない人と、多く持っている人で性質が大きく異なります。

このため、自分の状況に合わせて正しい選択肢の扱い方を知っていることがとても重要です。


「全部欲しい」と思ってしまう理由

選択肢は多ければ多いほど疲れをもたらし、満足感を下げます。それにも関わらず私たちの多くが「あれもこれも欲しい」と考えます。

それには私たちをとりまく環境が大きく影響しています。

コマーシャルによる洗脳

動画やテレビの合間に流れるコマーシャルやパンフレットなどの広告など、この世の中にある多くのものが私たちに何かを売りつけようとしています。

そして、買ってもらうために「全部手に入れよう。全部やろう」というスローガンを繰り返します

メディア自体もモノや情報を売る企業がスポンサーになっているので、手放そうということは言わず、「これを使えば幸せになれる、豊かになれる」という情報を繰り返します

そういった情報に長く触れることで、私たちの頭は「全部手に入れることがいいこと」だと勘違いしています


教育と就職による洗脳

学校教育や就職活動も同じです。

学校教育ではより多くの科目で優秀な点数をとり、学問だけでなく運動もできる人が万能と評されます。

就職活動でも募集要項には「あれもこれもできる人」という条件が並んでいます。

こういった教育や環境に晒されている私たちは「より多くできることがいいこと」だと勘違いしています


ネットやSNSによる洗脳

インターネットが普及したことで、ブログやSNSなど他人の意見に触れる機会がとても増えています。

誰かがみな「これがいい」「あれがいい」と言っています。

そういった他人の情報を自分の情報に置き換えてしまい、頭の中が「あれも欲しい。これも欲しい」となっています

point

私たちの生活は他人の情報や作られたウソがデフォルトになっている。


本当の情報は流れてこない

学校や会社では「選択肢が多いことは疲れて満足感を下げる」と教えてくれません

情報やモノは要らないと言っている人たちはメディアで取り上げられません

それは、資本主義で社会を回していく以上、人々がお金を使ってモノや情報を買い続けることが必要だからです。

国も同じです。たくさんの人がモノや情報を買い、消費税として国に入るお金で回っています。

利益を追求するすべての企業や国は、国民一人一人が賢く余計な買い物をせず、時間とゆとりを持って幸せになるよりも、愚かで買い続けてくれる方が儲かります

このため、私たちが自分から情報を取りにいかない限り正しい情報が入ってくることはありません


2つ以上の最優先事項は何も優先していないのと同じ

企業などの組織の中には最優先事項を5個、10個と並べているところがあります。

ですが、最優先とは「すべてを差し置いて優先する1つのこと」という意味です。

それにも関わらず、多くの社員やマネージャーが最優先事項を2つ以上抱えています

これは非常に危険な状態です。「全部手に入れよう。全部やろう」とするうちに、どんどんとエネルギーを失い、正しい判断ができなくなり、本当に必要なものを失っていきます

2つ以上の最優先事項は何も優先していないのと同じです。

判断疲れが起こり思考停止しているので、自分で決めることはできません。

その結果、上司や同僚、顧客、家族など他の誰かによって決めてもらわざるを得なくなります。

つまり、たくさんの選択肢を抱えて決断疲れを起こし思考停止に陥った自分で選べない人は、他人のいいなりになるしかありません

point
  • 2つ以上の最優先事項は何も優先していないのと同じ。
  • 「全部手に入れよう。全部やろう」とするとエネルギーを失い、正しい判断ができなくなり、本当に必要なものを失う。
  • 自分で選べない人は、他人のいいなりになるしかない。


自分に正直に生きる

オーストラリアの看護師をしていたブロニー・ウェアは、死を迎える患者たちに最後に後悔していることを聞き、記録し続けました。

その結果、最も多かった答えは「他人の期待に合わせるのではなく、自分に正直に生きる勇気が欲しかった」でした。

私たちは、家庭や学校での教育、動画やテレビで発信されるイメージ戦略、SNSで発信される他人の情報によって、自分自身の考え方を失い、誰かの期待に応えることがいいと洗脳されています

そして、「あれもこれも全部したい。みんな欲しい」と考え、大切なモノを見失って生きていきます

その最後に待ち受けるのは後悔しかありません。それはすでに多くの人が自分の人生をかけて実験をし証明してくれています。

私たちがするべきことは過去のそうした人たちの結果から学び、よりよい人生を自分たちで選び取っていくことです。

私たちには寿命があります。人生は限られています。

最後にピューリッツァー賞を受賞したアメリカの詩人 メアリー・オリバーの有名な詩の一節を紹介します。

教えてください、あなたは何をするのですか。その激しくかけがえのない一度きりの人生で。

ぜひ自分に問いかけてみてください「もし、たった一つのことしかできないとしたら、自分は何をやるのか?」と。

あなたが「全部やりたい」「全部欲しい」「選択肢は多い方がいい」という思い込みに気付き、より幸せな人生を送ることを心より願っています。




参考

この記事はAppleやGoogle、FacebookやTwitterなどの世界的に有名な企業でコンサルティング経験のあるグレッグ・マキューン(Greg・Mckeown)氏の「エッセンシャル思考」という本の一部要約と抜粋です。

世界的ベストセラーになったこの本には他にも人生を成功と幸せに導く格言がたくさん載っています。

興味を持たれた方は是非実際に手に取ってみることをお勧めします。



yuta